第307話 大阪市中央区南船場の小ラーメン(野菜マシマシニンニクマシマシアブラカラメ)
「う~む、色々しんどいな」
仕事が少々面倒な状況になってきたりしつつ、どうにかこうにか終わった帰り。
心身が疲れつつも、少し歩いて気分転換を期す。
職場から歩いて移動することしばし。
気づけば、心斎橋筋に入っていた。
「何か喰って帰るか」
帰って作る元気がない。心斎橋筋を南下していれば店は沢山あるから、適当に入ろう。
そうして、南船場の辺りまで到達したところで、ふと右手を見れば。
「ん?」
黄色い看板が見えた。
どこかで、そう東京の上野から御徒町へ歩いている辺りで見たことがある
「おおぅ、大阪に見せだしてたんかいな!」
となれば、ここはいかねばなるまいて。
店内を覗けば席は空いている。
ガラス張りの引き戸を開けて、店内へと。
食券機を眺め、
「ここは小でいいだろう」
麺量250gを小と言ってよいのかは、さておき。
厨房を真っ直ぐに横切るカウンターの最奥につき、食券を出す。
ここは、詠唱は後でいいようだ。
ならば、と『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を軌道する。現在はイベントの谷間で特に慌ててすることもなし。リーグ戦だけ軽く出撃するも、芳しくない結果。後は、おでかけを仕込んだりしたところで、
「ニンニク入れますか?」
と店員が聞いてくるものだから。
「野菜マシマシニンニクマシマシアブラカラメ、あと、アレ!」
と詠唱をする。最後の「アレ」はこの店の隠しワード。
そうしてほどなくして、目の前に丼がやってくる。
「ほほぅ」
野菜の山が若干低く感じるが、単純に丼の半径が大きいからそう見えるというのもあるだろう。頂上には軽くアブラが載っており、赤身を帯びた揚げ玉~辛玉が散らされている。今日のアレはコレだ。野菜山の麓にはホロホロの豚。にんにくが見当たらないと思ったが、よく見れば肉の下に沈んでいるのが見えた。
「いただきます」
まずは、野菜の麓からしみ出すスープをレンゲで軽く救って一口。
「豚ぁ」
出汁がしっかりと醤油で立てられた味のはっきりしたスープだった。いいぞ。
野菜を浸して喰えば、ゆでかげんがよくシャキシャキした歯応えに強いスープが絡み、野菜の甘みが逆に引き立てられる。
軽く被ったアブラと共に喰えば、旨味。
丼が広いお陰で比較的麺への導線が確保しやすいので引っ張り出してみれば、黒っぽくなった黄色い平めの太い麺。喰っている感が強い固さがいい。
そのまま、天地を返していく過程で、ホロホロの肉を一口。こちらは、以外に優しい味だ。だが、スープを絡めれば強くなる。
更に、豚の下に埋もれていたにんにくを麺を引き出しつつ全体に馴染ませれば、一気にパンチが効いた味わいに。
いいぞ。いいぞ。
心身が元気になる味だ。
ついでに備え付けのブラックペッパーとホワイトペッパーもばっさり行って、ジャンクな豚の旨みを堪能する。
麺を野菜を豚を。ときおり絡む辛玉の味わいもいいアクセントだ。
食っていて、楽しくなってくるな。
モリモリと、箸を動かして丼の中身を胃の腑に落とし込んでいく幸せを満喫する。
食は、己の生を感じさせてくれる。ああ、一日一膳。食い改めねば。
そうだ。
だから。
「スープは、飲み干したらまずいよな」
気づけば、レンゲでスープを追い駆けるタイムに入っていたのである。
流石に、全部はヤバイが。
「そうだ」
備え付けの調味料から、酢を取りだし、一回し。
「ふぅ、サッパリするなぁ」
酸味の加わった胡椒ニンニクアブラ醤油豚骨スープを少し啜り。
まだ残る分には目を瞑り。
最後に、水を一杯飲んで一息入れ。
食器を付け台に戻し。
「ごちそうさん」
店を後にした。
「さて、元気になったし、帰るか」
一路、心斎橋駅へと。
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