第233話 大阪市中央区難波の豚そば(麺・野菜・ニンニク大盛り)

「どうにも、体調がよろしくないな……」


 季節の変わり目で気温が乱高下しているのもあるだろう。どうにか仕事をこなしたが、妙に怠く、頭がボンヤリする。


 さっさと帰ろうかと思いつつも、『ターミネーター:ニュー・フェイト』のチケットを確保しているので観ない訳にもいかない。


 ならば。


「しっかり喰って回復させるか」


 かくして、難波駅で劇場前の家電量販店のビルの最上階へと。


 ずっと気になっていたラーメンがあったのだ。


 だが。


「豚そば……だと」


 入ってすぐに、気になるメニューがあった。


 確かに、今は辛いものより、ニンニクだ。


 大盛もできるようなので、いいかもしれない。


「そうだな。健康に留意して、今日はこれにするか」


 まだ夕食時には少し早いからか、店は空いている。


 サクッと食券を買って店内へと。


「全部大盛りで」


 今日は、これでいいだろう。


 注文を通せば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は、悪魔のターン! ゆえに、リリーの想いを集めるのである。


 出撃をこなしていると、時が経つのは早い。


 注文の品が、やってきた。


「まぁ、こんなものか」


 丼の表面を覆う程度の野菜は、ほどほどの量。とはいえ、刻みニンニクはたっぷりと。サラに、トンテキの定食で一食分は十分にありそうな厚切りの豚がゴロゴロと乗っているのは嬉しい。


「いただきます」


 導線に不安がないので、いきなり麺を引っ張り出せば、太くて堅い定番の趣。


 お味の方は。


「結構マイルド、か」


 鶏豚ということで、獣臭さは控えめ。なんというか、上品とも言える味だ。あくまで、こういう系統では、という話だが。


 次に豚を食せば。


「豚、だな」


 そのままだと、本当に豚だ。塩気もなくもう少し味が付いていてもいいぐらいだが、何、スープに沈めてしまえばいいだろう。


 ニンニクを混ぜこみつつ、野菜と豚を沈めて期せず天地を返す。


 そして、再び麺を啜れば。


「うんうん、これぐらいニンニク効いて、ようやくそれっぽくなってきたな」


 どこまでもマイルドだが、ニンニクは正直だ。


 モリモリと食べる。


 と。


「おや、トッピング、あるのか」


 カウンターの隅に、色々と薬味があるのが見えた。


「刻みタマネギ、よさげだな」


 席を立ち、取り皿に軽く盛りつけて持ってくる。


 スープに放り込んで混ぜ込み、食せば。


「なるほど、食感がいいな」


 シャキッとした歯応えがいい。玉葱は、少々時間を経ているのか辛みが抜けて居るのを通り越して少し貧弱な味わいだが、甘いとも言える。


 そこは、好みの問題だろう。


 だが、ここで。


「少し、薄いな……」


 天地を返して野菜から水が出たことで、大分味が薄まってしまっている。


 再び薬味のコーナーへ向かい。


 胡椒と一味を確保し。


 バッサバッサと振り掛ける。


「よし、味が出てきた」


 スパイスで引き出した味わいで、残りを一気に頂いていく。


「思ったより、ずっと軽かったな」


 あっという間に、スープだけとなった丼を眺める。


 メインでもないし、これぐらいの方が却って入門にはいいかもしれない。初心者対応、大事。


 それに、ニンニクを確保して、体調はよくなった気がする。あれだ、プラシーボ効果だ。


 というところで、最後に水を一杯飲み干し。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、未来から来た暗殺者の物語、観るか」


 劇場へと、足を向ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る