第277話 大阪市浪速区日本橋のツナマヨジャンキー(野菜マシマシアブラノーマルマヨネーズマシニンニクマシマシフライドオニオンマシマシ)

「いい映画だった」


 休日の午前中。上映時間が丁度いいからと『ワイルド・ローズ』という作品を鑑賞したのだった。


 カントリー歌手としての才能もあり、いずれは音楽のメッカナッシュビルで身を立てたいと願うローズマリー。しかし彼女はその奔放な性格から十代で二児のシングルマザーとなり、さらにはヤンチャして懲役まで喰らう始末。出所して立場も悪くなったところで、夢と母との狭間で揺れてもがくことに……


 とても地に足のついた映画で、心に響くものがあった。


 そうして、心は満たされたのだが。


「腹が、減ったな……」


 上映時間の関係で、朝が早かったのもあるが、昼時前ではあるが既に腹の虫が騒ぎ始めていた。


 幸い、既に飲食店の多くが店を開けている。


 買い物をしたいが、その前にさっさと飯を食ってしまおう。


 劇場を出て、東へ向かい南海の高架を潜り、更に進んでオタロード方面へと。何を喰おうか考えていたところで。


「そういや、気になってて喰えてないのがあったな」


 と思い至り、目的地を決定する。


 オタロードに入ったところしばし北上し、右折。そこに目的の店はあった。


「お、空いてるな」


 まだオープンから間もない時間であるのがよかったのか、すぐ入れそうだった。


 そこで、ずっと気になっていた、『ツナマヨジャンキー』の食券を買って店内へと。


 紙コップで水を飲んで一息入れ、食券を回収に来た店員に、


「野菜マシマシアブラノーマルマヨネーズマシニンニクマシマシフライドオニオンマシマシ」


 と、店内のトッピングの表示を見ながら伝えれば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在は、学園乙女のイベント中だが、本日は土曜日でスコアタの日でもある。おでかけを仕込み、スコアタに挑戦する。


「お、スコア更新か」


 そこそこのスコアアップを果たし、イベントステージに出撃するかどうか迷っているところで、注文の品がやってきた。


「おお、確かにジャンキーだ」


 丼の中には山盛りの野菜の上に、フライドオニオンの褐色と、コーンの黄色が彩りになっているが、後はニンニクと、もやしと、マヨネーズと全体に白っぽい。だが、それがいい。


「いただきます」


 レンゲと箸で、豪快にまぜ合わせると、底からは醤油ダレらしきものを纏った麺が現れる。ある程度まぜたところで麺を啜ってみれば。


「おお、重い」


 ガツンとくる醤油ダレ。基本は、他の豚骨醤油系のガッツリ系の風味。だが、更にまぜ合わせてから喰うと。


「なんか、猫マンマ?」


 鰹節ではなくツナだが、マヨネーズとにんにくと醤油とオニオンとごっちゃごちゃになったものを一気に口内で味わうと、そう、表現したくなる味わいだった。ツナの味が醤油に負けていない。マヨネーズはタレで伸ばされてもうなんだか解らない調味料になっているが、旨い。


 ときおりからんでくるコーンの甘みとツナのしょっぱさの対比を楽しみつつ麺をずるずると啜っていく。なんというか、これは、かきこんでいくスタイルが似合う、そういう味だ。


 だが、途中でふと、マヨネーズが負けていくのを感じてしまう。


 だめだ。もう少し、マヨの味が欲しい。


 卓上をみる。


「これは、マヨネーズの原料の一つじゃないか!」


 というわけで、酢を二回しほど。


「おお、この酸味……マヨネーズ感が戻ってきたぞ」


 クリームっぽい部分が残っていたのでえ、酢と合わさればマヨネーズだ。多分。


 そのまま、ガツガツかっこんでいけば、あっという間に麺はなくなってしまった。


 最後には、白と茶の斑のようなタレが残る。


 レンゲでおいかければ、コーンやツナやフライドオニオンが引っかかってくる。


 しばしそれらを楽しみ。


 流石にこのタレを飲み干すのはどうかと思い。


 最後に、水を一杯のんで。


「ごちそうさん」


 食器を付け台に戻して店を後にした。


「並んでるな」


 食事時が近づいて来たからか、外には列が出来ていた。やはり、早めに来て盛会だったというこだろう。


「さて、買い物していきますかね」


 ふらり、と、オタロードへ。

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