エピローグ

 ハルヒの予知夢騒動が終わって初めての週末。俺は北口駅前で時計を見上げている。空は秋が近づいてきているのか少し高く澄んでいた。

 ハルヒの予知夢が無くなった翌日、三時間に及ぶファミレス会議でまとまった草案をさっそく教務主任の許へと持っていった。

 結果は、まぁ当然のように轟沈だったわけだが。しかし、不思議とハルヒはその結果に不服を申し立てることは無かった。あ、いや、訂正しておこう。不満はぶーたれていた。だけど、ひとしきり文句を言い終えた後は素直に諦めたのだ。翌日の天気は雪になると確信したんだが、今日のような青空が広がっていた。

 SOS団の面子も翌日にはいつもの姿に戻っていた。

 長門はいつもの場所でパイプ椅子に座りながら、国語の教科書4冊分くらいのハードカバー本を黙々と読んでいた。やっぱり長門には本が似合う。

 古泉もそれまでの超能力に戻ったそうで、安堵した顔を見せた。まぁ、いつものスマイルなんだが。

 当然、朝比奈さんのネコミミも消えていた。訊いてはいないが尻尾も同じように消えているんだろう。しかし、朝比奈さんのネコミミ姿は惜しい事をしたと思ってしまう。今度ハルヒをそそのかしてネコミミカチューシャでも手に入れさせよう。俺が独自に仕入れてもいい。水上に負わされた怪我も長門によって全く傷跡が残らず完治したようだった。

 これは後から聞いた話だが怪我を治す未来的道具なんかなかったそうで、更にあと少し長門の治療が遅かったら命にまで関わっていたとか。俺はそれからは女の笑顔には裏があるんだと思うように心がけたね。

 で、その朝比奈さんに大怪我を負わせた水上香奈水だが、ハルヒの状態が通常に戻っていくのを感じると戦うのを止めて去っていったそうだ。あんな危険な奴がまだどこかにいると思うと気が気じゃないが、今回のような目立った事がハルヒに起こらなければ心配の必要はないと長門が説明してくれたので、それを信じるしかない。

 ちなみにあれだけ激しい騒ぎがあったにも関わらず、パトカーの一台も来なかったのは情報統合思念体がなんらかの措置を行っていたらしい。東中は長門が宇宙人パワーで綺麗に直していた。

 時計の針が予定の時間を指し示した。

 そろそろ来てもいいんだがな。

 駅の改札を覗いて見る。すると、奥から見覚えのある黄色いリボンを付けた美少女がやってきた。

「ギリギリだったな」

「時間ピッタリっていうのよ。早く来て待ってるなら犬でも出来るわ」

 相変わらずのハルヒだった。

「他のみんなは? 今日は不思議を探しに出掛けるって話したでしょ?」

 思い出したように昨日そんな事を言い出すからだ。他の三人は用事があるとかで来れないとの連絡を俺が受けている。

「まったく、じゃああんたと二人で探索することになるわね」

「だな。まぁいいんじゃないか、デートみたいで」

「デートぉ? キョンとデートだなんて夢でも見たくなんてないわ」

 そう言って俺の背中を小突くハルヒ。

 その顔はなんだか嬉しそうに見えた。



                                    終

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涼宮ハルヒの妄想 神無月招央 @otukimi

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