第189話 大阪市浪速区難波中のねぎらーめん(味噌)

「中々に楽しい映画だったな」


 休日の朝一番、難波で IMAX の贅沢な映画体験をしてきた。『スパイダーマン:スパイダーバース』。並行世界のスパイダーマンが集まって活躍するという中々豪勢なコンセプト。なんか、世界が違うようなのも混じりつつ、一つの映像として違和感無く溶け込んでいるのはアニメの醍醐味か。


 いい体験をして、劇場を出れば、抜けるような青空。


「そういえば、今日はストフェスか」


 日本橋ストリートフェスタ。


 ちょうど頃合い。少し覗いて行こうか。


「もう、この光景もお馴染みか」


 難波方面からオタロードへ向かう途上、コスプレをした人々が行き交っている。


 街の特性を取り入れたお祭り。サブカル系だけでなく、電子工作なんかもあったりする。海外客もそれなりに、盛り上がっているイベントであろう。


「まぁ、適当に歩こう」


 そうして、恵美須町方面まで抜けて一回り。


 適度な運動を済ませれば、


「腹が、減ったな……」


 どこかで喰っていこう。


 久々にあの店でまぜそばを、とせっかくなのでコスプレで華やかになったオタロードを歩いてみるが、


「ありゃ、今日は露天になってるのか」


 どうやら、ストフェスに合わせて営業形態が違うようだ。


「だとすると……」


 そのまま北へ向かい、ソフマップの手前。


「よし、ここにするか」


 家系ラーメンの店へと。


「今日は……ねぎにするか」


 食券を確保して、満席のため少し待つ。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動しておでかけを仕込んだりしている間に、順番が回ってきた。


 先に水が用意されたカウンターについて食券を出すと、いくつか確認がある。


「味噌で、麺は固め、味は濃いめ、脂は少なめで」


 とサクッと注文する。タレは醤油・塩・味噌が選べるシステムだが、今日は味噌な気分だった。


 まずは、この時間帯は食べ放題のごはんを入り口のジャーからよそってスタンバイ。続いて、ゴ魔乙の細々とした作業を済ませていれば、すぐに注文の品がやってきた。


「ああ、食欲をそそる」


 茶褐色のスープの上に、基本のチャーシュー、うずら玉子、海苔に加え、ピリ辛タレを纏った細切りの白髪ねぎが山盛り載っているのだ。


「いただきます」


 早速ねぎと麺をない交ぜにして箸で口内に運べば、こってり豚骨味噌味に色々ピリリとするねぎの旨味が加わり、そうなれば、追い駆けるようにごはんを食う。


「ラーメンは、ごはんのおかずとして最高だな」


 とても、ごはんによく合うラーメンである。


 深く考えず、モリモリいけそうだ。


 濃い味をガンガン味わって、米でおいかける。頃合いでおしまずにうずら玉子も頬張れば、いいアクセント。


 半分ほどを過ぎれば、そろそろいいタイミングだ。


「やっぱり、これがないとな」


 おろしにんにくをスプーン山盛り一杯投入。


「おおぅ、ニンニクラーメンだ」


 だが、それがいい。


 それに、元の濃い味はニンニクがガツンときた程度では衰えない。


 殴り合う味の競演。


 素晴らしい。


 それで追い駆けるごはんの何と甘露なことか!


 って。


「あ、なくなった……」


 そこそこの量をついだつもりのごはんが尽きた、だと……いや、


「食べ放題だもんな」


 迷わずジャーに向かって、軽めに追加する。


「炭水化物、最高」


 ここぞと残してあった海苔にスープを浸して巻いて喰えば、超こってり簡易おにぎりの完成だ。


「美味し」


 海苔は、このためにあるといっても過言ではないな。


 おかわりしたごはんも最後まで楽しんで。


「スープがまだあるが、ここに米はやり過ぎか」


 腹具合と確認して、思いとどまり。


「それでも、飲み干すのが礼儀だな」


 丼を持ち上げてごくりといく。


 正直、胃の腑に重いが、構うものか。


 麺を喰らわば汁まで、だ。


「ふぅ」


 飲み干せば、


「どうぞ」


 店員からまくり証明書が与えられる。


 一ヶ月間麺大盛りやらトッピング無料のサービスが受けられるありがたいものだ。


 財布にしまい。


 最後に水を一杯飲んで一息吐き。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、帰るか」


 オタロードを北へ抜け、駅へと。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る