第250話 大阪市中央区難波の濃厚鶏豚骨つけ麺
「あまり時間がないな……」
本日は、休日を利用してガッツリフリーパスを活用して映画を観ようとしていたのだが、食事の時間がカツカツだった。
朝一で『パラサイト 半地下の家族』を観た。半地下で暮らす貧しい家族がから計画的にある金持ちの家庭を食い物にしようとたくらんだ顛末。途中の仕掛けも活きていて、また、結末も感じるものがあった。しかし、昨年の『万引き家族』に続いてこの作品が今年のパルムドール受賞ということが、一番考えさせられるとい言わざるをえまい。
続いて休みなく『ペット・セメタリー』へ。田舎町に引っ越した家族。父が知ってしまった秘密。それゆえに犯した過ちの行く末は……という感じながら、これはきっとハッピーエンドだ、うん。
しかし、半地下に、セメタリー=墓=地中。地下ばかりだ。
続いて『メイド・イン・アビス-深き魂の黎明- 』を観ようとしていたのだが、間か四十分しかなく、今に至るわけだ。
「よし、ここにしておくか」
劇場の前の大型家電量販店の最上階を目指す。
そこは、麺屋のひしめく場だ。
「そういや、ここ、行ったことなかったな」
エレベーターを降りてすぐの、つけ麺屋。
「悩んでいる暇はない、行こう」
そうして、食券機前に。
「うむ、そこそこいい値段か」
とはいえ、こだわりの店なら千円オーバーも普通だろう。
あっさりと濃厚があるが、
「濃厚鶏豚骨つけ麺……大にしておくか」
というわけで、食券を買って店に入れば、すぐに厨房から店員がやってくる。通知がいく仕組みなのだろう。
席は空いているところを好きに座っていいということなので、食券を出した後は一番奥のカウンター席に着く。
とりあえず、席に備え付けのコップで水を飲む。水分補給の暇もなかったので、染みる。
そうして、後は待つばかりと『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。おでかけを仕込んで一回出撃して、ぐらいで、注文の品がやってくる気配がしたので終了。
そうして、お盆に乗せてつけ汁と麺がやってきた。
「ほぉ、なんか盛り付けが綺麗だ」
漬け汁は、褐色で不透明。ネギが浮いていて、器によりそうように一枚の海苔が添えられている。
麺は、黒い粒が見える全粒粉の太麺。大きなレアチャーシューと極太で胡椒の掛かったメンマが二本、そして、丼を縦断するように小松菜の緑が映える。
「いただきます」
見ていても腹は満たされないので、さっそく麺を掴んでスープを絡め、食せば。
「看板に偽りなき濃厚さだな」
ドロドロのスープは麺にしっかり絡んでくる。鶏豚骨ということだが、魚粉も効いていて定番の味ながら、他にない重さがある。
すごい食い応えだ、これ。
「うん、並でよかったんじゃ?」
と思えてくるほどに。
ネギはたっぷりめなのが薬味として味の重さにはいい仕事をしているのだが、麺の食べ応えは如何ともしがたい。
気持ちを切り替えて他の具材を楽しもう。
「ん? 胡椒味が新鮮だな」
極太メンマを汁に浸して囓ると、甘辛い味わいにピリリと刺激があるのが楽しい。
チャーシューは、見た目も味も旨味のしっかりしたハムに近い。
小松菜は、麺と一緒に食べてみるが葉物の味わいもあるがモチモチした麺の中に加わる食感が面白い。
などなど、個別に楽しんだのだが。
「う、時間が……」
もう、残り二十分を切っている。
「よし、細かいこと考えず楽しもう」
極太モチモチの麺を汁に浸して喰い、海苔も勢いで食い、ネギを絡めたりメンマを囓ったりチャーシューを囓ったりしてモキュモキュと麺を頬張る。
ボリュームがあり大分お腹が膨れてきたが、それでも濃厚な味わいに釣られて喰ってしまえる、そんなつけ麺だった。
「……結構、手強かったな」
どうにか、麺と具材を処理しきった頃には、少々の疲れ。
だが。
「ここまで来たら、最後まで」
備え付けのスープを汁に入れる。
「薄まってちょっとホッとするな」
スープは魚介系で、獣を魚で抑えつつ濃厚さも薄れて大分印象が変わる。
これはこれでいいのだが。
「もう、終わりか」
重たい大盛麺に合わせたお陰で、汁がほとんど残っていなかったのである。
それもまた、一興だろう。
「ふぅ」
最後の水を一杯飲んで一息入れ。
「ごちそうさん」
食器を返却口に戻して、店を後にした。
「これなら間に合うか」
目の前の劇場へ深淵を覗くべく向かう。
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