第292話 大阪市東成区大今里のスタミナラーメン+チャーハン+ニラレバ炒め+生ビール

「ろくなもんがないな……」


 休日の昼間、冷蔵庫を開けて嘆息する。あり合わせでどうこうするよりも、何か喰いにいった方が早いだろう。


 かくして、出かけることにしたのだが……


「暑い」


 ふらりと思い立って訪れた大阪メトロ今里駅近辺は、暑かった。

 いや、別にそんな局地的な暑さではなく、全国的に暑いのだろうが。

 日本の夏の地上は、そういうものだ。


 思考も支離滅裂になりながら、目星を付けていた店へと赴く。


「流石に、すぐ入れそうだな」


 昼時には少し早いお陰か、一階のカウンター席に空きがあった。


 即座に入り、出された水を飲んで一息。


 そこからメニューを開く。


「ああ、あってよかった……」


 ある意味、今日の目当てのものだ。

 こんな暑い日にはスタミナを補充せねばならない。


 だが、それだけでは寂しい。


 付け合わせサイズの中華の一品物が充実した店なので、それも合わせて頼むことにする。


 しばし考えて整ったところで、店員に注文だ。


「スタミナラーメンと、ジャストサイズの炒飯とニラレバ炒め、あと、生ビールを。ビールは食事と一緒にお願いします」


 とサクッと通す。勢いで頼みすぎたようにも思うが、せっかくなので色々楽しもう。


 後は待つばかりとなれば、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動だ。現在、大型イベントでいよいよ五悪魔のターン。リリーを応援すべく出撃を繰り返さねばならないのだが。


「そういや、AP使い果たしてたな……」


 当然だろう。むしろ家を出るまでに回復アイテムを消費して三回ほど余分に出撃もこなした後だった。おでかけも仕掛け済み。


 というわけで、ゴ魔乙は一旦終了し、水を飲んで一息を着く。それほど時間はかからないだろう。


 案の上、ボンヤリしていると、まずはお盆にのせられてラーメンと炒飯がやって来る。


「あ、スープが被ったか……」


 炒飯、このサイズでもスープ付きか。でもまぁ、いいだろう。


 一方のラーメンは。


「これは元気になりそうだ」


 赤々としているのは、ニンニク醤油スープに辛味がプラスされているからだ。具材は白菜とニラと豚。ジェネリック彩(それ以上、いけない


 同じチェーンでは季節限定だったりするのだが、この店は常設なのが嬉しいスタミナラーメンだ。


 ニラレバは時間が掛かりそうなので、先に麺をいただくとしよう。


「いただきます」


 箸を手に、ストレートの麺を啜れば。


「うんうん、見た目通りの元気味だ」


 ガツンとニンニクが効いたところに唐辛子の辛味と旨味が追い駆けてくる。シンプルなストレート麺だけに、スープの味もストレートに伝わってくる。


 旨い。夏向きの味だなぁ。


 そうして感慨に耽っていると、小皿に盛られたニラレバ炒めと生ビールもやってくる。


 さっそくビールで喉を潤し。


 ニラレバを一口。


「こちらも元気になる味だ」


 塩気の効いた薄い衣を纏ったレバー独特の旨味。その旨味を纏ったニラとモヤシ。一口でしっかりした満足感がある。


 ここで、満を持して炒飯。


「安心の味だなぁ」


 ごくごくオーソドックス、だからこそ、旨い。


 今日は、中華と天理のコラボレーションだ。麺を啜り、炒飯を、ニラレバを頬張り、ビールで流し込む。


 贅沢な一時だ。


 ときおり、炒飯についてきたスープで一休み。とろみのついた主張しないシンプルな味わいが嬉しい。


 細かいことはいいだろう。


 ニラと唐辛子とニンニクと豚と醤油と。その味わいを余さず楽しませてくれるラーメンと、ニラレバ炒め。相性が悪いわけがない。それらを繋ぐように炒飯とスープを賞味し、ビールをグビリ。


 幸せな食の時間を堪能する。


 そうして。


「おしまい、か」


 すべての皿を食い尽くし、ビールも空。


 残るは、ラーメンのスープのみ。底に溜まったニンニクごと掬い挙げて数口追い駆け。

 

 汝完飲すべからず。


 戒めを思い出し。


 レンゲを置き。


 最後に水を一杯飲んでリフレッシュして。


「ごちそうさん」


 会計を済ませ、店を出る。


「さて、帰るか」


 大阪メトロ今里駅へと、足を向ける。




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る