第158話 大阪市中央区難波のスタミナラーメンとニラレバ炒めと生ビール
焼き肉ホルモン、今から焼くか、後から焼くか?
よく解らないフレーズが頭を過る。
仕事帰り。
週末に映画を観ようと画策していたところに、急な出張が入って流れそうなので、本日強行することにしていた。
チケットは確保済み。
時間に余裕があるが、先に飯を済ますか考えていたら、ふと、そんなフレーズが過ったのだ。
とはいえ、腹の虫が段々と暴れ出しているのを考えると、後にする選択肢はない。
しかし、よくよく考えたら近くにホルモン屋はいくらでもあるが、悠長に焼いている時間はない。
前の問いは、全くの無意味だった。
ならば、今、何が喰いたいか?
ホルモンからもう少し絞ってみよう。
少々疲れ気味。
ホルモンで精を付ける。
その代表格となれば……
「牛の肝臓を食べたい」
妙にしっくりくるフレーズが口を衝いたので、その用件に従うことにした。
肝臓、つまりレバー。
だが、それだけでは寂しい。
ならば、定番のレバニラ炒め。
「それだ!」
閃きに従い、高島屋前から道具屋筋へ向かう商店街の途中を左折してすぐにある大衆中華料理屋を目指す。
結構賑わってはいたが、すぐに入れそうだ。
勿論、この店の表記に従えば『ニラレバ炒め』があることは確認済み。手頃なサイズのそれに、ご飯と何かもう一品付ければ、いい感じの夕食になりそうだ。
カウンター席に案内されて、メニューを開く。
ニラレバの存在を改めて確認し、何気なく隣のページをみた瞬間、予定変更を余儀なくされた。
「そうか、ここはスタミナラーメンがあるのか……」
天の理を得た気分だ。
時機や店舗によってあったりなかったりするが、この店で最も好きなメニューだったりする。
あるなら頼むしかあるまい。
早速店員に注文を告げる。
「ジャストサイズのニラレバ炒めと、スタミナラーメン」
だが、そこで止まれなかった。
「あと、生ビールを」
この内容で一杯やらないのは、罪深いと思わないか?
先に来ると料理が来る頃に飲み終わってしまう可能性が高いため、料理と共に持って来て貰うようお願いすれば、後は待つばかり。
『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。
遂に開始した『三極ジャスティス』コラボ。カスミガセキ、ヤオヨロズ、ダクシズの首脳である
細々ながらダクシズに身を置くからには、破滅の人形様は可能な限り確保せねばならない。
幸いにして、宝集めとアクティブポイントの両方で入手出来るので、しっかり周回するだけの安心感。
更に、福袋でセーラー服リリーが来たので、諭吉さんでお釣りが来た上にアクティブポイントボーナスもあるので、比較的ゆるやかに楽しめる。
とはいえ、そこまで時間は掛からないだろう。
おでかけと、一度の出撃をこなして様子を見ていると、ちょうどいいタイミングで注文の品がやってきた。
ピリ辛炒めのたっぷりの白菜とニラと豚の乗ったスタミナラーメン。
飾り気のないもやしとニラとレバーのニラレバ炒め。
そして、安心の銘柄の生ビール。
多くを語る必要はあるまい。
「いただきます」
ただただ、目の前の食に向き合うのみ。
「ぷはぁ」
黄金色の液体で喉を潤して準備運動し、
「おお、ニンニク……」
スタミナラーメンのニンニク醤油のスープで加速する。
「やはり、スタミナラーメンだなぁ」
実は、このチェーンのオリジナルと思い込んでいたが、実際は『スタミナラーメン』は一つのラーメンのスタイルだったりするのを知ったのは後になってからだ。
だが、そんな出自はいいだろう。
今、美味しくいただいているのだから。
「と、すっかり忘れていたな」
期せずして大好きなメニューがあったために、元々の目的を見失うところだった。
「牛の肝臓を食べたい」
その思いでやってきたのだから、レバーを食わねば。
「うん、ここのは臭みも少なくて食べやすいなぁ……って」
そうだった。
忘れていた。
「これ、牛の肝臓ちゃう。豚の肝臓や!」
と、思わずツッコンでしまったが、
「ま、旨りゃいいよな、うん」
それに尽きる。
実際、期待以上に旨い。
「ニラが被っているが、気にしちゃいけないな」
レバーの旨味の余韻を感じつつ、中細ストレートの麺を啜る。
ピリ辛ニンニク醤油味は、否応なく食欲をブーストしてくる。そこで、肉に走らず、シャキシャキの白菜を囓るとじんわりと甘みが広がっていくのが心地良い。
豚は意外にさっぱりしているので、奇しくもしっかり味の付いたレバーといい対比になる。
そうして旨味のハーモニーを存分に口内に残したところで、流し込むビールは最高だ。
ノリと勢いで来てしまったが、なんのなんの。といっても、ヤオヨロズ陣営の
無駄な注釈で流れがおかしくなってしまったな。
とにかく、いい食の時間を過ごせている。
腹の虫もご満悦だ。
もう、箸の向くままに、ニラレバを貪り、麺を喰らい、スープを啜り、泡の出る麦ジュースを呑む。
こういうのでいいんだ。
幸福だ。
シンプルな食の悦びに浸る。
さすれば、終わりはすぐに訪れる。
脂が輝くだけの皿。
微かな水滴を滲ませるだけのジョッキ。
そして、わずかなスープが残るだけの丼。
「これを飲み干さない選択肢は……ないな」
両手でホールドして、ゴクゴクといく。
最後までガッツリニンニク味。
旨い。
単純な悦びを感じつつ、空になった丼を置く。
最後に、水を一杯飲んで一息。
終わり、だ。
伝票を手に会計を済ませ、
「ごちそうさん」
店を後にする。
ちょうどいい時間だ。
さて、映画館を目指す訳だが、
「鳥の心臓が食べたい……」
新たな欲求が生まれていた。
満たされるのは、いつになるのか?
そんなことを考えながら、映画館を目指す。
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