第7話 あの街へ

「さて、本題だね!気持ちは落ち着いた?」


未知は座席に腰掛け、ポンポンと隣を軽く叩く。


「あ、あぁ。」


少し距離を開けつつ黙ってそこに座り向かいの窓の景色を見つめた。


先ほど通っていたところからは離れたようで、もう海は見えなくなっていた。

線路脇の木々の間から、遠くにちらほらと家が見える。

どれくらい走っているのだろうか、ここにいると時間の感覚がわからない。


「それにしても、案内って…具体的に何をするんだ?

なんていうか…どこに向かってるんだ。」


「ひとつずつ、探しに行こう。

もうすぐ…駅が見えてくると思うんだけど…。」


未知は体制を変えて窓に手をかかえる。

ガタっと大きな音と共にうなじにふわっと風を感じた。

そして、懐かしい香りーーー。


「あっ!見えてきたね!」


「え…。」


驚いて後ろを振り返ると開いた窓の向こうには、

遠い記憶だけど、よく知った景色。


9歳まで住んでいた街が広がっていた。


田舎というほどでもないが自然が多く、大きな川を挟んで西には山、東は住宅街。

川沿いを走る電車の両側の景色は全く違う場所のように見え、小さい頃は不思議な気持ちになったのを覚えている。

確かに知っている、駅のすぐ傍の山の麓には神社があって、改札を出て線路を渡ると河川敷へ降りる階段があるはずだ。


小さく見えていた駅が、どんどん近付き景色の流れがゆっくりになる。


「降りる…んだよな?」


「うん!ここ…知ってるところだよね?」


「あぁ。知ってる。」


電車はホームへと入り、停車した。

プシューという音と共にドアが開き、一歩を踏み出した。

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未知なるカンパネルラ @narusehitotsuki

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