第245話 大阪市北区角田町のたまゆらーめん+半チャーハンセット
「おや、駅前ビルごと閉まってるか……」
正月二日。
昨年より再開した趣味の活動で茨木市へ向かう道中。
昼を駅前ビルで見繕おうと西梅田に降り立った私は、無情に降りたシャッターを前にしていた。
「正月だもんな……」
閉まっていても仕方あるまい。事前に調べていなかった己の責任だ。
ならば、JRの方面に行ってみるか。あっちなら、立地的に店を開けていてもおかしくない。
そうして、西梅田の駅前ビルとは逆側の出口へ向かい、その先の通路を抜けてJR桜橋口に出る手前。
右手に折れると目星をつけていた店があった。
「よしよし、開いているぞ」
ならば、入るまでだ。
席もそこまで埋まっておらず、入ってすぐのカウンターに案内された。
お茶を飲んで一息吐いて、メニューを眺める。
「色々種類があるな」
オーソドックスにいくかと思ったが、少しあっさり目の塩もいいかもしれない。
そうして、
「たまゆらーめんと半チャーハンのセットを」
と注文を通す。
後は待つばかりと、まずは店の少し奥にある薬味のサービスを確保だ。
小皿にキムチとメンマを盛りつけて、席へと戻る。
それから、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する……が、時間が読めないので軽くおでかけを仕込むに留めたところで、注文の品がやってきた。
「この黒いのが、たまゆ、か」
白いスープに黒い油が浮いている。これが、ニンニクやらの味が付いた『たまゆ』だったはずだ。具材はチャーシューとねぎ。メンマは入れ放題。
チャーハンは、少し色が濃いめで、刻んだ紅生姜とチャーシューとねぎと玉子。オーソドックスなスタイル。
「いただきます」
まずは、スープを一口。
「うん、あっさり目でいいね」
年末年始バタバタしていて疲れた体に染みる。ほどよい、たまゆの刺激が優しいだけじゃない味わいにしてくれるのも心地いい。
やや太めの麺を啜れば、気取らない旨さがある。
次にチャーシューを、添えられた紅生姜と共に頂く。
どぎつくない、ほどよく安心できるチャーハンの味わいだった。麺の邪魔をしないのがいい。
付け合わせにキムチとメンマを適宜囓りながら、しばし喰い進めるが。
「もうちょっと、刺激があっても、いいかな」
人は、慣れる。刺激が優しいと感じたとき、更なる刺激を求めてしまうのだ。
「これと、これ、入れるか」
一つは、ミルで挽くタイプの黒胡椒。ぐりぐりするといい香りがする。
そこにガーリックパウダーもプラス。
「うんうん、優しいだけじゃない。大事大事」
優しくし過ぎてつけあがらせては仕方ない。厳しさも大事だ。
ここでチャーシューを囓れば、甘辛目の味。とても食べやすい。
なんだか、するすると食べられる。
気のせいか、ここのところパワーの居る麺を食べてばかりだった気がするので、こういうのもいい、と思わせる味わいだな。
気がつけば、麺も具材もなく。
キムチとメンマも食べ尽くし。
チャーハンもない。
残っているのは、スープのみ。
胡椒とガーリックパウダーで少々強化されているが。
このスープなら、いっていいのでは?
いや、いくしかない。
レンゲを動かしてスープを飲む。
こうして改めて味わえば、ガーリックが利いていてよい。これでインフルも怖くない。
何度も啜り。
最後には、丼を持ち上げて飲み干す。
お茶を一杯飲んで一息。
「ごちそうさん」
会計を済ませて、店を後にする。
「さて、茨木を目指すか」
JR大阪駅桜橋口へと向かう。
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