第188話 大阪市中央区難波のラーメン半チャーハンセット+替え玉
「そうだ、映画に行こう」
仕事を定時で終えた私は、突発的な衝動に駆られて難波に降り立っていた。
めぼしい映画は……
「
推進機構付きのハンマーだけがやたら印象に残っている『銃夢』の実写映画化。随分前に映画化は発表されていたが、長い時を経てようやく上映されたものだ。
丁度いい時間だったので、サクッと予約を済ませる。
「さて、まだ時間はあるし、何より、腹が、減った……」
という訳で、御堂筋線から劇場へ向かう途上の地下。NAMBAなんなんを歩いてめぼしい店を探す。
「よし、久々にここへ行くか」
千日前商店街に出る階段の横、国産ねぎ入れ放題を売りにした麺屋が目に付いた。
「さて、何を喰おうか……」
チャーシューメンや野菜ラーメン、坦々麺にも惹かれる。
だが、それよりも。
「チャーハン喰いたいなぁ」
となれば、決まったようなものである。
席に余裕があったのでさっさと店内に入り、
「ラーメン半チャーハンセット」
と注文を済ませる。
後は待つばかり。となれば『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動するときだ。現在は、黒罪ルチカのシナリオが進行中。だけど、 STEP3 で確定の【野遊】リリーを育てるターンでもある。
だけど、出撃する時間は微妙なのでおでかけをせっせと仕込んでいると、予想通りすぐに麺がやってきた。
褐色のスープに薄切りチャーシューと刻みネギ、メンマが浮かんでいる。白湯のために麺は見えないが、食欲をそそる薫りが立っている。
ほどなく、チャーハンもやってくる。
ネギ玉子チャーシューのオーソドックスなものだが、定番の丸く盛られたものではなく、薄皿に無造作に盛られた感じがなんだか家庭的でよい。
と、見ていても腹は膨れない。
「いただきます」
まずは、レンゲでスープを頂く。
「安心の味だ……」
旨味の強い豚骨醤油味。続いてスープの中から細麺を引っ張り出して食めば、腹の虫が歓喜の声を上げる。
「ここに、追いチャーハンだ」
見た目通りオーソドックスな味わいのチャーハンを、スープの豚骨醤油の風味が残ったところでかき込むのは格別である。
ああ、喰っている、生きている。
しばらくは、そのローテーションを楽しみつつ、
「よし、ネギ追加だ」
入れ放題のネギを豪快に放り込んで、スープに浸して頬張る。
辛味もなく食べやすいネギの旨味。薬味を出汁で喰う贅沢。
勿論、それを麺で追い駆けるのが楽しみでもある。
薄切りチャーシューも癖がなく、濃いめのスープとのバランスがよい。
心地いい味わいを楽しんだところで、更に変化を求めたくなってくる。
「にんにく唐辛子、だな」
備え付けの赤いペースト状の調味料を放り込めば、スープがいい感じに赤みを帯びる。
「うん、いい塩梅だ」
元の風味が消えない程度に、辛味と旨味が追加される。
食が進む味わいだ。
だからか。
「しまった。麺が、もう、ない……」
絶望が襲い掛かってきたが、待て。
細麺ゆえに大盛はないが。
「替え玉、お願いします」
そう、替え玉があるじゃないか。
ほどなく、更に盛られた麺が到着し。
丼に投入。
ついでにネギも追加すれば。
「復活だ」
チャーシューはほとんど食ってしまっていたが、ネギラーメンとして改めて甦った丼がそこにはあった。
「ああ、再び存分に麺をすすれる幸せ……」
替え玉は素晴らしいシステムだ。
また、最初から楽しめる。
ネギ入れ放題のお陰で具材もそれらしく。
残っていたチャーハンで追い駆けることも可能。
今ひとたびの食の幸福を味わう。
だが、幸せはいつまでもは続かない。
胃の中に消えていってしまうのだ。
「おお、もう、ない……」
気がつけば、全て食い尽くしてスープが残るのみ。
ここまで来れば。
丼を持ち上げ、一気にスープを飲み干す。
「ふぅ」
心地良い満腹感に浸り。
水を一杯飲んで一息吐き。
「ごちそうさん」
会計を済ませて店を後にする。
「さて、劇場をめざすか」
NAMBAなんなんを、マルイ方面へと進む。
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