第68話 大阪市東成区深江南の半ちゃんラーメン

 今日は、朝から某都道府県の某祭に参加して、昼間っから打ち上がったりしていた。二次会的に店もあいてないので『お茶をする』という名目で入ったカフェでなぜか置いていた自家製ブランデーの梅酒ロックを頼んだりもした。


 そうして仲間と別れて帰路に着いたとき。


「腹が……減った」


 そこそこ食べた気もするが、やはり、カロリーを消費していたのだ。

 きっと、そうだ。

 そうに違いない。

 決して、アルコールで満腹感がどうこうしたなんてことはない。


 そんな訳で、


「来てしまったな」


 ついつい勢いで気になっていた店まで足を伸ばしてしまっていた。


 ただでさえ疲れているのだ。店頭で突っ立って疲れとバトルを繰り広げる必要なんてない。入れないなら入れないでいい、と思っていたが。


「お、これは、すぐ入れるな」


 幸いにして時間が中途半端だったのもあり、席は空いていた。ならば、行くしかあるまい。


 店に入れば、空いている適当なカウンター席にと案内される。


「さて、何を頼むか、だが」


 豚骨醤油、味噌、塩とあるようだが、ここはやはり『特製』とされている豚骨醤油へ行こう。


「む、セットに出来るのか」


 全てのラーメンが同額で、それを色々とセットに出来るようだ。


 なら、これしかないな。


「半ちゃんラーメン、特製で」


 という訳で、定番の半チャーハンのセットへと。


 かくしてウェディングイベント最終日の『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』をプレイしようかと思いつつも、時間が読めない。


 あと、少々疲れもあるので、大人しく水を飲んで待つと、それほどかからずに注文の品がやってきた。


「これは、いい感じだ」


 定番の龍の絵の描かれた中華丼に入ったラーメンは、褐色のスープに、大ぶりのチャーシュー、ネギ、メンマ、ナルトの浮かべられたオーソドックスさ。


 チャーハンは、丸皿に軽く盛られているが、こちらも玉子、人参、ネギ、チャーシューの入ったオーソドックスな内容だ。添えられた紅ショウガも嬉しい。


「いただきます」


 早速、ラーメンを頂くとしよう。


「ああ、豚骨醤油だ……」


 しっかりとスープの味を絡め取った中細の麺を啜れば、見た目通りのオーソドックスな味わいが、飲んだ後の胃の腑に染み渡る。


「このチャーシューも存在感があるなぁ」


 半分が白く脂の旨みがしっかりと感じられる。


 そんなオーソドックスな中、少々主張の強い出汁の効いたメンマの旨みが、いいアクセントになっている。


 ここらで、チャーハンにも手を付けてみれば。


「うん、こちらもコナンくんがオープニングで踊っていたみたいでいいぞ」


 スリルとショックとサスペンスはないが、パラパラだ。勿論、紅ショウガとの相性も抜群。半と言わず、フルでもいけそうだが、まぁ、それは脂肪フラグだからこれでよかったのだ。


 後は、なんだか勢い任せだ。決して、しこたま飲んだ後だったから頭が回っていなくてよく覚えていないとか、そんなことはない。


 気がつけば、目の前には空っぽの皿とスープも枯れた丼が置いてあるだけになっていた。


 こうなれば、水を飲んで一息。


 会計を済ませ。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、帰るか」


 覚束ない足取りで、家路を辿る。


 多分、無事に帰れたはずだ。

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