第173話 大阪市浪速区難波中のランチDXセット(ラーメンこってり ネギ多めにんにくたくさん入り)

「無料券期限今月末か。今日しかチャンスがないな……」


 日曜日の昼前。私は、無料券を有効活用すべく難波の地に降り立っていた。


 地上に出て妙に人が多いと思ったら、大阪マラソンか。ちょうど選手が通過するタイミングのようだが、まぁ、スポーツ観戦は趣味じゃないのでスルーして、店へ向かおう。


 御堂筋線難波駅の南側、高速沿いに進んでなんばパークスの西側に、目的の店はあった。


「さすがに空いているな」


 時間的にまだ混み合う時間でもなくすんなり入れた。


「さて、無料券だが、セットで使えるのだろうか?」


 使えなければ単品で何か付ければよいのだが、疑問はそのままにしないが吉。


 店員に確認したところ、店舗に寄って違いがあり、この店舗ではセットメニューでもラーメン一杯分の料金値引の差額利用が可能という。


「……そうとなれば、DXに行ってしまうか」


 欲が出て、ランチDXセットを頼む。勿論、麺はこってり。にんにくネギ増量だ。


 後は待つばかりとなり、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在は船の擬人化ゲームとコラボ中。想いを集めるパターンのイベントを粛々と進めている。


 軽く一度出撃が終わる頃に、早くも注文の品がやってきた。


「これが、DX」


 少量の大根サラダが付け合わせの唐揚げと、チャ―マヨ丼が付いている。


「いただきます」


 とはいえ、最初はやはり麺だ。


「うん、いつもの味だ」


 他のラーメンとは一線を画すどろり濃厚ポタージュスープは、定期的に摂取したくなる中毒性がある。それが、シンプルな中細ストレート麺に絡んでくるのがいい。


 こってりを堪能しつつ、唐揚げを囓ればカリッカリに表面が上がっているのが嬉しい。最初は薄味。だが、噛んでいると衣の味がじんわりと広がってくる。


 スープとバランスの取れた唐揚げである。


 続いて、チャ―マヨ丼。その名の通り、刻みチャーシューとのマヨネーズ和えの載ったご飯である。


「おおう、濃厚」


 マヨネーズを纏ったチャーシューが重々しく腹にくる。更に、チャーシューのタレもご飯に染みていて、単品でもかなりのこってり。


 そこで、ラーメンを食べる。こってり。


 こってりとこってりを集めてもっとこってりにしましょ。


 なるほど。


 こいつはDXだ。勿論、DXはデラックスの略で、PC9801の型番ではないので誤解なきように。


 唐揚げをこってりのスープの味わいと共に食し、そこに追いチャ―マヨ丼でこってりこってり。


 ズンズン腹に溜まっていく。


 ああ、デラックス。


 充実した昼食だ。


 もう、余計なことは考えず。


 ただただ食べるだけの機械と成り下がる。


 それでいい。


 腹の虫の求めるがままに喰らえばよい。


 気がつけば、残るはラーメン丼に残るこってりスープのみ。


「飲まないなんて選択肢、出てきたらバグだな」


 レンゲで粘性の高いスープを掬い、口へと運ぶ。


 こってりした口当たり。こってりした舌触り。こってりした喉越し。


 とてもいい飲物だ。


 何度もレンゲを動かし、掬いきれなくなれば丼の表面からこそぎ落とすようにして追い駆け、こってりを求める。


 気が済むまで堪能し。


 最後に、水を一杯飲んで一息。


「ごちそうさん」


 会計を済ませて店を後にする。


「さて、用事に向かうか」


 来た道を引き返し、大阪難波駅をめざす。

 

 



 







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