第275話 大阪府茨木市新庄町のラーメン200gニンニク野菜カラメ一味

「リスクを受け入れて、動くことも大事であろう」


 不要不急かどうかは、個々人に寄るモノであり、リスクを受け入れて対策しつつ動いていかなければ干からびてしまうものが沢山ある。


 干からびさせないためには、十分にリスクを理解した上で行動することは不可欠である。そもそも、出勤を強いられている時点で、辻褄が合わぬのだ。


 大事なのは手指の消毒とうがい。マスクはウィルスを防ぐには気休めに過ぎない。仮にマスクで防げるにしても、目から入るので、誰もが眼鏡を掛ける必要がある。おやおやおやおや、それはそれで素晴らしい! が、飛沫を防ぐ効果はあるので飛沫からの接触感染を予防する効果は認められるという単純な話。飛沫感染じゃなくて、接触感染を警戒する、となれば、手指の消毒の大切さは自ずとみえてこよう。


 と、できる限りの対策を打って、心の健康を保つためにもほどほどに趣味を楽しむことも必要だ。夢を語り歴史を刻みおもしろい方へそれが好きだから進むのだ。


 かくして私は、茨木の地を訪れていたのだ。


 とても充実した時間を過ごし、今の心境を語るなら。


「腹が、減った」


 ということだ。万全の対策の元で趣味を満喫したことで、消耗しているのだ。免疫力を高めるためにも、しっかり喰わねば。


 ならば。


「そうだ、あの店まだいけてなかったな……」 


 かくして、阪急茨城市駅方面へと向かい、少し手前で右折。しばらく歩けば、目的の店の青地に豪快な白い手書き文字風の看板が見えてきた。


「おお、それなりに入っているな」


 消毒薬を置いたり対策しつつ、営業は行われていた。満員だが待ちは少ない。


 さっさと入り、まずはラーメン並の食券購入。するとその時点で麺量を尋ねられる。デフォは300gだが、この系列は油断すると危険がある。無難に白いプレートの食券に青い洗濯挟みをつけて200gで注文する。


 待合席に着くと、そう待たずに客がはけていった。タイミングが良かったようだ。


 ほどなく奥の席に通されて、食券を出す。


 そこから、セルフのおしぼりコップ箸レンゲを確保して一息。おもむろに、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動したのだが、先に麺量を伝えてあったのもあり、すぐに店員から声がかかる。


「ニンニク入れますか」


「ニンニクありで」


 店内の表示に従い、まずはニンニク有無を答える。次は、個別だ。


「ニンニクマシ野菜マシカラメ一味で」


 一味が手元になく追加メニューのようなので、合わせて唱えておく。要するに、


「アブラ以外全マシですね」


 という店員の確認の通りである。


 そこから盛り付けが始まり、すぐに注文の品が目の前に。


「おやおやおやおや」


 マシにした割には大人しい量の野菜、一方でマシにしたことでガッツリ入ったニンニクと、野菜の山の四分の一ぐらいを埋める赤い雪。頂上には軽くアブラがまぶされ、麓には大きな厚切り豚が二枚鎮座している。


 これなら、免疫力アップ間違いなし!


「いただきます」


 量的にすぐに天地が返せるのだが、まずは野菜を一口。


「これはこれは……」


 ガッツリ豚骨醤油にアミノ酸の旨味。この系統の味わいとしてはかなり好みの味付けだ。素晴らしい!


 これは期待ができると、天地を返して麺を引っ張り出せば、ゴワゴワの太くて黄色くてほどよくスープで黒っぽくなった姿。囓れば、歯応え抜群。旨味もたっぷり。


「ああ、生き返る」


 疲れた体に染み渡る味わいだ。


 夢中になって食べ進め、ときおり単品で定食のメインをはれそうな豚を囓れば、閉まった身に豚そのものの旨味に、スープの出汁がプラス。お酒が進みそうな味わいは、だが、今は麺を野菜を進める起爆剤となる。


 度し難い勢いで、食が進む。さすれば、ぽかぽかと体が温まってくる。


「そうか、一味……」


 元の味に溶け込んでいたが、しっかり風味をプラスして旨味を支えていたのだが、カプサイシンが仕事を始めたようだ。


 思わず、水を追加して飲み、続きを楽しむ。


 ああ、喰っている。


 生きている。


 健康になっていく。


 ニンニクに含まれるアリシンの殺菌作用は最強クラス。喰いすぎると腸内細菌が全滅する上、ウィルスにも効果がある。


 ウィルスが体内に入っても、免疫で対抗しきれば発症しないし発症しないレベルなら大概への排出も極小になる。


 ゆえに、この食は、防疫でもあるのだ。


 食は、奪えない。


 医食同源。


 食は、癒し。


 もう、愛かもしれない。


 食は愛、愛ですよナ。


 と、なんだかおかしな妄想が浮かんだところで。


「もう、終わりか」 


 麺量を減らし野菜マシのボリュームもそこまでではなかったので、あっさりと食い終えることができた。


 腹八分目、か。多分。


 名残を惜しみレンゲでスープを啜れば、ジャリジャリと刻みニンニクが口内に広がる。これで、口内のウィルスは除去できたであろう。


 最後に、水を注いで一杯飲み干し。


 食器を付け台に戻し。


「ごちそうさん」


 おしぼりを入り口のカゴに戻して店を後にした。


「喰った、な」


 くちくなった腹を抱え、


「少し、歩くか」


 すぐそばの阪急茨城市駅ではなく、JR茨木駅を目指して、歩む。

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