第241話 大阪市浪速区難波中の醤油ラーメン

「眠い、な……」


 どうにか仕事をこなしたのだが、なんとも眠い。昨日は月曜から忘年会で飲んでカラオケして帰宅したのが午前様だったが、何か関係あるのだろうか?


 そんな眠い体を引きずりながらも、色々な日程調整上、映画を観に行くタイミングが今日しかないのである。


 予約は済ませているので、行かないわけにはいかない。


 なら。


「しっかり喰って、意識を覚醒させるか」


 体調不良は喰って直す。医食同源というやつだ。多分。


 かくして私は、難波の地に降り立ち、南海側から出てオタロードを足早に目指す。


「間に合った……」


 時間は17時54分。店内に入り、基本のラーメンの食券を確保して席に着き。


「麺大盛無料ですがどうしますか?」


 そう、18時までは麺大盛無料なのだ。


「大盛で。あと、麺かため、味濃いめ、脂少なめ」


 好みを伝えれば注文完了。


 だが、まだだ。


「入口のライスバーでご飯はおかわり自由となっています」


 という訳で、18時までのライスバーで米を確保する。


「これぐらい……いや、もう少し……」


 と、結局深めの茶碗一杯に米を詰め込んで席へ戻ればひと段落。


 急いだ甲斐があった。これで、回復を計れるだろう。


 後は待つばかりとなり、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。が。


「麺て中華……もとい、メンテ中か」


 という訳で、昨日読み終わらなかったジャンプの続きを読む。チャーミーパイセン、ぱねぇ。


 とか喰って治す系の魔法使いの活躍をみていたら麺が到着した。


「久々だな」


 褐色のスープに二枚のチャーシュー、煮玉子にうずら玉子にほうれん草。そして、丼の周囲を囲む海苔。


 家系というやつである。


「いただきます」


 まずはスープを一口。クリーミーでガッツリという感じの味が心地良い。


 そこを、ご飯で追い駆けるとなんとも幸せな気持ちになれる。


 更に、続けて固めにした中太麺を啜って米と共に啜れば、麻薬並の多幸感が襲ってくる。

 

 そういえば、関西以外では炭水化物×炭水化物が否定されがちだが、ラーメンライスは認められている気がする。


 この幸福の前には栄養素の重複など些末な問題ということだろう。


 エンジンが掛かる。


 米を、麺を、卵を……囓ればトロトロの黄身。それをスープとまぜる。続けてスープを吸わせた海苔でご飯を巻いて食べ、卓上の刻みニンニクをレンゲに溜めたスープに溶いて味を極力変えずに滋養をアップさせる。


 更に、胡麻を振り掛けて風味と栄養素をプラスするのもいとおかし。


 ゲーム的な表現なら、どんどんゲージが回復している実感がある。


 麺を、米を。チャーシューで肉を。


 ほうれん草で野菜を。


 栄養バランスもバッチリだ。※個人の感想です


 米を頬張りスープを啜り麺で追い駆けるのが、楽しくて仕方ない。


 だが、楽しい時は過ぎるのが早い。


「まくり券どうぞ」


 気がつけば、通り掛かった店員からまくり券を渡されていた。


「馬鹿な!」


 目の前にあったのは、空の茶碗と丼。


 そう。


 貪るように無心で一気に食い終わってしまったのだ。


 だが、そこでハタと気付く。


「眠くないぞ」


 栄養補給ですっかり元気になっていたのだ。医食同源とはその通りだな。


 最後に、水を一杯飲んで一息吐き。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、劇場へ向かうか」


 マルイ方面へと、足を向ける。 

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