第174話 大阪市浪速区難波中の豚骨やさいらーめん(塩)

 終わりというものはそこから先がないから終わりなのであって続けばそれは終わる終わる詐欺ではないかと思われるものの、『物語』というものにとっては終わりの後にカーテンコールがあることもあるわけで、それは終わりと始まりの連鎖から外れた『終わりの続き』ということで終わる終わる詐欺とはいえないのではないだろうかと思ったりする昨今。


 11月中に観る余裕のなかった、そんな物語のイベント上映を本来の映画の日に鑑賞をした土曜の昼過ぎ。


 昨日に飲み会があり諸事情で胃がカラッポの状態で映画を鑑賞したこともあり、腹の虫は大騒ぎ。


 これは、ガッツリ喰わねば収まらない。


 何冊か新刊を確保したいので、オタロードへ向かう道すがら、その想いは募る一方。

 

 ソフマップなんば店ザウルス前で限界を迎えた腹の虫は、ランチタイムはご飯が食べ放題の店を察知し、私の足を強制的にそちらへ向けたのだった。


 幸い、席に空きがありすぐに入れそう。


「よし、いってしまおう」


 入り口の食券機の前に立ち、少し思案するが。


「栄養バランスを少しは考えてやさいらーめんだな、ここは」


 合理的な判断を下し、店員に促されて奥のカウンター席へ。


 食券を出せば、麺の固さ味の濃さ脂の量、そうして、醤油・塩・みそからタレの味を選択することになる。


 麺は固め、味は濃いめ、脂少なめはいいとして、味をどうするか? だが。


 ここは、普段余り頼まない『塩』にするとしよう。


 かくして注文は確定し、後は待つばかり。


 まずは、食い放題のライスバーから茶碗に山盛りのご飯を確保する。


 そうして、徐に『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動。今回のイベントはラナンの半身ヴォルクレス。色々酷いことになってたりするものの、福袋のリリーがアクティブポイントボーナスがあるつもりで順調に報酬を獲得している状況だ。


 そうして、一度だけ出撃したところで、早くも注文の品がやってきた。


「おお、白いな」


 やさいらーめんを示す山盛りのモヤシとキャベツ。基本の大判の海苔とほうれん草とうずらとチャーシュー。


 それらが乗った丼を満たすスープは、白。


 塩だから、余計な色が付かず出汁を煮込んだままの色なのだろう。


「いただきます」


 まずは、スープから行って見れば。


「クリーミーだ」


 とてもまろやかな口当たりでありつつ、しっかり豚骨味。なんというか、くりいむトンコツという趣だな。ところで、平仮名で『くりいむ』と書くとなぜだかいけない感じがするよね?


 それはさておき、スープに野菜を浸してモリモリと食べる。健康的だ。


 続いて、海苔をスープに浸し、それをご飯に巻いて食べれば背徳の味。麺に合う者がご飯に合わないわけがない。


 炭水化物の互換性を存分に味わえるな。


 そのまましばらくは、麺と米を交互に合わせて塩豚骨の風味を堪能していたのだが。


「しまった……野菜の水分で薄まってきたか……」


 段々と味がぼやけてきてしまった。


「こういうときのための、薬味だ」


 最初に投入するのは。


「寒くなってきたし、風邪の予防にはこれだよね」


 すりおろしニンニク。スプーン一杯を投入して混ぜれば。


「よし、パンチが出てきたぞ」


 食欲がマシマシだ。


 だが、まだだ。


「もう一押し……いってしまうか」


 千切りの生姜を適量、そして、豆板醤を一匙加える。


 白かったスープが薄赤く染まっていく。


 一口スープを啜れば。


「計画通り」


 旨辛豚骨に生まれ変わっていた。


 これで、もう、大丈夫。


 勢いの付いた箸は止まらず。


 茶碗は空になり。


 丼にはスープが残るのみ。


「これは、いかねばなるまい」


 まくれ、さすれば、(サービス券が)与えられん。


 丼を持ち上げ、ゴクゴクとスープを頂く。


 シンプルな塩豚骨スープは、もう、ない。


 あるのはただの、旨辛豚骨だ。


 だが、それがいい。


 堪能した。


 カウンターに戻した丼は、空だ。


 手を上げて店員を呼び、サービス券を早速確保。


 最後に、改めて水を一杯飲んで一息ついてから。


「ごちそうさん」


 店を後にした。 


「さて、新刊買いに行くか」


 進路を南、メロンブックスへと。

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