第239話 大阪市中央区日本橋のカレーつけ麺(中ヤサイマシマシニンニクマシマシアブラカラメ)

「なんだか、猛烈につけ麺が食いたい」


 そんな衝動に駆られた私は、仕事帰りに難波の地に降り立っていた。


 南側から出て、NAMBAなんなんを通って途中の階段を上り、商店街を道具屋筋方面に入り、しかし、道具屋筋手前の筋を左に折れて最初の角を右に。


 そのまま直進して、コンビニ前を左折して真っ直ぐ。T字路を左に折れてすぐに目的の店はあった。


 開店直前だったのだが。


「少し並んでるな」


 とはいえ、店内に入れないほどの人数ではない。


 予定通りにするため、列に入り、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 とりあえずおでかけを仕込んだところで店内へと。


「さて、どれだ?」


 食券機が刷新されて、構成が変わっている。


 しばらく探して。


「あ、カレーはラーメンとつけ麺を選ぶのか」


 ということで、カレーの食券を確保。


 魚介豚骨よりはカレーつけ麺な気分だったのだ。


 席に着いてほどなく注文の時間だ。


「麺は中で、ヤサイマシマシニンニクマシマシ」


 ここで、なぜか妙な勢いがついて。


「アブラカラメで」


 と思わず普段云わないアブラを詠唱してしまった。


 まぁ、いい。


 ゴ魔乙の出撃をこなしてアクティブポイントを稼ぎ、APが尽きたので鉄道公安隊で研修中のはずがテロリストと戦いまくっている高校生の物語を読んでいると、注文の品がやってきた。


「おおう、中々のボリュームだな」


 褐色のつけ汁と、山盛りの野菜に脂がたっぷりかかり、麓に刻みニンニクが大量に鎮座する丼。


 麺は全く見えない。


 というか、アブラ、多い……いや、自分で言ったのだが。


「いただきます」


 まずは、慎重に野菜を崩す。


 アブラに塗れた野菜をカレースープに浸して喰えば。


「幾らでも喰えるな……」


 スパイシーなカレーの味に、アブラの旨み。食が進まないわけがない。


 そもそも、ここのカレーは、とても好みの味なのだ。


 そのまま、野菜をモリモリ食べる。


 とても、健康に気を使った食事だ。アブラ塗れだが。


 そうして、徐々にスープにニンニクを放り込んでパンチを効かせたところで。


「いよいよ、麺か」


 野菜に埋まって普通の麺なら伸び切っているところだ。見たところ、野菜の中で蒸されたように麺肌はしっとりしているが。


「うんうん、まだまだいけるな」


 しっかり食べ応えのある食感が残っている。


 ズルズルモリモリと麺と野菜を食う。


 そこで、肉を喰らえば、


「シーチキン的旨味……」


 出汁が出きってパサパサになったところに、改めて出汁が戻ってきたような味わい。ぎゅっと豚の旨みが詰まっている。


 そこに、胡椒と唐辛子を振り掛けるのもまたよし。


 正直、丼の中がしっちゃかめっちゃかになっているが、ジャンクフードらしくていいではないか。


 箸で掴んだものを、汁につけ、喰う。


 ただ、それだけの簡単な食事。


 旨い。


 だが。


「思い、な……」


 あと四分の一ほどになったところで、ずしんと胃に響く。


 いつもなら大丈夫な量なのだが。


「アブラ、だな」


 やはり、アブラは重い。何せ、野菜が物理的にもずっしりしていたのだ。


 胃の負担も大きい。


 だが、お残し厳禁だ。


 旨いのは、旨い。


 大丈夫だ、問題ない。


 水を飲んで一息入れ。


「行くか」


 麺を野菜を豚を、汁につけて減らし。


 最後は、丼の中身を汁に入れて、小ラーメンぐらいの量はありそうな代物にして。


 唐辛子と胡椒でアクセントを加え。


 貪る。


 大丈夫。


 箸は止まらない。止まれない。


 やがて。


「ふぅ……」


 スープの中に残骸が残るだけの状態に。


 なんだかんだで完食、だ。


「終わった」


 最後に、再び水を一杯飲んで落ち着いて。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さっさと、帰るか……」


 思いの外重い腹を抱え、家路へと。




 

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