第97話 大阪市浪速区難波中のラーメンこってり(ネギ多めにんにくたくさん)+チャーハンセット
すっかり冬めいてきた。
寒さばかりに気を取られてしまいがちだが、乾燥との合わせ技こそが病気の元。部屋の乾燥に気付かずうっかり鼻と喉の粘膜をやられて週末にダウンしてしまい、そこからどうにかこうにか復活基調ながら未だ調子が戻り切らないことに体力の衰えを感じたりする今日この頃。
どうにか仕事を乗り切った帰り、
「体力を付けるには、喰うことだ」
と、とても真っ当なことを思い立つ。
とはいえ、作るのはしんどい。外食だ。
こういうときは、こってりしたものがいい。
こってり。
「ちょうど今月いっぱいのサービス券もあるし、あの店にしよう」
かくして御堂筋線難波駅の南改札から出て、更に南下。高速沿いを進んだ先にある店舗へとやってきていた。
今日は別に祭はない。夕食にも少し早い時間だからか、客も疎ら。
店に入れば、
「お好きなカウンター席へどうぞ」
と勧められたので、一番奥の席へと陣取ることにする。
すぐに店員がやってきて水を出してくれたところで、
「ラーメンこってり、ネギとにんにく多めで」
とサクッとオーダー。
だが、それでは物足りない。
「あと、チャーハンセットで」
今日はこってり行くと決めたのだ。むしろ、頼まないのが間違いだろう。
注文を通したところで、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。そんなに出てくるのに時間は掛からないので、おでかけを仕込むだけにしていると、リリーが活力の実を持って帰ってきてくれた。APが回復する貴重なアイテムだ。流石、風紀委員長姿のリリーだった。
などと考えていると、注文の品が出てきた。空いていただけに、いつになく早いのか、単にリリーに見惚れて時を忘れていたのかは定かではない。
「うん、これだ」
灰褐色の独特のこってりスープに、中細ストレート麺が見え隠れしている。具材はチャーシュー、ネギ、メンマと定番のもの。多めにしたネギが賑やかでよい。
チャーハンの方は、定番の半球状ではなく、深皿にすり切れで平たく盛られているのがちょっと個性的かもしれない。
「いただきます」
体力の回復を期して、こってりスープを一口。
「はぁ、生き返る」
どろり濃厚ポタージュ系のスープは、鶏白湯に様々な野菜やらが溶かし込まれたこの店の個性そのものの味わい。時折、無性に味わいたくなる味だ。
だからこそ、軽く混ぜてスープに絡ませてから、麺に移る。しっかりとこってりスープに塗れた麺が、また旨い。スープともに引っ付いてくるネギやら、多めにしたにんにくの風味も感じられて、腹の虫も喜んでいる。
これなら、体調の回復に間違いなく効果があるだろう。
次に、チャーハンだ。
ネギと刻みチャーシューと玉子のこちらはド直球なよくあるタイプで、味も少々薄め。だが、こってりと合わせるには、ちょうどいい。
と思ったが。
「今日は更にこってり行くのだ」
席に備え付けられた調味料から、ラーメン用のタレを回し掛ける。
かなり塩分が高めな味わいになるが、旨みも加わって食欲が増進される。体調回復の為なら、勢いを付けるのもよいだろう。
チャーハンをがっつき、ずるずると濃厚スープを纏った麺を啜る。これは、RPGで言えばHP回復のためにポーションを呑む行為だ。体調を整えるための儀式だ。カロリーとか重力とか、今は気にしないのだ。
解放された気分で食べる麺とチャーハンは、清々しく旨い。
だから、だろうか。
「チャーハン終わり、か」
あっという間にチャーハンが空になり、
「こっちも、なくなったか」
後を追うように麺も姿を消してしまう。
目の前には、どろり濃厚なスープだけが残る丼。
「ここまできて、止まる道理はないな」
レンゲなんてまどろっこしい。両手を丼に沿え、口元へと運ぶ。
ゴクゴクと、飲み干せば、『明日もお待ちしてます。』の文字。流石に毎日はキツいが、年に数回は来るから許して欲しい。
丼をテーブルへ戻し、最後に水を一杯飲む。
こってりスープの残滓が洗い流され、すっきりしたところで、
「ごちそうさん」
会計を済ませて店を後にする。
「さて、オタロードを少し歩いて帰るか」
東へと、足を向ける。
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