第224話 大阪市中央区難波千日前の限定2
三連休最終日。
最初の二日はあれこれ予定があったが、今日は一日フリーだ。やることは色々とあるが、今日ぐらいは好きなことを好きなようにやるのもいいだろう。
なら。
「映画を観るか」
という訳で、朝一番で難波に出て映画を鑑賞してきた。
『アド・アストラ』。宇宙開拓が進んだ時代、知的生命体を求めて外宇宙への旅に出て消息を絶った伝説の宇宙飛行士クリフォード・マクブライド。その息子にして同じ宇宙探査の道を歩んできたロイ・クリフォードが、幾つもの思惑に翻弄されつつ父を求めて宇宙へ旅立つ物語……
淡々としたSFという趣でエンタメといようりは文芸的なノリの御華詩だった。
鑑賞した後、タイトルからの連想で、
「ad astra per aspera ……」
ここまでなら慣用句なのでセーフな歌詞の星喰いに荒らされた世界を舞台としたロールプレイ重視でブーケが飛び交うTRPGのテーマソングを口ずさんだりしながら、気づく。
「腹が、減ったな……」
そういえば、朝早くそれほど空腹でもなかったので野菜ジュースを飲んだだけだ。
なら、ガッツリいくのもいいだろう。ちょうど、気になっていた限定があったのでそこへ向かうことにする。
時間は11時前。
休日の昼とはいえ、開店に合わせればそこまで並ばずに入れるだろう。
劇場を出てなんばパークスを抜け、なんさん通りを東に歩いて道具屋筋の次の道で北へ折れると、目当ての店があった。
「ありゃ? そこそこ並んでいるか」
それでも、一桁。まぁ、これぐらいなら大丈夫だろう。
という訳で列の最後尾に入り『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。
現在はタワーイベント開催中で中々楽しい。科学者リリーは予算内で手には入らなかったものの、研究員ロシエが手に入るのは嬉しい。
スコアタ要素の入ったイベントは、やりがいあって楽しいなぁ、と数度出撃していると、開店時間となった。
店内に入り、食券機では迷わず限定の食券を確保する。
奥から順番に入口側のカウンターの端の方に着いて食券を出す。
「ニンニク入れますか?」
「入れてください」
うっかりはなく、ニンニク入りを発注すれば後は待つばかり。
とはいえ、入る前にAPを使い切ったのでゴ魔乙はおでかけを仕込んだりで終わり、まだ読めていなかったジャンプを読んで過ごすことしばし。
二番目のロットで注文の品が完成し、やってきた。
「なんともいえないごちゃごちゃ感だな」
山積みの野菜の上には鰹節がドバッと載せられ、更に上にはカイワレ大根が添えられて緑が映える。
野菜の山の麓には、半分の味玉と大きな豚とニンニク。
とはいえ、ごちゃごちゃでいいのだ。
「よし、まぜよう」
これは、まぜそばなのだから。
れんげで支えつつ箸を奥にツッコンで麺を引っ張り出し、まぜ……の前に空腹に負けて食いつけば。
「うん? これが、素の味か」
麺の味だけが感じられたのだ。どうも、底のタレに使っていない部分の麺だったようだ。まぁ、普段素の味は中々味わえないので、いい経験になったと考えよう。
仕切り直して、麺を引っ張り出しつつ鰹節と野菜を天地返して更に何度も返してまぜ合わせる。豚と玉子も気にせずゴロゴロするに任せる。
いい感じに混ざったところで改めて麺を喰らう。
「ジャンクだ……」
この店のレギュラーである醤油・塩・ポン酢の全てのタレをブレンドした特製のタレによるまぜそば。ドリンクバーでごちゃ混ぜにしたらなんか美味しいのができてしまった、そんなノリのまぜそばなのだ。これをジャンクと言わずなんと言おうか?
ニンニクもいい感じに混ざってパンチもあり、また、鰹節の風味が和のテイストを無理矢理引き込んで、そこに豚を囓るとやっぱり豚の存在感がバッチリ。
豚が立ったところでダマになった鰹節をほぐして豚や玉子と合わせて鰹を上位に持っていくのもまた旨い。
混沌とした味わいが、楽しい。
騒いでいた腹の虫も、夢中で味わっている。
スープが零れる心配をしないで言い分、がっつけるのがまぜそばのいいところだ。
つまり。
「もう、終わりか……」
混沌としたタレが僅かに丼に残るばかり。
一口、タレを啜れば、なんというか、「体に悪いな」つまり旨い。
だが、全部は辞めておこう。
最後に、水を一杯飲んで口内をリフレッシュして気持ちを切り替え。
「ごちそうさん」
店を後にした。
「さて、腹ごなしがてら少し買い物をしていくか」
再びなんさん通りにでるべく、南へ。
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