第249話 難波千日前のラーメン(ごはん食べ放題、キムチ・ニラ・ニンニク入れ放題)

「どうにも、危険な香りがするな……」


 最近、周囲でインフルエンザが流行っているのだ。


 風邪でも仕事に出たりするのが当たり前とかいう狂気が満ちた日本では、蔓延もしやすい。


 そういったリスクを鑑みると、ここはやはり、


「ニンニクを摂取すべきだな」


 ニンニクはいい。インフルエンザにも勝てる。


 だからこそ、身の危険を感じた時に摂取するのがいいのだ。


 今日は仕事帰りに映画を観ようと思っていたのだ。その前に、ニンニク豊富な食事を採ろう。


 かくして、仕事帰り。


 御堂筋線なんば駅に降り立った私は、まずは劇場でチケットを確保しておいてから、道具屋筋へ向かいつつもその手前。NGKそばの店にやってきた。


「龍が、いない……」


 店頭をかつてにぎわせた龍が、居なくなっているのが寂しいが、靴を脱いで上がる畳敷きのテーブル席は変わらない。


 店頭の食券機には、ラーメンとチャーシューメンのみ。そこまで肉はいらないので、ここはノーマルのラーメンにしておこう。


 厨房に食券を出すと、


「4番でお待ちください」


 とプラスチックのプレートを渡される。


 後は待つばかり……ではない。


 荷物を置いて席を確保したところで、セルフの水を確保。


 続いて、給水器の横にある、大きな保温ジャーへ向かう。

 備え付けの発泡スチロールの茶碗に、米を確保するのだ。

 結構大雑把に入った米は部分的におこげがあったりして、それが趣深い。


 また、厨房前には目的の刻みニンニクに、白菜キムチ、ニラキムチ。

 もう一つ茶碗を取ってニンニクと白菜とニラのキムチを思うさまに盛り。


 席へ戻る。


 後は待つばかりで『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動したのだが、そこで、順番がやってきた。


 麺がのびてはいけない。


 すぐに終了して、厨房から麺を受け取ってくる。


 テーブルに置いて、畳に上がりあぐらをかく。こうやって喰えるのが、この店舗のいいところだ。


 丼には、薄褐色の白湯スープに、刻みネギとチャーシュー。中細麺はうっすらとスープの中に見え隠れ。ごくごくオーソドックスなスタイル。


 そこに、ご飯とキムチニンニク盛り合わせを合わせた、ちょっと贅沢な食卓が出来上がった。


「いただきます」


 一口、スープを飲めば。


「いつものだ」


 豚骨鶏ガラスープは、関西向けのやや甘みのある味わい。特に目立たず、馴染みの味だ。


 レンゲにキムチを少し入れて啜ると、しっかりした辛味も加わっていい。


 それらの味で、ご飯をモリモリ食う。旨い。キムチを合わせてもいい。


 中細麺は、本当、どこまでもオーソドックスで派手さはないが飽きない味わい。


 麺をおかずに食うご飯も一興だ。


「ん? もうないか」


 ご飯が尽きた。が。


「おかわりだ!」


 食い放題だ。もう一杯ぐらい大丈夫だ。


 最初と同じぐらいの量を確保し、再び麺をおかずに喰う。


 途中、チャーシューを囓れば、タレで甘みのあるそれだけで摘まみにしたいタイプの味。ご飯にも合う。


 そうして、半分ほど麺が減れば、本番だ。


「いっけぇ!」


 チビチビ食べていたキムチと刻みニンニクを、ドバッと麺に放り込む。


 赤く染まるスープ。


 啜れば。


「辛い……だが、旨い」


 ニンニクのパンチに唐辛子の辛味。それでも、元の甘みのある豚骨鶏ガラスープの味わいは感じられる。


 変化を楽しんでいれば、


「おや? また、米が尽きたか」


 いや。


「麺も、ない、か」


 元々、量もオーソドックスで大盛というわけでは無い。


 勢いよく喰ったので、尽きてもおかしくない。


 だが、だ。


「スープは、あるな」


 ならばと、ご飯を再びおかわりし。


「えいやっ!」


 スープに投入する。


 少々行儀が悪いが、あれだ、替え玉ならぬ替え飯というやつだ。


 軽く混ぜて即席雑炊風にして。


 レンゲで掬って喰えば。


「ああ、生きている……」


 全てが凝縮された効いたスープで食す米は、健康的な味で、生を実感させてくれる。


 ニンニクもしっかり効いていて、これならインフルなんて怖くない。


 レンゲを動かしてかっ込む。貪る。


 こういうのでいいんだよ、こういうので。


 気がつけば、スープも含めて全てを胃の腑に収めていた。


 身体の奥から温まる食事であった。


 最後に水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、ギャンブル映画を観に行くか」


 膨らんだ腹を抱え、劇場へと。






 

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