第290話 大阪市北区曾根崎の辛つけ麺(大)+生ビール
「青春だなぁ……」
中々複雑なご時世ながら、可能な限りの備えをして青春バンドTRPGを楽しんだ帰り。
少し早めに終わったので、梅田で本屋を巡ってみる。気になった映画の原作を探していたのだが……
「店が悪かったか」
どうにも、新しい店では本の並べ方が小洒落ていてコレジャナイ感があったり、久々に行った店では売り場が縮小されていたり、と店の巡り合わせが悪く欲しい本は手に入らず終い。もっと大きなところへ赴けばあるだろうが、東梅田まで来てしまっているので、ここからは結構歩く。今から目指す体力もないので素直に帰ろうかとしたのだが。
「腹が、減ったな……」
TRPGは頭を使う。頭を使えばお腹が空く。道理だろう。
「せっかくだから、久々に行くか」
東梅田だと、気に入っているつけ麺やがある。そこへ向かう。
東梅田の改札に入らず左に折れ、幾つかのビルの地下を通り抜けてお初天神方面に出る。そこから、新御堂に出て南下。国道一号線に出る手前に、斜めに張った暖簾と看板が見えてくる。
店内を覗いて観れば、先客はいるが、奥の方は空いてそうだ。
足を踏みれ食券機前に。
「ラーメンも増えたが、ここはつけ麺……カレーや坦々もいいが、やはり、基本で」
ということで、辛つけ麺を選択。辛があればそちらが基本になるのがマイルール。
それで終わり、とはならず。
「暑かったからな」
生ビールを追加する。
そうして、奥のカウンター席に付いて食券を出す。ビールのタイミングについては。
「麺と一緒にお願いします」
と告げれば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在はナイトプールイベントの学園乙女のターン。
とはいえ、出撃する余裕があるのか解らないので適当におでかけを仕込んだりして過ごしていると。
「注文が入りました」
店内に設置されたタブレットから音声通知が流れ、注文が通っていく。
「宅配、か」
今のご時世、どこも対応しているものだ。
結構な数の注文が入り、客の数よりも多くの麺が作られる。
そんな状況の中、一歩早く作り始めていた私の注文の品がやってくる。
ラー油で赤く染まったつけ汁。どんと盛られ一枚の海苔が添えられたツルツルの太麺。キンキンに冷えた生ビール。
「いい感じだ」
食欲をそそられながら、
「いただきます」
まずは、グビリと生ビールを。
「ありがてぇ(以下略」
心地良く広がっていく冷気と味わい。
続いて、麺をつけ汁に浸してずるりと。
「おお、この味だ……」
つけ麺は結構どこも同じ系統の魚介豚骨が多が、ここは鶏ガラ豚骨をベースにしているからか、少し独特な味わいがある。甘みが強いので好みが分かれるところだが、この味わいは時々無性に食いたくなるのだ。
満たされつつ、ずるずると麺を少し喰ったところで。
「玉葱を」
と店員にお願いする。薬味の玉ねぎは席に設置されておらず、傷まないように冷蔵庫に入れられており、随時出して貰う形なのだ。
壺に入った刻み玉葱を、バラバラと麺に絡めていく。冷えた玉葱をいきなりスープに入れると一気に冷めるため、麺に馴染ませていくのがよいというのが自身の辿り着いた食い方だ。
少し胡椒を振り掛けて玉ねぎを絡めた麺をそのまま喰っても、中々旨い。ある程度馴染ませたところで、汁にインして喰うと、更に旨い。
ビールを適宜グビグビやりながらのつけ麺。幸せだ。
つけ汁には、以前は角切りだった気がするが、今回は薄切りの大ぶりなチャーシューとメンマが入っている。
それらを味わいつつ、麺を啜る。ビールを飲む。
生きてるっていいな。
そう感じながら、麺をズルズルズルズルズルと行けば。
「もう、終わりか」
そこで、つけ汁にも玉葱を入れ。丼に最後に残った麺をすべて汁にインし。最後まで残していた海苔も浮かべ。
かっ込む。
「辛っ!」
ここに来て、辛さが主張してきた。辛味成分が沈んでいたのが上がって来たのかもしれない。
唐突な刺激。
だが、それもまたおかし。
食を楽しもう。
そのまま、麺を喰らい尽くしたところで、玉葱を更に追加。
完全に汁が冷めてしまうが、そこに付け台の上に置かれたポットからスープを投入。セルフスープ割りだ。
鶏ガラと思しき出し汁を加えれば、ちょっと豪勢な玉葱スープのできあがり。豚骨鶏ガラの味わいに辛味プラスのスープを、ズズズっと頂く。
「辛っ!」
ときおり、ダイレクトに喉と唇に刺激が来るのもまた一興。
〆の玉葱スープまでが、ここのルーチン。
美味しく最後までいただき。
ビールはとっくになくなっているので水で喉を潤し。
「ごちそうさん」
店を後にする。
「さて、帰るか」
東梅田方面へと、足を向ける。
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