第207話 大阪府大東市赤井のラーメン小チーズヤサイマシマシニンニクマシマシカラメ
「昨日は楽しかったな……」
仕事後に所用で枚方へ赴いた帰り道、最近再開した趣味の念願が叶った日曜の出来事を反芻してしまう。
TRPG~テーブルトークロールプレイングゲーム。
学生時代に夢中になり、その後も、何かと身近にありつつ何度も再開を願うも上手くいかなかった趣味。
それを、今年に入って一念発起して再開したのである。色々とファンブルもあったものの、それでも自分がどれだけTRPGが好きだったか、否、好きであり続けていたのかを再確認してしまっては進み続けるしかない。
そして、プレイヤーとしての参加をしばし続けていると、どうしてもGM~ゲームマスター=ゲームの進行役をしたくなるのが人情。
思い切って4月から準備していた6月のGM予定はファンブルで流れたものの、そこで萎えては仕方がない。
という訳で、昨日の京都のイベントでGMをしてきたのである。システムは『青春バンドTRPG ストラトシャウト』。どうせなら、かつて遊んでいたものより、再開した年に発売したモノがいいと、今年の頭に発売されたシステムである。
奇しくも、かつてのTRPG仲間はバンド活動している人間が多かったので、これも何かの導きかもしれない、とルールブックを読んで半年弱。
ようやく念願叶ったのである。プレイヤーにも恵まれて幸せな一時を過ごすことができて……などと考えていて、これは別のところに書くべきものじゃないか? という気がしてきたので、別のことを考えよう。
どうせなら、思考はおもしろい方へ向けるべきだ。
枚方から京橋方面へ向かう片町線の中で、そう思った私は、住道で途中下車していた。
「久しぶりだな」
中々くる機会のない方面だが、ここは何度かきている。
住道の駅を出て北側に出て、川を渡って西へ進み、突き当たりを北へ。そうすると、一段低くなったショッピングモールの外側に、目的の店はあった。
「そこそこ並んでいるな」
だが、これぐらいならなんとかなるか? そう思って、まずは食券を購入する。
「ラーメンは小でいいが……チーズ、いってみるのもいいか」
豚を増すほどではないが、腹は減っている。腹の虫の導きに従おうではないか。
そうして、列に入り、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動するのだが……
「201位、だと……」
昨日までのイベントのアクティブポイントランキング、200位以内ならロウエルを2枚確保して、限界突破最大になれたのに……油断した。
でも、こういうファンブルのあとは、スペシャルが出るかもしれない。
そう気を取り直し、超人高校生が活躍するラノベを読んでしばし。
店内へと案内され、ようやく順番が回ってきた。
厨房の二辺をL字に囲むカウンターの端の方に案内され、セルフの箸とレンゲと水とおしぼりを確保して着席。食券を出す。
といっても、その前に店員がチェックして既に麺はゆではじめられている。なんとなく調理の様子を見ていると、ほどなく麺ができあがってきた。
「ニンニク入れますか?」
「ヤサイマシマシニンニクマシマシカラメで」
反射的にそう答えてしまったが……まぁ、大丈夫だろう。
そうして、野菜が積まれて脂とカラメを載せられたところまではいいが。
「ん? あれ?」
店員が冷蔵庫から刻みニンニクを取り出し、なでつけるように野菜の山肌に。
そして、注文の品が目の前にやってきたのだが……
「うわぁ、なんだか大変なことになっちゃったぞ」
山と積まれた野菜は、麺が少なめなので丼に沈んで高さは減り、脂と醤油で黒っぽく染まっている。その麓には大ぶりな肉塊。その隣には、赤身を帯びたスライスチーズ。
そして、麓の残りの麺を雪のごとく覆う白。それは、
「ニンニク、ヤバいな……」
ここでもファンブルだ。前はこんなことはなかったと記憶しているが、しばらくこないうちにニンニク量が増えたのだろう。
大丈夫、問題ない。
そう言い聞かせて、これ、死亡フラグじゃなかったっけ? と思うが気にしない。脂肪フラグなのは間違いないだろうが。
前置きが長くなったが、頂こう。
「ああ、ガッツリくるなぁ」
一口、スープに浸って脂も纏った野菜を食えば、カラメの醤油と豚と化学調味料の旨味の暴力が口内に広がっていく。
そうそう、こういうのでいいんだよ。
ガツガツと、野菜を食う。脂と塩分に塗れていても、野菜だからヘルシーに違いない。
また、ニンニクを混ぜすぎないように注意も怠らない。流石にこれを直接行くとヤバイ。
野菜をある程度食ったところで、満を持してチーズで野菜を包み込むようにして食べてみる。
「おお、こってり」
この上にこってりというのもおかしな話だが、チーズのどっしりした食感と旨味とがこってり感を演出していた。
いい。脂肪フラグ回収だ。
頃合いを見て、いよいよ麺だ。
ニンニクをスープの底に沈め、麺を引っ張り出す。
大量の黒っぽく染まった麺が露わになり、そのまま胃の腑へと収まっていく。
「喰ってるなぁ」
存在感のある硬い太麺は、食の幸せを存分に味わわせてくれる。
もりもりと、麺野菜豚を喰らう。ときおり溶けたチーズとニンニクがアクセントになってくれるのが楽しい。
難しいことを考える必要はないんだ。
変化が欲しいなら、思い切って備え付けの一味をドバッと掛けて唐辛子の旨味もプラス。
スープに沈んだニンニクを混ぜすぎないようにしながら、豚野菜麺を口へと放り込んでいく。
食の幸せに浸る。
これが、ファンブルの果てのスペシャルだ。
気がつけば、
「終わり、か」
固形物はほぼなくなり、スープにはニンニクと脂の残滓が残るのみ。
流石にヤバイのでスープは追い駆けず。
最後に水を一杯飲んで一息吐き。
テーブルをおしぼりで拭いて清め。
「ごちそうさん」
店を出て、おしぼりをカゴに放り込む。
「さて、帰るか」
くちくなった腹を抱え、駅へと向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます