第293話 大阪市中央区日本橋のラーメン(並ヤサイマシマシニンニクマシマシカラメ魚粉)

「ララララーメン大好きこ……」


 タイトルロールだけど歌でもあるので微妙と思い、途中で留める。

 ともあれ、一仕事終えた後の難波である。いつの間にやら『ラーメン大好き小泉さん』のコミックスをメロンブックスの2号館で確保したのだった。難波に近くて非常にありがたい。


 そうして、そのまま直進すればオタロードなわけだが。


「腹が減ったな……」


 そして、この流れでラーメンを喰わないのは嘘であろう。


 というわけで、夕立のように一瞬の大雨を傘で凌ぎつつ、オタロードを抜けて北上。


「一番ノリ、か」


 天候もあるのか、開店少し前の店頭には列はなく、先頭待機となった。


 徐に『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動すると、今日からの新しいイベントのための更新が始まった。まぁ、今回はロザリーのターンだから、のんびりやればいいだろう。


 そうして、更新が終わり。


「ん? 新しいリリーがいたぞ?」


 タイトル画面にロザリーだけでなくリリーとアンゼリカもいたのだ。


 気になりつつログインすれば、前回イベントの結果発表。


「よし、なんとかリリーのランキングは30位維持だ」


 11位~30位の景品にギリギリ滑り込み成功だ。頑張った甲斐があったというものだろう。


 そうして、新しいイベントの概要を……見ようとしたところで店が開いたのだった。いつの間にか後ろに人が並んでいたので、さっさと入らねば。


 細い通路を直進し、突き当たりの食券機でラーメンの食券を購入。今日は基本でいこう。


 そのまま、好きな席にということなので、奥の給水器横の角席に着く。水を飲んで一息吐きつつ、食券を出し。


「麺の量はどうされますか?」


「並で」


「ニンニク入れますか?」


「ニンニクマシマシで、あと、ヤサイマシマシカラメ魚粉で」


 とルーチンのように注文を通せば、後は待つばかりだ。


「どういう、ことだ?」


 改めて今回のゴ魔乙のイベントの内容を見れば。


「アクティブポイントで進化……だと……」


 アンゼリカ、リリー、ロザリーのそれぞれのステージを周回して溜める、大型イベント同様の方式。


「待て、続けざまに、リリー、か?」


 これは、大変だ。主に財布的な意味で。


 どうしたものか考えつつ、受け取った報酬の整理をしたりしていると、思いの外時間を喰った。


 目の前の厨房では既に盛りつけに入っていたので、ゴ魔乙は終了して備える。


 そうして、やってきたのは。


「ふむふむ……山だな」


 ヤサイが積み上がっていい感じの山を形成し、頂上は魚粉で彩られている麓には、豚の肉塊と刻みニンニク。染み出る褐色のスープ。


 いい、感じだ。


「いただきます」


 まずは、魚粉でヤサイを。


「これだけでも旨いんだよなぁ」


 魚粉の出汁がしっかり効いているので、ヤサイがモリモリ食えてしまうのだ。


 だが、これで魚粉を使い果たしては勿体ない。頂上を麓にスライドさせるように、ヤサイの山を崩していく。


 そうして、頃合いを見て豚とニンニクを沈め。麺を引っ張り出す。


「ああ、バキバキで食べ応えがあって、いい……」


 炭水化物を喰らう充実感を感じられる、太くて固い麺は幸福を与えてくれる。カラメが効いて醤油が立った味わいが、汗をかいた身にも染みる。


 豚を囓り、ヤサイを食み、麺を喰らう。


 もう、細かいことはいい。


 本能的に幸福を求め、箸とレンゲを動かす。


 途上で。


「刺激を、プラスだ」


 一味と胡椒をダバッとかける。気にしたら負けだ。


 唐辛子と胡椒の風味を楽しみ、モリモリと丼の中身を胃の腑に沈めていく。


 ああ、生きている。


 幸せだ。


 カラメが効いて、カラダも喜ぶ。


 から……うま。


 ……っといかん。帰ってこないと。


 気がつけば、もう、残り少ない。


 気にせず、ペースを落とさず。


 喰らう。


 喰らう。


 喰らう。


「ふぅ……終わり、か」


 丼の中には、ヤサイと麺の破片とスープのみ。


 少しレンゲで追い駆けて浚え。


 水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、少し歩くか」


 オタロードへと、足を向ける。

 

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