第294話 大阪市西区西本町の辛味つけ麺(150g)ヤサイマシマシニンニクマシマシカラメマシマシカツオバカマシ
「節制しないとなぁ……」
どうにもここのところ食べ過ぎている。ただでさえ、在宅ワーク期間で運動不足にもなっているのだ。
ここらで一念発起して節制しないと何かとまずいだろう。
そうして、仕事を終えた帰り。
「少し歩くか」
オフィス街をぶらぶらと歩く。
「いつの間にか、風景が変わってるなぁ」
長らくこちらに来ていなかったが、工事中だったところに新しい建物がいくつもできていたのだ。
そんな変化を楽しみながらふらふらと歩いていると。
「本町、か」
いつの間にか、本町駅に来ていた。
ここから帰宅の途についてもいいのだが。
「腹が、減ったな……」
少し歩いて体を動かしたことで、腹の虫が活発になっていた。
なら、それに従おう。
しかし。
「節制、しないとなぁ」
やはり、野菜をメインに喰うべきだろう。
とにかく、野菜だ。
なら。
「久々に、行くか」
そのまま、高速沿いから少し北側の道に入ってなにわ筋方面に歩くと、のぼりが見えてくる。
中途半端な時間だからか、店の奥の厨房から手前に向かってコの字に張り出した形のカウンター席の店内にはまだ客はいない。
ならばと入り、食券機の前に。
「やっぱり、これかな」
ということで、辛みつけ麺の食券を買って席へ。
「ニンニクどうしますか?」
「ニンニクマシマシヤサイマシマシカラメマシマシカツオバカマシで」
そして、ここからが節制だ。
「あと、麺少な目、冷盛りで」
これで、ばっちりだ。野菜をたっぷり喰うという節制をこれで満たせるであろう。
注文を通せば後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。
今日はイベント最終日。なんとかリリーは100位以内に居残りたい、と思いつつも、お出かけやらを仕込んでいる間に厨房は手際よく調理を進めていた。出撃中に来ても厄介なので、ここまでにし、待つことしばし。
注文の品がやってきた。
「うん、野菜だ」
丼にカツオが載った山盛りの野菜。赤黒いつけ汁。そして、カツオに埋もれた軽めの麺。添えられたレンゲには山盛りのニンニク。
節制しているねぇ。節制しているねぇ。節制しているねぇ。
大丈夫だ、問題ない。
そう、信じて。
「いただきます」
野菜をそのまままずはいただく。
「うん、優しい味わいだ」
カツオと、ゆで汁に出汁が入っているのかほのかな豚の風味。それだけで十分味わえる。
それを、つけ汁に浸せば。
「やっぱり、この味はいいな」
豚骨魚介のありがちな味わいではなく、ちょっと甘み、そして辛みのあるつけ汁は独特な味わいだ。そこに野菜を浸すと、旨い。これで十分な味わいである。
が、麺もいかねば。
箸で麺をすくい上げスープに浸して喰えば。
「おお、締ってるなぁ」
冷にしたので太い麺がきゅっと凝縮されて噛み応えがあっていい感じだ。バキバキの麺を噛み砕くような食の楽しみがある。当然、噛めば麺の旨み付き。
あと、麺の丼にカラメが入っていたので醤油の味もガツンとくるのがいい。
しばしその味を楽しみ。
「そろそろ、行くか」
レンゲに入ったニンニクをつけ汁に投入して麺を啜れば。
「辛い……ってニンニクの辛さだな、これ」
ギンギンにニンニクが効いてジャンク感マシマシだ。その味で喰う野菜もいい。
だが、刺激が中々にキツイ。
そこで。
「こういうのは、どうだろう?」
野菜を麺の底にたまったカラメに浸すのだ。
「おお、これはいいぞ」
カツオと醤油の味わいで喰う野菜はいい塩梅だ。麺もそれでいける。
ということで。
「なんだ、これは?」
野菜適量と残った麺をつけ汁に浸し。
麺の丼に残った野菜とゆで汁をぶち込み。
スープと麺の二皿に。
先に野菜をいただけば。
「おお、カツオスープ……」
野菜のゆで汁とカラメ、そしてカツオが見事に溶け合って美味しいスープになっていた。
そのまま、最後までいただき。
麺の器に。
「これはこれで、いいな」
サイコロ上のチャーシューとメンマと海苔の入ったスープを麺と野菜で絡めとるようにいただく。ニンニクの辛みは野菜と相殺しつつ、バクバクと平らげる。
「ふぅ」
水を飲んで一息つくが、まだ、終わりじゃない。
「スープ割をお願いします」
そうして、残ったつけ汁をスープに進化させる。
「はぁ、落ち着くが……まだ、辛いな」
ちょっとニンニク効きすぎか? それでも、旨みは十分。
ゆっくりとレンゲで楽しみ。
最後に、水を一杯飲んで一息入れ。
「ごちそうさん」
店を後にする。
「さて、節制したけど、運動もしておくかな?」
西へ、進路を取る。
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