第182話 大阪市生野区新今里のラーメン(250g)ヤサイニンニクカラメ+ニラキムチトッピング

「どうにも、治りきらないな……」


 そこまで酷くはないのだが、喉と鼻が微妙な感じが長らく続いていた。

 医者に処方してもらった薬で大分マシにはなったのだが、マシになった程度で、本調子には戻らない。


「ん? マシ?」


 そこで、閃いたのである。


「そういえば、マシができる系の新しい店ができていたな」


 かくして私は、近鉄今里駅へとやってきていた。


 ここから駅前商店街を南に抜けたところに、行列のできるラーメン店があった。だが、目的地はそこであってそこではない。


 今日は、その店は定休日なのだ。


 だが。


 定休日に別のコンセプトの店がオープンしたという情報を最近仕入れていたのだ。


「これも、巡り合わせだな」


 駅前商店街を抜けて最初の信号を渡って右に折れてすぐ。


 ランチでナン食べ放題をやっているインド・ネパール料理店の隣に、目的の店はあった。


「一杯か……」


 ガラス戸の向こうに見える店内は、カウンター席が9席だけの小さな店だ。丁度仕事帰りに立ち寄るに適した時間。一杯なのも仕方ない。


 とはいえ、待ち客はゼロ。


 店頭の席に座って待ちつつ、硝子越しに見える食券機でメニューを選ぶ。


「ラーメンと汁なしがあるのか……でも、ここはラーメンだな」


 とか考えていると、後続の客がやってきて、先に食券を購入して後ろに並ぶ。


「あ、食券先に買ってていいのか」


 という訳で、ラーメン(250g)と、折角なのでトッピングのニラキムチの食券を確保する。


 そうして、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在は、『怪獣娘』とのコラボイベント中で、ピグモン、エレキング、ゴモラ、キングジョー、ゼットン、ガタノゾーアが使い魔としてラインナップされている。


 何となく溜まったのでピグモンのガチャを回すと半額十一連で二枚確保できたので、宝探しが捗るのである。


 などと考えていると、席が空いたようで店員が案内に来てくれた。


 店内は、厨房をコの字に囲むカウンターのみのこじんまりした様相。


 座席には、セルフの水と、いくつかの調味料が並ぶ。


 着席して食券をだせば、暗号ではなく素直に無料トッピングの量を聞かれるシステムだ。


 確認したところマシマシはやってないようなので、


「ヤサイニンニクカラメ」


 で通す。


 後は、待つばかりなのでゴ魔乙のイベントステージで宝探しに励む。ガタノゾーアまでの道のりは遠い……


 easy で回数を稼ぎつつ出撃している間に時は流れ、目の前で自分のものと思しき丼のセットが始まったので、ゴ魔乙を終わりそわそわと待つことしばし。


「はい、ヤサイニンニクカラメ、ニラキムチ」


 注文の品が、遂に目の前に現れた。


「なんとも、上品だな」


 大ぶりの丼には、こんもりとした野菜の山と、その上にはアブラ。麓には、丸く綺麗に盛られた刻みニンニク、ニラキムチ、大ぶりのチャーシュー。


 ジャンクなのだが、美しくもある。


「いただきます」


 眺めていても腹が膨れないので、早速手を付ける。


 野菜の量がほどほどなので、まず、レンゲでスープを一口。


「……こういう味か」


 ポタージュのような濃厚豚骨醤油味。カラメにしたせいで少々しょっからいが、それでも、旨味がたっぷり詰まった丁寧な味わい。


「これなら、最初から混ぜられるな」


 続いて、麺を引っ張り出しつつ野菜を沈めて天地を返す。


 同時に、ニンニクとニラキムチをスープへと投入。


 そこで、太いストレート麺を頬張れば、しっかりスープを纏った濃厚な味わい。ニンニクのパンチを加えつつ、噛み応えがあるのも嬉しい。


 それでいて、 


「しっかり辛いな」


 ニラキムチも存在感を示していた。


 野菜もスープを纏ってとても濃厚。


 チャーシューも濃厚。


 というか、どこまでも濃厚だ、このラーメン。


 野菜を沈めても全く薄まっていない。


「カラメ、ちょっとやり過ぎたか……」


 野菜で薄まると思ってのカラメだったが、計算ミスかもしれない。


 まぁ、次から気を付ければいいか。水をしっかりのんで体内で薄めておこう。


 ともあれ、味が濃いからこそモリモリ野菜も食べられる。


 何もかもをガッツリと楽しめるのは、よいことだ。


「ここで、少しアクセントを加えるか」


 粗挽き胡椒を適度に振り掛けて、麺を啜る。


「少々のことに動じないスープだなぁ」


 スパイス感が出てきたが、やっぱりスープが濃厚だ。


 なら、このまま突き進もう。


 モリモリガツガツ。


 残った麺を、野菜を、チャーシューを食す。


 スープに浮かぶアブラが箸休めになるほどの濃厚さに浸っている間に、丼の中の固形物は姿を消していた。


「今後、カラメは控えよう」


 最終的に、スープのインパクトが強すぎた。ニラキムチを入れたのも後押ししているかもしれない。


 それでも、味はとてもよかった。


 また、来よう。


 そう思いながら、水を一杯、では足らず二杯ほど飲んで口内をすっきりさせ。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、帰るか」


 近鉄今里駅方面へと、足を向ける。



 

 

 


 


 


 


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る