虚烏

真白 葵

第1話


「お師匠さん!狸!」


 縁側でお茶を飲んでると隣の家からそんな声がしたと思えば狸を抱えた齢十四ぐらいの少女が垣根から出てきた。


「カラス……いつも言ってるだろう?垣根を壊すなって」


「え?……あ、ごめんなさいお師匠さん…」


しょぼんと効果音が付きそうなぐらいしょんぼりとしているのが訳あって隣の家で生活をしているカラスという名前の少女だ、ちなみにカラスとは私が名前をつけただけで本名という訳では無い。


「別にもう慣れたけどね…」


何度もカラスは垣根を壊してるから最早日常茶飯事なのかもしれない。


 あ、申し遅れました。私は環と申します、此処で一人暮らしてた変わり者です。


「お師匠さん、何処向いてるの?何か居る?」


「いえいえ、なんでもないよ。カラスが気にすることじゃないから」


「変なお師匠さん」


変な…ね…


さてさて、こんな感じで私とカラスはこんな山奥で暮らしているわけですが……前置きは此処までにしておきましょうかね。



「カラス、街に行こう」


「やった!早く行こ!」


「その前にその狸は置いていってね」


もう狸がぐったりしてるじゃないか…


「やった~お師匠さんと買い物」


全く…人の気も知らないでカラスってば…


私はため息を吐いてカラスの手を取り街へと向かった

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