第191話 大阪市西区西本町の辛味つけ麺(ニンニク増し増し野菜増し増しカツオバカ増しカラメ増し増し)
「腹が、減った……」
仕事を終えた私は、激しい空腹に苛まれていた。
ならば、喰おう。
食欲に正直に、私は生きたい。
かくして、四つ橋線本町駅へと舞い降りる。
「久々に、あの店へ行こう」
気分は、つけ麺。なら、そこだ。
四つ橋線の南西出口から出て、更に西。
なにわ筋へ抜ける手前に、黄色い看板が目立つ目的の店はあった。
時間帯的に混み合うタイミングでもなく、すぐに入れそうだ。
「やっぱり、これだな」
食券機の前に立ち、『辛味つけ麺(並)』の食券を確保する。(大盛)が同値段だが、冒険はしないでおこう。
厨房から細長く伸びた凸型のカウンター入り口付近に着き、食券を出す。
「ニンニクどうしますか?」
「ニンニク増し増し野菜増し増しカツオバカ増しカラメ増し増しで」
サクッと詠唱を済ませれば後は待つばかり……、と思ったら。
「冷盛り温盛りどちらにしますか?」
ときたので、
「温盛りで」
と頼む。最近少し冷えるので、ここは温かい方がいいだろう。
今度こそ後は待つばかり。最近色々あって停滞気味の『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。ルチカの過去イベントも残り僅かと思いながら、溜まっていた景品の処理をしていると思いの外時間が掛かってしまった。
気がつくと、注文の品がやってきていた。
丼に山盛りの野菜。赤いタレ。鰹で覆われた麺。そして、麺に添えられたレンゲに山盛りの刻みニンニク。
食欲をそそる見た目だ。
「いただきます」
まずは、野菜をタレに浸して喰う。
「この味……いいなぁ」
魚介豚骨のありがちなつけ麺のスープとは一線を画す、甘みの後にしっかり辛い特徴的な味わいのスープ。別のつけ麺屋の辛黒味噌つけ麺亡き今、個性的なつけ麺として貴重な味わいだ。
そのまま、モリモリ野菜を喰って糖の吸収に気を使ったところで、いよいよ麺だ。
堅めで太い麺が、特徴的なスープを纏うととても食べた感が強い。
山盛りの鰹が絡んできて、出汁が深みを増すのもよし。
いい塩梅だ。
麺もモリモリ食べれてしまう。
だが、まだ満たされない。
そう、ニンニクだ。
「ここで、行くか」
レンゲの中からニンニクを半分ほど投入して野菜を喰う。
「うむ、ガツンとくる」
甘辛に、違う方向の辛味が加わり心地良い。
野菜モリモリ麺モリモリ食べれる。
そして、終盤に差し掛かれば、残った野菜をスープに全投入。
「これはこれでまろやか」
どうしても野菜の水分で味が薄まってしまうが、箸休め的に楽しめる。
それに、
「今度は、麺の残りだ」
今度は、麺の器に残ったニンニク半分と、底に溜まったカラメごと麺を全投入。
「うんうん、いいぞいいぞ、計算通り」
再びカエシの辛味とパンチが加わって、賑わってくる。
ズルズルと麺を啜り、残った野菜を掬って喰い。
一息、の前に。
「スープ割りを」
店員に注文する。
やはり、最後まで楽しまねばなるまい。
ほどなく現れたスープの容器には、出汁と刻みネギが加えられた新たなスープ。
「ふぅ、出汁感が増して飲みやすくなったが……辛味はしっかりあるな」
ネギのアクセントはいいが、いかんせん元の辛味(ニンニク含む)が結構効いている。
旨いが、刺激的でもある。
レンゲを口に運ぶ手は止まらないが、少々、胃の方が心配になってくる。
でも、
「あと、一口だけ……」
そう思って幾度も口に運び。
「いや、やっぱりこの辺りにしておこう」
レンゲを持つ手を止めたところで、あとレンゲに三杯くらいしかスープが残っていなかったのはご愛嬌。
最後に、水を一杯飲んで一息。
「ごちそうさん」
店を後にする。
「あ、これ、ちょっと胃キツイかも……」
刺激に煽られる感触を食道に感じながら、本町駅へと。
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