第287話 大阪市中央区難波の汁無坦々麺+生ビール

「なんだったんだ、あれは?」


 幼い頃に観ていたような気がしないでもない、ロボコンの劇場映画を観てきたのだが、中々にカオスだった。


 恋が世界に混乱をもたらすセカイ系のような話だったようなそうでもないような。


 だが、ふと思い出せば、ああいうものだったかもしれない。


 あと、バラバラマンが出てくるのは8ちゃんの方だったな、そういえば。


 人体サバイバルもツボを押さえた造りだったが、間に挟まれた3Dめがねっ娘の冒険もいいものだった。


 休日の朝から刺激的な体験をしたところで、


「腹が、減ったな……」


 今日は麺を控えようと思っていたのだが。


「今、無性に汁無坦々麺が喰いたい」


 衝動に任せ、私の足はなんばパークスから北上し、比較的最近できた大手家電量販店のビルに向いていた。


「ここに、あったはず」


 飲食店というか麺屋が集まったフロアを歩き。


 坦々麺の店の店頭の食券機を見れば。


 燦然と輝く『汁無坦々麺』。


 もう、ここしか考えられない。


 食券を確保し、ついでに夏の暑さを払うために生ビール(290円と良心的値段設定)も追加して、店内へと。


 開店から時間が経っておらず、昼時にも早い時間なのもあって、先客無し。


 贅沢にテーブル席を使わせていただきつつ、一息。


 食券を出して、ビールを麺と同時に出してもらうようにお願いしたところで、水を一杯。冷えていて旨い。


 そうして、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は大型ナイトプールイベント中。だが、リリーの出番がなくモチベーションはまったり。五乙女ということでロザリーのポイントを稼いでいる最中だ。


 とはいえ、時間が微妙で朝消費しきったAPも回復しきっていない。


 適当におでかけなどを仕込んでいると時間は過ぎ、注文の品がやってきた。


「ほうほう、これはこれは……」


 丼には、赤黒いタレの掛かった麺の上に、刻み白ネギ・挽肉・ニラの三色+そのままのナッツ。そして、半熟玉子付き。


 更に、凍ったジョッキに注がれた生ビール。


「いただきます」


 まずは、玉子を入れず、そのまま混ぜて麺を啜る。


 途端、華を抜けていく甘く癖のある香り。


「八角、か」


 とても心地良い。スパイスが色々調合されたタレは、カレーと同種の深みのある味わいだ。


 麺をずるりといただき、ビールで追い駆ける。


「ありがてぇ……キンキンに冷えてやがる……」


 凍えるほどのビールで、口内の刺激を流し込む快感。


 そして。


「おお、痺れてる痺れてる」


 舌に残った花椒の刺激が露わになり、堪能する。


「そろそろ、まぜるか」


 付属の玉子を丼にぶち込み、混ぜる。


 とろりとした色の濃い黄身が赤黒いタレに溶け込んでいく。


 啜れば。


「ふむ、こってり感が出たな」


 味わいは元が強いが、とろりとした食感がこってりかんを増幅していた。

 

 続いてずるずる麺を啜り、ビールで追い駆け、舌の痺れを楽しむ。


 と。


「お、ナッツの食感、いいな」


 混ぜ込んでいたナッツをグリッと噛み砕けば、こちらもしっかりと豆の味わい。不意打ちでいい仕事をしてくれている。


 タレのスパイス、更に葱、ニラの薬味の風味、挽肉と玉子の旨み。


 ここまで来ると、全てが渾然一体となっていた。


 まぜ合わせ、頬張り、胃の腑に流し込む。


 心地良い。


 ビールをグビリとやりながら、様々な香りが混沌とした麺を啜る。


 幸せな一時。


 そうして。


「もう、終わりか」


 サラッと食べ終わり、最後のビールを飲み干せば、舌の痺れ。


 しばし、余韻に浸り。


 最後に、水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 店を後にした。


「あ、青梗菜入ってなかったな……まぁ、そこは気にするところではないか」


 ビルを後にし、駅へ向かう。

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