第205話 大阪市東成区深江南の宮崎辛麺(こんにゃく麺、5辛、チャーハンセット)+生ビール
「眠い……」
ここ数日、急遽入った作業をこなすために睡眠時間が少々不足していた。だが、どうにか今晩で全てケリが付く目処は立っている。
だが、仕事をこなし、帰路についたところで一気に眠気が噴出してきたのだ。
「こういうときは、スタミナのつくもの……更に、刺激もあれば、いいな……」
ぼんやりした頭に、ふと浮かぶものがあった。
「久々に行くか」
かくして私は千日前線新深江駅へと降り立ったのだ。
北東の出口を出て、千日前通りから一つ奥まった道を東へ。
大通りにぶつかったところで左折すれば、目的の店がある。
木造の趣あるドアを潜れば、開店直後の店内はまだ客が入っていない。
入り口直近のカウンター席へ着けば、店員が水を持って来てくれる。
「決まった言って下さい」
そろそろ暑さがキツくなり始めた日に、冷たい水はありがたい。
喉を潤しながらメニューを眺めるが。
「やっぱり、これだな……すいませ~ん!」
店員に声を掛け。
レギュラー(実質大盛)だけにするか、レディースサイズとサイドのセットでいくか悩んだが、やはりここはセットだ。
「チャーハンセット。5辛、こんにゃく麺で」
と注文を済ませる。
後は待つばかり。
『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動するが。
「あ、更新か」
どうしようか思いつつストアで更新。ああ、リリーの姿が遠い……
という訳で、プレイする時間は無さそうなので、超人高校生が異世界転移する御華詩の続きを読む。
物語は核心に迫っているが、シビアな司のキャラがいいですねぇ。
などと思っていると、まずはチャーハンがやってきた。
どうしても一品ずつの調理なので別々に来てしまうが、冷めても勿体ない。
オーソドックスな玉子とねぎと刻みチャーシューのチャーハン。中華鍋でパラッと仕上がりつつ、味もオーソドックス。
「こういうのでいいんだよ、こういうので」
と言いたくなる、安心の味わいだ。
しかし、先に食べ終わってもいけない。
少しずつ食べて時間を引き延ばしていると、ようやく麺がやってきた。
その頃には、新たな欲求が生まれている。
麺を受け取りつつ、
「生ビールを」
追加注文だ。
麺を置いて、チャーハンと並べ、やってきた生ビールを受け取り。
改めて。
「いただきます」
食事に取り掛かる。
さっきのチャーハンは味見だ。
宮崎辛麺。赤黒いスープに溶き卵とニラとニンニク。それが基本だ。
まずはなんといってもスープ。
「うんうん、この味」
久々の宮崎辛麺の味わいに腹の虫も喜ぶ。
醤油と出汁の味わい、唐辛子の旨味。そして、その味わいを纏った、
「食感がいいだよなぁ」
こんにゃく麺がまたいい。
こんにゃくといっても、芋ではなくそば粉をこんにゃく状にしたものだ。歯応えは完全にこんにゃく。看板に偽りはない。
この組み合わせが至高だと思うから、うどんや中華麺も選べるのに頑なにこんにゃく麺なんだ。
「今度、レディース頼んで替え玉で中華麺とかうどん行くのもありか」
なんてことを考えながら、スープを飲めば、ゴロゴロ入ったニンニクとニラの味わいがまたいい。玉子のまろやかさと唐辛子の刺激の組み合わせもよし。
そこに掻き込みチャーハンも最高だ。
更には、ビールもある。
金曜の夜のフライデーナイトフィーバーだ。
とても、幸せな食の楽しみを味わえる。
しっかりした食感の麺を頬張り、ゴロゴロしたニンニクとニラの絡んだ玉子を口にし、チャーハンを掻き込み、ビールで喉を潤す。
段々と熱を帯びてくるのは、唐辛子の効果か。
「幸せだなぁ……」
これも一つの『しあわせのかたち』。おまえ、コイツ、べるの。ミジンコピンピン現象。年がバレる。
宮崎辛麺は、これぞ! っていう味がいい。比較的行きやすい場所に本場の店が支店を出してくれているのも幸運だろう。
気がつけば、もう、チャーハンはない。
生ビールもない。
麺もない。
具が残ったスープのみ。
「ここで、この穴あきレンゲが活きるのだ」
この店では、普通のレンゲとは別に金属製の穴あきレンゲが添えられるダブルレンゲシステム(仮称)が採用されている。
スープが辛いので具材だけを掬うための救済策だろうが、具材を追い駆けるにはとても便利な代物だ。
ニンニク、ニラ、玉子、唐辛子の粉末。
レンゲに掬い上げてはくらい。
最後は、丼を傾けてゴクリ、といけば、体温の上昇を感じる。
心地良い、熱。
最後に、水を一杯飲んで一息。
レジで会計を済ませ、
「ごちそうさん」
店を後にする。
「さて、買い物して帰るか」
駅の近くにあるスーパーを目指す。
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