第284話 兵庫県西宮市津門呉羽町のみそラーメン+ライス
「今津、行けるんじゃね?」
厳しい状況の中、万全の体制で再開する合唱団の練習場所が西宮市内だった。
それなら、少し先に進めば、今津。久々に行きたいと思っていた店に寄れるじゃないか!
ということで、早めに家を出た私は、阪神電車に揺られて今津駅に降り立っていた。
阪急の駅側から降りて少し歩けば、目的の店がある。
「これなら、すぐに喰えそうだな」
満席ではあったが、待ちは二人。回転も速い店だから、練習に間に合う時間に食い終えることはできるだろう。
店に入り、食券を先に購入。
「ここは、みそラーメンいってみるか」
いつも基本の醤油ばかりなのでたまには変化を。
あと。
「ライスもつけよう」
流石に大にはしない。とはいえ、席に備え付けの調味料と一緒に並ぶタクアンを見せられるとご飯が欲しくなるのだ。
待合の席に座って数分で、席は空いて通されたところで、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は宝探しイベント中ではあるが、先に食券を出しているので、出撃している時間はなさそうだ。おでかけを仕込むに留める。
そうしてほどなく、注文の品がやって来る。
「基本は同じか」
ノーマルでも丼の周囲を埋める薄切りチャーシュー。その上には、もやしとたっぷりの葱。ただ、そこにしみ出すスープが、薄茶褐色の味噌色なのが、違い。
「いただきます」
まずは、スープをレンゲで一口。
「味噌だ」
当たり前だが、ストレートに味噌の旨味と出汁の味わいが感じられる結構ガツンとくる味噌味。ベースはオーソドックスな味ながら、この店のらしさもある。
そこをご飯で追い駆ける幸せ。
タクアンも囓ってコリッとした食感も楽しめる。
そこで、麺だ。
チャーシューをかき分けて、いや、一枚を喰らいつつ、麺を引っ張り出す。
口内に味噌と豚のええ感じのコラボレーションを楽しみつつ、目に入るのは細ストレート麺。そのまま豚味が残る口内に放り込めば、パツンとした歯応えと素朴な麺の味わいを楽しめる。そこに、強めの味噌味が絡んで心地良い。
「ああ、生きているなぁ」
これまでの当たり前が失われてしまった昨今。こうして少し遠出して麺を食らえることに、生の喜びを感じる。アルコール消毒で手がガサガサになったりしながらも、麺を食らえることはとても幸せなことなのだ。
文字通り、幸せを噛み締めたところで、更なる先を目指す。
「ウィルス対策だ」
おろしにんにくを加え。
「刺激追加」
ニラキムチを加え。
「風味追加」
焦がしにんにくを加え。
「香ばしさ投入」
ガーリックチップを加え。
随所に味変を挟みながら、豚足味噌味を楽しんでいく。
刺激を味わったら、米とタクアンでの箸休め。
好きにするのだ。
自由に食べるのだ。
ああ、自由。
脳内に多幸感が湧き上がる。
だが、終わりの時は近い。
「スープのみ、か」
ご飯も尽き、麺の破片と葱やらの薬味が残るスープだけを前に。
丼を持ち上げ。
ずずっと、最後の一口まで味わう。
胃の腑に落ちる、幸福。
幸福を 喰らい尽くして 幸腹に
余韻に浸り。
最後に水を一杯飲んで一息入れ。
「ごちそうさん」
店を後にした。
「さて、練習場所へ向かうか」
幸腹を抱えながら、合唱の練習場所へ向かうべく阪神今津駅へと。
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