第164話 大阪市浪速区難波中のラーメンこってり(ネギ多めにんにくたくさん)+チャーハンセット

「よし、映画だ」


 10月01日は神聖なる眼鏡の日である。一○○一だ。


 だがしかし、今日はそれらしいことが今のところ思い付かない。ならば、映画の日を活用して、気になっていた映画を観に行くことにした。


 愛らしい喋るクマが登場する映画だ。子供の頃の親友と大人になって再会し、マリファナとフラッシュ・ゴードンに興じる……というような話ではない気もするが、とにかく映画を観るのである。


 仕事を速攻で終わらせて、難波の地に降り立ったところで、もう一つのイベントに思い至る。


 今日は、祭だ。


 時間的に、何とかなる。早く出たから、まだギリギリ混み合う前に行けるかもしれない。


 かくして私は、御堂筋線の最南端から出て、高速沿いに直進。マクドの西側の道を入ってすぐの店を目指した。


「おお、並んでない」


 休みに祭が被ると行列ができているが、さすが平日。まだ夕飯には早いというか社畜に甘んじる者たちはやってこない。


 己の力で定時退社をもぎ取った私は、悠然と店内へと。


「それでもさすがに忙しそうだな」


 満席でないだけで、客の回転はしているようだ。


 多くの人の前に注文の品がまだやってきていない。


 ついでに、水を出すのさえも遅れて店員が謝罪している。


 祭に参加している実感が湧いてくる。


 しばし祭の空気を楽しんでいると、ようやく店員がやってきたので、


「チャーハンセット、ラーメンこってり、にんにくたくさんねぎ多めで」


 予め決めておいた注文を通し、出てきた水を飲んで一息。


 現在はヘカトリオンのイベント開催中の『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動して、サクッと確保できたサモンゲイザー持ちのリリーを活用してイベントステージ中にチャーハンがやってきてどうしたものかと思っていると、クリアする頃に麺がやってきた。


 うむ、結果オーライ。


 目の前には、灰白色でどろり濃厚なスープが特徴的な麺と、平皿に盛られたオーソドックスなチャーハン。


 腹の虫が一声いななくのを合図に。


「いただきます」


 箸を手に、麺を啜る。


「熱っ!」


 スープの粘度が高い分、熱もしっかり絡んで持ち上がってくる。


 だが、その先には、鶏ガラや野菜などの溶け合ったポタージュの旨味。この店の存在意義を示す味わいが待っている。


「ああ、最近この系統も増えてきたけど、やっぱりこの味が天下一品だなぁ」


 安心の味わいに腹の虫もほっこりしたところで、チャーハンを。


「相変わらず、麺と比べて個性のない味だが……それがいい」


 スープと合わせるもよし、ラーメンのタレを足すもよし。プラスしても楽しめる味、ということだ。


 ニンニクとネギを増量して薬味マシのスープをレンゲで口に運び、間髪入れずかき込むチャーハンの旨さよ。


 その旨さを残した状態で麺を啜り、更にチャーハンをかき込む。


 旨さのバトンタッチで攻撃力と回復量マシマシである。


 腹の虫がダウン、 1 MORE!


 麺を喰い、チャーハンをかき込む。


 HOLD UP!


 いかん、このまま一気にいってしまいそうだ……いや、それの何が悪いんだ?


 △総攻撃。


 みんなで殴ればすぐに済む!


 じゃなくて、食欲の赴くまま、レンゲと箸を動かし続ける。


 旨さのコンボは∞。そう、眼鏡を連想させる∞だ。


 質的に∞の旨さを感じつつも、量的には有限なのである。


 祭の熱に浮かされるように、腹の虫へと供物を捧げる。


 さすれば、チャーハンの皿は米粒一つ残さず。


 丼に、僅かにねっとりとしたスープを残すのみとなる。


「勿論、いかねばな」


 丼を掲げ、レンゲでこそぐようにして残ったスープを可能な限り口内へと注ぎ込む。


 かくして、スープというか粘液もなくなった。


 最後に、水を一杯飲み、気持ちを落ち着ける。


 地味に映画の時間が気になっていたのもあるが、今日は旨さに溺れて心地よい食の体験ができた。


 祭に感謝しつつ。


 会計を済ませ、


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、劇場を目指すか」


 なんばCITYを通り抜け、南へと進路を取る。


 

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