第283話 大阪市浪速区難波中の濃厚魚介つけ麺

「つけ麺が、喰いたい」


 そんな日も、あるよね?


 しかし、どこで喰ったものか? ちょっと変化が欲しい。


 ということで、仕事帰りの私は御堂筋線なんば駅に降り立ち、オタロードを目指していた。


 途中、メロンブックスを少し覗いて見たりしつつ、ソフマップ前で左折。


 オタロード入り口の角の店へと。


「ここのつけ麺、喰ったことなかったな」


 それ以前に、よく前は通るのだが長らく訪れていない気がする。


 以前は900gまで増量無料だったが、今は750gまで。


 つけ麺にも特製やら辛味やらから揚げトッピングやら色々あるが、ここはノーマルでいこう。


 店頭で濃厚魚介つけ麺の食券を確保し、厨房をカウンターがL字型に囲むこじんまりした店内へ。二階と奥もあるが、入ってすぐのカウンター席へ着く。


 食券を出すと麺の量を聞かれる。


 流石に、特盛り750gは多いか?


 ならば。


「大盛で」


 550g。まぁ、これぐらいならいけるだろう。


 注文を通せば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は蛍狩りで想い集めイベント中。特にリリーは絡んでこないのでのんびりと進めているところだ。


 なので、ゆるゆるとおでかけを仕込んだりしている間に、麺が茹であがる気配を感じたので出撃は控えてしばし。


 注文の品がやってきた。


「なるほど、こういう感じか」


 濃い褐色のつけ汁には、太いメンマと角切りの豚、薬味にネギ。


 大皿に、濃い色合いの全粒粉麺がドンと盛られている。


 なるほど。


 麺喰らうって感じだな。


「いただきます」


 箸を手に、麺をつけ汁に浸して啜れば。


「ああ、なんか、安心する味だ」


 どこまでもオーソドックスな魚介つけ麺の味わい。麺は歯応えがあり、麦の風味も強い。


 細かいことはいい。


 とにかくつけ麺を食いたい。


 その欲望に忠実になれる、素直な味わいがありがたい。


「これはもう、理屈じゃない」


 麺を啜る。


 麺を啜る。


 麺を啜る。


 麺喰らう。


 とにかく、麺だ。


 いや。


「このメンマ、いいな」


 コリッとした歯応えがいいアクセントになっている。


 しかし、そこからは。


 麺を啜る。


 麺を啜る。


 麺を啜る。


 麺喰らう。


 存分に、麺を味わう。


 これだ。私が求めていたモノだ。


 幸福を噛み締めながら、豚を囓る。


 旨い。


 つけ麺はほぼ麺。


 そこに加わる具材による変化を楽しむのが乙というものだ。知らんけど。


「さて、そろそろ、フィニッシュか」


 黙々と麺を喰らったら、終わりは近い。


 丁度、汁の器に一杯分程度の麺。


 ならば。


 全てを汁につけ。


 酢を少々。


 更に、ゴマを擦りましょう容器のゴマをね。


 という感じで、最後の豚一欠片を加えた小さな一椀を完成させる。


 改めて。


「いただきます」


 啜ると、先程までとは打って変わってすっきりした酸味と、ゴマの香り。


 大きな味変だが、それがいい。


 残った豚を囓り。


 麺を頬張り。


 汁を飲み干す。

 

 スープ割りするまでもない。


 思うさまに麺を喰らった至福。


 水を一杯飲んで一息入れ。


 付け台に食器を戻し。


「ごちそうさん」


 店を後にした。


「さて、少し歩くか」


 とりあえず、ソフマップへ。


 

 

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