第194話 大阪市浪速区難波中の中ラーメン(ヤサイマシマシニンニクマシマシカラメマシマシアブラマシ)

「初期不良じゃなかったのか……」


 自宅のPCのディスクの調子が悪く交換用のディスクを購入したのが昨日のこと。さっさとデータを移そうと思ったのに、いざ接続するも異音がしてフォーマットエラー。


 哀しみに打ちひしがれつつ、今日の仕事を乗り切って店に持っていった結果、全くの正常動作をしたというオチだ。


「多分、ケーブルかマザー側だよなぁ……」


 不安は残るが、余り気にするのも精神衛生上宜しくない。

 病は気から。ただでさえ、季節の変わり目に振り回されて風邪気味なのだ。


 そうだな、こういうときはガッツリ喰って心身を癒やすに限る。


「そういや、新しい店ができてたな」


 オタロードを北上し、ソフマップなんば店の手前。左手にその店はあった。


「新しいとはいえ、同じ系列の新店、らしいな」


 かつて、博多ラーメンとマシマシ系のメニューを出していた店が後者に注力したということのようだ。


 そこそこ客が入っていたが、まだ何とか入れそうだ。


 扉を潜り、食券機の前へと。


「醤油と味噌があるのか……あと、汁なし変更、か」


 目移りするが、ここは初見なので基本の醤油でいこう。

 量は、小が 150g 、中が 250g 、大が 350g のようなので、間を取って中。


 という訳で、中ラーメンの食券を確保。厨房を細長く囲むカウンター席の真ん中辺りの席へと着く。


 さっそく店員にトッピングを聞かれるので、


「ヤサイマシマシニンニクマシマシカラメマシマシ……」


 普段ならここまでなのだが、どうにも今日はもうちょっと頑張りたくなってしまった。


「……アブラマシで」


 普段はマさないアブラをマシである。


 後は待つばかりとなり、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在、四周年記念イベントで属性ごとに応援する趣旨になっている。

 勿論、推しは水属性。リリーのために、頑張らねばなるまい。


 おでかけを仕込み、何回か応援ステージに出撃してチケットを稼いでいると、注文の品がやってきた。


「なんだかよくまとまった感じだな」


 ヤサイの山はなだらかながらこんもりと盛られている。その頂上には褐色のアブラ。麓には渦巻き状の大きなチャーシューが二枚と大量の刻みニンニク。


 食欲をそそる見た目だ。


「いただきます」


 さっそく、アブラの掛かったヤサイへ。普段と違うところからだ。


「うむ、こってり」


 とはいえ、そこまで濃くはない。あくまで、ヤサイとしてはこってり感を感じられる程度。


 今後はスープをいただけば。


「比較的優しい味か」


 こういうのにしては、だが。ドギツイ醤油のカドもなく、獣臭も酷くなく。濃い目の豚骨醤油といった感じだ。


 これなら、バクバクいけそうだ。

 

 アブラを含んだヤサイをスープに浸せば、とてもいい塩梅。


 無心に食べ続ければ、やがて麺への道が開かれていた。


「スッキリした麺だな」


 そこまで太くなく、ストレート。だが、しっかり食べ応えはある食感。つけ麺などであるタイプの麺か。旨い。


 スープとの絡みもいい。


 そうして、頃合いを見てヤサイを沈めて麺を引っ張り上げて、炭水化物に浸る。


 が。


「辛い、な」


 大量のニンニクがスープに溶け出し、かなりの刺激となった。


 そういえば、前の店もそうだった。ここのニンニク、辛い。


 でもまぁ、マシマシにしたからには、これも楽しまねばなるまいて。


 ここで沈めておいた豚を喰う。豚自体は最低限の塩味で豚そのものの味。そこに、ジャンクになった豚骨醤油のスープを纏うと丁度いい。


 全体的に、見た目のまとまり同様に食べやすい部類の味わいだな。


 時には、ガッツンガッツンくる刺激に抗うほどの勢いもいいかもしれないが、ほどよく心身を癒やすにはこれぐらいでいいのかもしれない。


 とはいえ、


「もう少しぐらい、刺激が欲しいかもしれん」


 人の心とは、かくも複雑なのである。


 ならば、卓上の胡椒と一味の出番だ。


 まずは胡椒を振り掛ける。粗挽きのゴツゴツしたものではなく、もう少し目の細かい黒胡椒だった。


 そこに、一味も同じぐらいドバッといく。


 そうして、かき混ぜて喰えば。


「ほどよい」


 ニンニクの刺激が強いので、相対的なものかもしれないが、胡椒と一味の風味が加わっていい感じだ。ニンニク辛さは健在だが。


 しっかりした麺を食み、ヤサイをバクバクいき、豚へ齧り付く。


 食の本能に全てを委ねて、心身に染み渡らせる。


 心地いい。


 口の中に満ちたニンニク臭も気にならないぐらいに。


「もう、終わりか」


 固形物がほぼ消えたスープの中から、レンゲで麺やヤサイの切れ端を追い駆け、一緒に呑んだスープのニンニクの刺激に驚いたりして、余韻に浸り。


 最後に、水を一杯飲んでリフレッシュ。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「次は、味噌も試したいな」


 ローテーションにこの店も加えることにして、家路を辿る。

 

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