第306話 大阪市東成区深江南の宮崎辛麺(レギュラー、こんにゃく麺、5辛、)とごはん(小)生ビール
「何を食ったものか……」
なんとなく魚な気分だったんで近場で回る寿司でもと行ってみたものの、さすが休日昼。時間を外したものの家族連れやらでまだまだ並んでいた。
待つのも一つの手だが、ここは気持ちを切り替えよう。
「麺喰らうか」
商店街の西の端から、東へ向かって歩き始める。
ただ、特に当てがなかったため。
「あ、抜けてしまったな……」
このまま隣の駅まで更に歩くのも一興だが、そこまで腹の虫が黙っていないだろう。
時間を外したから、空腹なのである。
冷静になってみれば、道路を挟んで向こうと手前に麺が食えるところがあるじゃないか。
「まぁ、わざわざ渡るのもな」
こちら側にまだいたことを何かの導きと考えよう。
南に曲がって少し歩けば、赤地に白で店名の入った幟が目に入る。
そこが、目的の店だ。
シックな木造の店舗に入れば、それなりに客が入っている。
だが、一人ならすぐ入れそうだった。
「少しお時間いただきますがよろしいですか?」
席に案内される前に、そう、確認される。
どうやら、奥に団体がきたところのようだ。調理を一人でやっている小さい店だけにいたしかたないだろう。
入ったら、もう、ここの麺を食う体制に入っている。
「大丈夫です」
そういって、カウンター席に着く。
「おや、メニュー変わったか」
これまであったセットは平日のみになり、土日祝はやらなくなったようだ。
ならば。
「レギュラー5辛、こんにゃく麺で。あと、ごはん(小)を」
と、ごはんセットにしておけばいいだろう。
レギュラーは一般的な大盛に当たるものだった気がするが、まぁ、いい。
あとは待つばかりとなれば、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在のイベントはプルメリア、ダチュラ、カレンのターン。ボーナス付きのリリーを最終限界突破で4倍ボーナスを生かして、ゆるゆる稼ごう。
あとは、土曜なのでスコアタだ。今月のスコアタ完走報酬は、鈴蘭≪りんらん≫だ。先月はフォレット。リリーの供給も増えた気がするが、もしかしてケイブは眼鏡の真理に目覚めたのだろうか?
そんなことを考えつつ、スコアタも出撃して雰囲気をつかんだところで注文の品がやってきた。
「あ、こうしてみるとでかいな」
レギュラーサイズのどんぶりは、セットメニューのどんぶりより明らかにでかい。その中には、溶き卵、ニラ、ニンニク。スープの奥にはこんにゃく麺とひき肉が沢山。
一方のごはんも小とはいえ、結構しっかり盛られている。
いいじゃないか。
腹の虫は喜んでいる。
なら、祝杯だ。
「生ビール追加で」
食事を持ってきた店員に告げ、スープを一口。
ああ、宮崎辛麺の味だ。ラーメンというよりは鍋物に近い出汁の旨味と辛味。
麺はそば粉をベースにしつつこんにゃく状にしたもので、こんにゃくそのものではない。だが、この触感がいい。
そこに、生ビールがやってくる。
「ふぅ、生き返る……」
寒くなったとはいえ、そこそこ歩いて温まった体に唐辛子をプラスしたところに、キンキンに冷えたビールは効く。
ああ、休日の昼を満喫しておるな。
幸福に浸りながら、麺を喰らう。ごろっとしたニンニクが出てくる。ほくほくだ。かじる。うまい。そのうまみを残したまま、米を掻っ込む。うまい。麺を喰らう。うまい。スープをすする。うまい。ビールを呑む。うまい。幸せ。
細かいことは考えず、うまいうまいと麺と米をむさぼり麦ジュースを飲む。
なんというか、こう、満たされている。食の幸せを感じる午後だ。
幸せを惜しむのもいいが、ここは一気に味わおうではないか。
麺を具を米をビールを。
存分に楽しみ。
残ったスープを穴あきレンゲで追いかければひき肉がゴロゴロ現れて新たな幸福を与えてくれ。
通常のレンゲでスープをすすり。
ビールを呑みほし。
最後に、水を一杯飲んで整え。
「ごちそうさん」
会計を済ませて店を後にする。
「さて、帰るか」
駅の方面へと、足を向ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます