第180話 大阪市中央区日本橋のカレーラーメン(並ヤサイマシマシニンニクマシマシカラメ魚粉)

 正月三ヶ日も終わり、冬休みも残り少なくなった土曜の朝。

 今年に入って未だ麺を喰らっていなかったことに気づき、愕然とする。


「そうだ、マシ初めしよう!」


 かくして、私は日本橋の地に降り立った。


 今日は、基本に立ち返り、オタロード方面へ向かう手前の店へと向かう。


「これならいけそうだな」


 開店直前で前は四人。入って最初のロットが回ってきそうな好位置である。


 列に入ってすぐに開店し、店内へと。


「今日の所は、カレーにしよう」


 カレーと共通のつけ麺の食券を購入して、席へと。


「カレーラーメン、並、ヤサイマシマシニンニクマシマシカラメ魚粉」


 サクッと詠唱を済ませればあとは待つばかり。


 早速新年早々悪魔サイドの新規イベント開催中の『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動するも、すぐにアクティブポイントが尽きたので本を読んだりして待っていると、注文の品がやってきた。


「ああ、安心するなぁ」


 山盛り野菜の載った丼というのは、なんというか、いつもの感じがしていい。


 麓に雑に置かれた肉塊や、大量の刻みニンニクもまたよし。


「いただきます」


 さぁ、マシ初めだ!


 まずは、カレー粉と魚粉の混合物が掛かって味のある色合いを見せる頂点の野菜からいただくことにしたが、


「中々手強いな……」

 

 迂闊に触れると崩れるバランス。


 慎重に慎重を重ねて野菜を箸でつまみとり、口へ運ぶ。


「濃厚だな」


 カレー粉と魚粉にたっぷり塗れていたために、和風のカレーというかそういう味わいが口内に広がる。カレーうどんとかの系列の味だ。


 これはこれで上手いが、やはり、物足りない。


 更に慎重を期して野菜を崩していく。


 そうして、ようやく現れたスープへの導線に浸して野菜を食せば。


「ああ、カレーだ」


 当たり前の感想だが、ここのカレーはスパイスがそこそこ感じられるタイプで好みの味なのである。


 カレー味は、食欲増進にも効果的。


 腹の虫の活動も活発になり、大分崩れて食べやすくなった野菜タワーをまずは崩していく。


 ようやく、麺への導線が開けたところで引っ張り出せば、


「ああ、カレーだ」


 しっかりスープに浸って味が染みこんでいてとてもよい。


 ワシワシと齧り付ける固めの太麺なのも食べ応えがあって嬉しい。


 そこから、麺を引っ張り上げつつ野菜と肉を沈めて、天地を返していく。


 そこまで至れば、後は気兼ねなくバクバクいけるのだ。


「ああ、カレーだ」


 カレー味が、おせちやらが続いた三ヶ日明けの腹にとにかく染みる。


 マシ初めに来て、それにカレーを選んで正解だった。


 カレーと、大量に溶け込んだニンニクの風味に浸る。


 そこに登場する肉塊。


「これには……こうだ!」


 卓上調味料の黒胡椒を豚に直接振り掛ける。


 粒々塗れになったところを食せば、


「ジャンキーだ」


 カレーのスパイスにプラス胡椒。


 スパイスの相乗効果というか、ここまでくるととっちらかった感さえあるのが楽しい。


「そうなると、これもいくか……」


 一味もインしてみる。


「トビ辛スパイス的なものだな」


 単純に唐辛子の辛味がプラスされる。


 ここからは、カレーの海に身を任せていればよい。


 だが。


「薄まってしまったな……」


 ヤサイマシマシを天地返しすることによる宿命。


 水分が出て薄くなるのは防げなかったか……


「いや、こうなったら」


 胡椒と一味をドバッと掛けて刺激を増量。


 味が薄まってもベースの味がしっかりしている。


 それらの効果で無理矢理味の輪郭を立たせてくれるのを期待してのことだ。


「いける、いけるぞぉ」


 期待通りになったので、一気に食を進める。


 かくして、丼はスープを残すばかり。


 一味と胡椒で少々粉っぽくなったスープをレンゲで数口頂いたところで。


 完飲は控え。


 水を一杯飲んで。


「ごちそうさん」


 店を後にした。


「さて、腹ごなしに歩くか」


 足を、オタロードへと向ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る