第170話 大阪市中央区日本橋のラーメン(並ヤサイマシマシニンニクマシマシカラメ魚粉?)

「そうだ、マシマシ喰おう」


 そういう日ってあるよね?


 寒くなってきたのもある。ウィルス対策にマシマシのニンニクは効果的である。昨冬はインフルに掛かったので、今年は積極的にニンニクマシマシていくべきだろう。私は過去から学べるのだ。


 というわけで、今日は映画の日なので映画は観るとして、その前にオタロードの南の細い通りに位置する店を訪れていた。


 開店直前。わずかばかりの先客もいる中、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 先日のハロウィンイベントで、初めてリリーをゲットし損ねてしまった。これで、登場時から維持していたリリーコンプリートが崩れたのだ。


 哀しいが、最近入手した『氷室の天地~Fate/ school life ~』の磨伸さんプロデュース鯖江産こだわりフレームに調子に乗って確保した予算の倍額のレンズを入れて残高ヤバイところでもある。


 これはデジタルのめがねっ娘に掛ける金をリアルの眼鏡にも回すようにという神の思し召しだと思うことにしよう。いや、リリーはで悪魔なのだが。ぷっくくく……


 現在は、半神のエピソードでプルメリアのターン。なぜかロリになったイシュトバーンの物語が展開中である。


 イベントステージでアクティブポイントを稼いでいると、店員が開店を告げた。


「今日はオーソドックスに行くか」


 塩とカレーも捨てがたいが、どうにもオーソドックスに行きたい気分なのだ。


 順次奥から詰めて、L時の曲がった部分に陣取って食券を出す。


「麺の量はどうしますか?」


「並で」


「ニンニクは」


「ニンニクマシマシで。あと、ヤサイマシマシニンニクマシマシカラメ魚粉で」


 サクッと注文を済ませ、イベントステージの出撃をしていたらAPが尽きたので、週刊少年チャンピオンへ。


 丁度差しかかった『魔法少女サイト』は、親父が物理的にも人間の尊厳的にも大変なことになりつつ衝撃の事実が明らかに。これは先が楽しみだったが、よりによって食事前にこの絵面はどうなんだ? などと思っていると、タイミングよく(悪く?)注文の品がやってきた。


「おや?」


 山と盛られたヤサイに、麓を彩るニンニクと豚の肉塊。

 そして、山の頂上から斜面をヌラヌラと艶めかしく輝かせる、アブラ……


 どうやら、魚粉とアブラを間違えたらしい。


 アブラは常に控えている身だが、まぁ、いいだろう。


 たまには、こういうイレギュラーに身を委ねる程度の度量は持っていたいものである。



「いただきます」


 まずは、いつも通りにヤサイ。


「さすがに重いな……」


 アブラ塗れのヤサイは、魚粉の和の旨味とは異なる、背徳的な旨味。


 だが、流されてはいけない。


 スープの辛さで中和しつつ、今度はニンニクに塗れさせれば、痛みさえ感じそうな刺激が心地良い。


 この痛みは、悪いモノを退治するヒーローが口内で暴れているんだ。


 そう思えば、いい。


 アブラとニンニクでヤサイをある程度胃の腑に収めてスペースができたところで、ニンニクが盛られた側が沈むように計算しながら、ヤサイ山を倒しつつ麺を引っ張り上げる。


 太くバッキバキの固めで黒ずんだ黄色の麺に、ようやく対面だ。


 豪快に掴んで豪快に口内に放り込んで豪快に咀嚼すれば豪快に旨い。


 そこを、豚で追い駆けていく。


 いつもよりオイリーな食感に背徳感を抱きながらも、脳に叩き込まれる幸福感には抗えない。


 マシマシは素晴らしい食文化だ。


 これだけ炭水化物とタンパク質を摂取しても、同じかそれ以上のヤサイもセットだから、バランス栄養食に違いない。


 少なくとも、心の健康は爆上がりだ。


 マシマシ、おいしい。


 まし……うま……


 ……いかんいかん。どこかへいってしまいそうだった。


 水を一口飲んで一息入れつつ。


「更なる刺激で目を覚まそう」


 一味を振り掛けて混ぜずに掛かった一角をそのまま口に放り込んでカプサイシンの刺激に身を委ね。


 次に粗挽き胡椒を振り掛けて同じく混ぜずにそのまま口に放り込んでスパイシーな風味に心を揺らし。


 存分に食を楽しむ。


 さすれば、丼の中からいずれ、固形物は姿を消すのが道理。


「終わり、か」


 充実した腹を抱えつつも、名残を惜しんでスープをしばし楽しむ。


 ショッカラい上に、こぼれ落ちた一味と胡椒が溶け込んで刺激もマシマシなスープはさすがに完飲は堪忍だ。


 最後に、水を一杯飲み干して、気持ちをリセット。


 食器を付け台に戻し。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、映画だな」


 パソコンのデスクトップ画面だけで展開するという捜索劇を観るべく、マルイ方面へと向かう。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る