第89話 大阪市浪速区難波中のラーメンこってり(ネギ多めにんにくたくさん)+唐揚げセット(セットのライスをチャーハンにチェンジ)+生ビール
本日は十月一日。
映画の日にして眼鏡の日である。
「うむ、いい映画だった」
だからこそ、朝一で難波に出てめがねっ娘が登場する映画を鑑賞したのだった。
主人公がめがねっ娘である以外の予備知識なしで臨んだその映画は、高校の薙刀部に入っためがねっ娘が鈍くさいながらも前に進んで成長していく物語た。
漫画原作でそちらは未読だが、二時間足らずの部活もの映画としてとてもよくまとまっており、予想のつくオチであってもそこへ至る過程が魅力的で心地良く見終えることができた。
さすがは、主人公がめがねっ娘なだけあるよい映画体験だった。この作品は、個人的に大当たりといっていいだろう。
そうして、心が満たされたところで、
「腹が、減ったな……」
朝が早い時間だったので、まだ少し昼時には早いが既に腹の虫が騒ぎ始めていた。
「なら、今日に因んだ店に行くことにしよう」
かくして、なんばウィンズ前のラーメン屋を目指す。
「お、そんなに並んでないな」
年に一度の祭りの日だけにもっと並んでいるかと思ったが、十人足らず。未だ十一時前という早い時間なのが効を奏したのだろう。これならすぐに入れそうだ。
「なら、次を予約するか」
間に合えば観たいと思っていた映画のチケットをサクッと確保する。当然、めがねっ娘が登場する作品である。
そうして店頭の発券機で整理券を発行し、待つこと十分足らず。
早くも十時台に店に入ることができた。
相変わらずの威勢よくも丁寧な店員の声に出迎えられつつ、カウンター席へと案内される。
注文は、既に決まっている。
「唐揚げセット。ライスはチャーハンに変更で。ラーメンはこってり。ネギとニンニク多め。あと、生ビールを。できれば食事と同じタイミングで」
今日はお祭りなのだ。自分の中で一番の御馳走としているメニューを頼むに決まっている。だからこそ、即座に発注できたのだ。
ありがたいことに、まだそこまで混み合っていないからかビールのタイミング調整も快く応じて貰え、期待を高めながら待つターンへと移行したので徐に『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。
現在はロザリーメインの新イベントで、ストーリーが進行しているのだが、『デススマイルズ』とも繋がっており、中々に心躍る者がある。ただ、声があの人になるかは楽しみなところだ。
思えば、普段横シューティングはあまりプレイしなかったところで『デススマイルズ』はフォレット解禁を切っ掛けにプレイして嵌まり、ワンコインクリア出来るまで地道に鍛錬を積んだ思い出深い作品だ。
それと世界観を同じくし、更にフォレットも登場して他にも眼鏡分豊富で、追い討ちのようにメインキャラにリリーというダジャレめがねっ娘悪魔まで投入されては、もう私は逃げることはできない。
そんなことを思い出させてくれる新イベントだった。
そんな回想で時間を喰ったからか、軽く一度イベントステージに出撃したところで注文の品がやってきた。
「ラーメンこってりです。生ビールはすぐに、他はもう少しお待ち願います」
ということなので、ビールが到着したところで早速麺と向き合うことにする。
「ああ、これだ」
メンマ、ネギ、チャーシューというオーソドックスなラーメンの具材と中細麺。そこに強烈な個性を加える灰褐色のこってりスープ。
どろり濃厚なこってりこそが、この店の真骨頂だろう。
「う~ん、天下一品の味わいだ」
まずはレンゲで一口啜って堪能し、
「ああ、午前中ら摂取するアルコールは最高だ」
ビールもグイッと呷れば、幸福感で心が満たされる。
だが、まだ腹の虫は落ち着いていない。
箸を手に取り、麺に行こうとしたところで、
「残りのチャーハンと唐揚げです」
タイミング良く、残りのメニューがやってきた。
フライングしていたが、食事を一旦仕切り直し、揃ったメニューに目を向ける。
唐揚げは揚げたてのものが三個。ごまドレッシングの掛かった大根の千切りが添えられている。
チャーハンは非常にオーソドックスな玉子とネギと刻みチャーシューを具材としたものだ。
「改めて、いただきます」
そうして、せっかくの揚げ立ての唐揚げを一口囓る。
「ああ、素朴な味だ」
ラーメンは個性的だが、サイドメニューはとても実直というか、オーソドックスな味わいなのだ。それが、またいい。
続けてチャーハンも一口頂けば、
「チャーハンも、正直薄いぐらいだよなぁ」
という塩梅だ。
だからこそ。
「否応なく麺に絡んでくるこってりスープ……ニンニク多めで旨みも増して、とても、とてもいい」
主役のラーメンが引き立つのだ。
更に、その味わいが残っている間にチャーハンを喰えば。
「そうだ。麺の後にはこの味がちょうどいい」
となる。
「唐揚げは、唐揚げだな、うん」
まぁ、それは当然だろうが。
とはいえ、付け合わせの大根の少々のえぐみの方が、いいアクセントである。
「ここで、ビールだ」
グイッと喉に流し込めば、朝酒の背徳的な喜びが食道を通って胃の腑に落ちていく。
と、どうしても、セットメニューはそれぞれをキッチリ順次味わいたくなってしまう性分なのだが、いかんせんまどろっこしい。
そんな食い方をしていれば、腹の虫が抗議の大合唱を始めるのも当然だろう。
「ああ、もう、小難しいことは抜きだ」
欲望に従って、箸を動かす。
唐揚げを丸一個口に放り込んで咀嚼して旨みが残った状態でビール。
チャーハンをかっ込んで、そこに追い討ちでラーメン。
次の唐揚げの後に、チャーハン。
サイドメニューとの味の組み合わせを豪快に楽しみ、サイドメニューが無くなれば、スープをしっかり混ぜて麺と渾然一体となったところを食し、底に溜まった旨みを口内まで運ぶ。
「いい、休日だな」
期せずして大当たりだっためがねっ娘映画を観て、御馳走を存分に味わう。
これを幸せと言わずして何と言おうか?
気がつけば、もう僅かなスープが残るばかりの状況だが、迷わずレンゲを突き入れて最後の一滴までどろり濃厚スープを掻き出すように食す。
「あっという間だったな……」
終わりの時は訪れた。
待っている客も増えていく頃合いだろう。
全ての容器が空になった今、ここに留まる理由は、もう、ない。
最後に、水を一杯飲んで口内を落ち着け。
「ごちそうさん」
会計を済ませ、
「ありがとうございました」
丁寧な店員の言葉に見送られて店を後にした。
「腹も満たされたし、更に眼鏡分を補給してこよう」
めがねっ娘先輩がクローズアップされた劇場アニメを観るため、足をパークスシネマへと向ける。
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