第198話 東大阪市足代新町のこってりラーメンライス定食(大盛+キムチ追加、ニンニク多め)+生ビール

 名探偵。

 とても、惹かれる響きである。


 シャーロック・ホームズ、エルキュール・ポワロ、エラリー・クイーン、ファイロ・ヴァンス、ブラウン神父、金田一耕助、江神二郎、御手洗潔、龍宮城之介、瀬川みゆき、匂宮理澄、さんま……咄嗟に思い出すだけでも枚挙に暇がない。


 そして、今回そこに加わるのが『ピカチュウ』である。


 そう、ポケモンだ。しかも実写だ。


 これは、観ないわけにはいくまい。


 かくして私は、仕事帰りに布施まで足を伸ばしていた。


「とはいえ、腹が、減ったな……」


 幸い、上映開始まで何か喰う程度の時間はある。


 さて、何を喰ったものか? と思ったところで。


「そういや、シネコンになる前から映画館とタイアップしてたところに、久々に行って見るか」


 布施駅の東側に出た高架下。


 何度も改装されているが、かなり古くからある京都発祥のラーメン屋である。


「さすがに空いてるな」


 時間的にまだ早いのもあって席は空いている。


 かつては食券だったのだが、見回しても食券機はなく店員に直接カウンター席へと案内された。


 とりあえず座席備え付けの水を一杯飲んで、メニューを眺める。


 今の腹具合なら……


「こってりラーメン大盛、ニンニク多めで。あとライスを」


 という感じで注文すると、少し安いラーメンライスがあるというのでそちらを進められる。更に、たった30円プラスでキムチも付くというのだから、


「キムチもお願いします」


 更には、


「あと、生ビールも。食事と同じタイミングで」


 たまには、ガッツリいくのもいいだろう。


 かくして後は待つばかり。


 徐に『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。今は、ピクニックの宝探しイベント中。最近は余り進められていなかったから進めたいところだが、時間が微妙なのでおでかけだけを仕掛けて終わり。


 代わりに週刊少年チャンピオンを読む。ああ、『もういっぽん!』は、本当心地良い青春だなぁ。


 などと楽しんでいるところに、注文の品がやってきた。


「さぁ、久々のこってりだ」


 濃い褐色にこってり具合が滲み出ているのがいい感じだ。更に、ニンニク多めにしておきつつ、足りなければ追加できるようにおろしニンニクも出してくれたサービスが嬉しい。


 キムチは小皿に盛ったおつまみ程度の量だが、30円なら十分すぎる量だろう。ごはんは、標準的な一膳分。


 そして、生ビールに心ときめく。


「いただきます」


 まずは、スープをレンゲで。


「おお、とてもこってりだ……」


 このチェーンはセントラルキッチンながら、スープのアレンジが許されているため、店によって濃さが違ったりする。ここのは、かなり濃いめでとてもイイ。


 中細ストレート麺にもしっかり絡んで旨い。


 こうして少し胃にものを入れたところで、グイッといく生ビールの旨さよ。


 ここで、キムチを一口。そこへごはんをかき込めば、幸せがやってくる。


「旨いなぁ」


 随分来ていないので以前の味は覚えていないが、他のチェーンに比べても旨い。


 こってりラーメンの本領発揮というか、ニンニク多めでガツンと腹に響く味わいをベースに、あっさり目で薄切りながらしっかり豚の旨みを感じさせる存在感のあるチャーシューを囓ったり、メンマを食んだり、麺を啜ったり。とても心地良い。


 箸休めには、キムチとごはん。一息入れる、生ビール。


 完璧だ。


 どこまで食の幸福に浸れるではないか。


 丼の中身が大分減ってきたところで、


「ニラキムチ、いってみるか」


 ニンニクは十分なので違った方面で風味を足す方向へと。備え付けの容器から、二つかみ程のニラキムチをスープへ投入する。


「うん、正解だ」


 ニラのピリッとした味わいが、元の味を壊さない程度にいいアクセントとなっている。


 ここまでくれば、ごはんも残り少ない。キムチはもうない。


 新たな味わいでごはんをかき込み。


 残った麺とチャーシューとメンマをガツガツと食い。


 生ビールをグイグイ飲んでしまえば。


 残るは、スープのみだった。


「ここは戒めを気にしている場合では無いな」


 こってり呑まずに終われない。


 ただ、丼を持ち上げて呑むには少々粘度が高い。


 ここはレンゲで頑張るのが吉。


 ずるずると、ゲル状の旨味の塊を喉に流し込む心地よさを存分に味わう。


 最後は、丼の底をこそぐようにしておいかけ。


 完全にスープを飲み干し。


 最後に、水を一杯飲んで一息。


 一杯の水ぐらいでは流しきれない、腹に響くこってりの余韻を存分に楽しみ。


「ごちそうさま」


 会計を済ませて店を後にする。


「さて、映画館に行くか」


 すぐそばの劇場へと、足を向ける。

 

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