第2話


「これはこれは、美しいお嬢さん、どうです?私とお茶でも…」


私、カラスは今お師匠さんと買い物のため街へと来ていたんだけど……目の離した隙にこれである。


「お師匠さん、無理だよ」


私のお師匠さんは女の人が好きらしく街に行くたび声を掛け回っている。


黙ってればそれ相応な美男なのになぁ……


「あぁっ!酷いじゃないか、カラス」


嘘。そんなにショックじゃないクセに…だって


「おっと!そこの綺麗なご婦人!」


懲りずにすぐ口説いてるじゃないですか


お師匠さんの髪は茶色いのにしなやかで長くてとても綺麗だし、聡明だし、優しいし、格好いい。


私なんてそれこそ墨を垂らしたんじゃないかってぐらい真っ黒な髪だし所々跳ねてしまっている癖っ毛だ。


私は、本来生きているべきではない人間なのかもしれない。お師匠さんといるべきではないのかもしれない。けれど……


「カラス、帰ろう」


ふと考えるために俯いていた顔を上げると透明な花が目の前に差し出されていた。


「お師匠さん……これは?」

思わず首を傾げた


「何、散々待たせてしまっちゃったからね。其処の硝子細工屋で買ってきた」


と言うと笑うお師匠さん


あぁ…全く…


「お師匠さんにはかないません」


いるべきではないのかもしれないなんて考え、お師匠さんと居たらそんなこと忘れちゃうじゃないですか。


とても、とても、あの頃じゃ考えられないほどに幸せ過ぎて…


「さぁ、帰ろっか。今日は一緒にご飯食べよう」

そう言って手を繋いでくれるお師匠さんの手が暖かくて。


私は………きっとこの日々が続くことを疑わないだろう。

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