第181話 大阪市浪速区日本橋の鳥豚油そば(特盛)+野菜富士盛り

「三時間ぐらい映画観た気分だ……」

 

 三連休最終日。朝一で『Fate/stay night Heavens Feel 第二章』を鑑賞したのであるが、原作の要素を高圧縮して詰め込まれていたために、上映時間に対して脳の体感時間がやたらと長く感じられる作品だった。


 ゆえに。


「腹が、減ったな……」


 時間はまだ十時半過ぎだが、朝食が早かったので体感では昼飯時だ。


 劇場を出て、本能の赴くままオタロードへと至るが、


「まだ、開いてないよなぁ」

 

 大概の店は11時開店。まだ、開店までは二十分ほどあったので、適当に開いている店を回って過ごし、段々と店が開いてきたところで、


「さて、どこで喰ったものか……」


 なんとなく、普段と違う店で喰いたい気分で歩いていると、


「あれ? なんかアキバで見たロゴが……」


 ソフマップの南側の角を曲がったところに、○の中に油と書かれた見覚えのあるロゴがあった。


 足を運んでみれば。


「いつのまに出来てたんだ?」


 記憶に違わず、アキバで見かけた店の支店のようだった。


「せっかくだ、ここにするか」 


 開店して少し。すぐに入れそうだ。


 店頭の食券機を見たところ、色々な油そばがあるが、どうやら鳥豚油そばが基本のような風情なので、それを選んでみることにする。初見は基本に忠実にいくポリシーなのだ。


「麺量は……大盛にしておくか。あとはトッピング」


 見れば、野菜富士盛りというものがあった。


 野菜、大事。


「これもいっておこう」


 購入を済ませ、厨房前に並ぶカウンター席に着く。


 食券を出せば、


「大盛、特盛どちらにしますか?」


 とのこと。そういえば、共通の食券だった。


 ならば。


「特盛で」


 多い方を言ってしまうのが人情というものだ。脂肪フラグ。


 後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。今は新年イベント継続中。諸事情でリリーの確保が追い付いていないながらも、粛々とイベントステージをこなしていると、注文の品がやってきた。


「なるほど、こういう様相か」

  

 大きな丼に積み上がった野菜。そこに寄り添う長いチャーシュー。隅にはメンマ。全体には、白濁したタレと赤いラー油か何かが掛かっている。


 見るからに、ジャンク。


「いただきます」


 とにかく、まぜよう。


 箸とレンゲでグルグルと全体を混ぜれば、特盛の麺が主体となり、そこに他の具材が紛れ込んでいるような見て目となった。


 頃合いをみて麺を口に運べば。


「お、思ったより食べやすいな」


 鳥と豚の出汁は口当たりよい味わい。少々、あっさりしているぐらいだ。


 店内を見たところ、色々とアレンジがあるようなので、これをベースにカスタマイズしていく、ということか。


「なら、酢とラー油から」


 どちらも背の高い容器で、大量に使うことが想定されていると見える。


 迷わず双方一回りずつ掛けてから食せば。


「ああ、なるほど」


 ラー油のゴマの風味と酢の酸味がいい感じだ。こうやって、味を変えつつ楽しむのがよさそうだな。


 しかし、なんというか、とにかく『麺』だ。


 スープがないから、そりゃそうなのだが、特盛、少々多かったか?


 だが、それでも味変の楽しみが多いからいけるか?


 モリモリと麺を喰らう。一緒に野菜も食らえているからきっと健康的だ。


 だが、何かが足りない。


「次は、ニンニクだな」


 と、備え付けの容器を手に取る。


 粗めに刻んだニンニクが入っている。


「ひとぉつ……」


 匙に山盛りを放り込み。


 食べようかと思ったが、


「ふたぁつ……」


 ついつい、同じ量を追加投入し。


「み……やめておこう」


 そこで理性を取り戻し、容器を戻す。


 改めてまぜ合わせてしまえば。


「うむ、ますますジャンク」


 ニンニクが加わったことで、味に勢いがついてとてもよい。


 麺が進む。


 バクバク食べる。


 が。


 まだまだ残っている。


「これは、もう一回ぐらい何かいるか?」


 マヨネーズもあるようだが、それは重くなりそうなので見送り。


「こういうときは……酢か」


 容器を手に取り、二回りぐらい掛けて、まぜる。


 そうして、改めての味わいは。


「さっぱりしてるなぁ」


 パンチが酸味で中和され、とても爽やか。


 これなら、いくらでも食えそうだ。


 サラサラと流し込むように麺を胃の腑へと放り込んでいけば、一気に麺の姿が消えていく。


 最後に、薄褐色のタレが底に残るだけの状態になったところで、


「割スープをお願いします」


 店内の案内で目にしたので、頼んでみることにした。


 丼を一旦渡して入れて貰う方式で、返ってきたときには温かいスープに。


「なんか、ほっこりするなぁ」

 

 生姜らしき風味を感じる優しい味わいのスープ割りは、特盛の麺を食した後の〆にとても気が利いている。


 ゆっくりと飲み干し、一息。


 最後に、お茶を一杯飲んで、


「ごちそうさん」


 丼を付け台に戻して店を後にした。


「さて、帰るか……」


 そこで、ふと、ズボンの腹回りが気になり。


「歩こう」


 最低一駅は歩くべく、とりあえずオタロードへと歩みを進める。

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