第256話 兵庫県西宮市津門呉羽町のチャーシューメン+ライス

「なんだか無性に喰いたいな……」


 特定のものをどうしても食べたい、と思うことはないだろうか?

 私にはある。

 しかし、近所にはない店だ。

 それでも、喰いたい。


 だからこそ私は、少しでも近い店舗を探す。


「今津が最寄か」


 という訳で、あいにくの雨もものとせず、休日を利用して今津へと赴くことにした。


「さて、店の場所は阪急の方だったな」


 阪神今津駅から、二階の連絡通路を通って阪急へ向かうと。


「お、あそこか」


 すぐに目的の店舗が見えてきた。


 が。


「あ、ここからいけないのか」


 見えてすぐの階段から一階へ降りようとしたところ、道路に柵があり渡れないことに気づく。


「ということは、もっと向こうで降りないとな」


 そのまま阪急の駅に到達して、そこから降りれば道路の反対側だ。


「よし、いけるな」


 赤いテントの目立つ目的の店へと、歩みを進める。


 昼時を少し外れているからか、席には空きがある。


 早速入り、券売機へ。


 メニューは中華そばとチャーシューメン、味噌ラーメン、つけ麺。


「ここは基本と欲望に忠実にいこう」


 奇をてらわず、チャーシューメンと、ライスの食券を確保する。

 ちょっと豪華なラーメンセットだ。

 人形遣いの好物だ。国崎最高!


 そうして、空いた席に座って食券を出せば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 未だ、バレンタインイベントが継続しているが、五乙女なのでモチベーションは高くない。欲張らず、ロザリーのステージを回して過ごすと、注文の品はすぐにやってきた。


「チャーシューだ」


 チャーシューが載っていた。

 丼の表面を肉々しいチャーシューが埋め尽くしていた。

 数か月ぶりに訪れたこの店で。

 今もなり続ける腹の虫を抱えて。

 私は、一杯のラーメンに出会った……


「これは、旨そうだな」

 

 茶碗に盛られたご飯と並べ、更には備え付けのたくあんを確保し、加えてニラ胡椒と焦がしニンニクもドバっと肉の上に乗せる。


 これで、準備完了だ。


「いただきます」


 まずは、ニラ胡椒を肉でくるんで喰う。いや、最初はどう頑張っても肉しか食えないのだ。


「ああ、もう、こういう料理でもいいぐらいだ」


 味付けは淡白で肉自体の味わいのチャーシューにピリ辛のニラ胡椒が加わるとそれだけで旨い。ビールが欲しいが、さすがに我慢。


 続いて、焦がしニンニクをスープに溶いて啜れば。


「おお、ほどよく香ばしい……」


 ニンニクの風味もありつつ香ばしさが立っている。チャーシューの上からなので元のスープに影響は与えずに楽しめるのがよいな。


「さて、本格的に喰うか」


 肉を喰らい、スペースを空ければ、ネギともやしが顔を出す。具材もチャーシューの下にあるのだ。


 それらを味わいつつ、中細ストレート麺を引っ張り出して啜る。


「麺だ……」


 肉感が強すぎたので、なんだかほっとする。


 それでいて、中細ストレート麺の存在感は高い。スープとの相性もいい。


 そして、


「ごはんもいいな」


 ぶつ切りのたくあんでご飯を食して箸休め。ここが、他の店ではできない芸当だ。たくあんの甘みで口内に変化を持たせ、麺とスープを味わうと、得も言われぬ味わいだ。


「しかし、肉が減らないな」


 ここのチャーシュー麺ではよくあることだ。


 喰っても喰ってもなくならない。むしろ麺の方が先になくなりそうだ。


「っと、もう少し攻めるか」


 今度は、おろしにんにくを投入してパンチとインパクトを加え、更にガーリックチップを追加。って、焦がしニンニク、おろしにんにく、ガーリックチップとどれだけニンニク推しなんだ? いや、ありがたいが。


「うんうん、どんなときも元気になれる味わいだ」


 肉を喰らい麺を喰らい、肉を喰らい、肉を喰らい……


「やっぱり、肉が終わらないな」


 麺を喰ってご飯も喰い終わっても、肉が残っている。看板に偽りないチャーシューメンだ。


 だが、そこがいい。


 思うさま、肉をむさぼり喰らい尽くし。


 最後に残ったニンニクマシマシなスープもガッツリ飲み干し。


 最後に、水を一杯飲んで一息つき。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「そういや、今日はららぽーと甲子園でダイスを販売していたな」


 せっかくなので寄るか、と阪神の駅へと。


 

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