最終話 未来のために!

 戦いが終わり俺達は四聖を拠点へと案内した。


「ほ、本当に何もしないわよね!?」

「しつこいなー、何もしないよー」


 俺達が罠にはめると思っているのだろうか。

 サリーシャは疑り深く聞いてくる。

 オトラシオはそんな彼女に何度も同じ返事を返していた。


「人間もいるのですね」

「彼等は皆、私達魔族の理解者です」


 エレナに人間兵の紹介をするフローネ。

 理解者というか、信者という気もするが黙っておこう。


「随分と大人しいわね」

「あ~ん? 子供が泣いてるの見た後に暴れるほど野蛮じゃねぇよ」


 ライカという人物は本当によくわからないな。

 戦いが好きそうな雰囲気だが、ハーマイアが泣いた時、一番最初に武器を下ろしたのが彼だった。


「残された魔族というのは、たったこれだけなのか」

「うん、ここにいる者で全てだよ」

「俺達は今までなんてことを……」

「それはお互いさまだ」


 アルトは今まで倒してきた魔族に対して懺悔する。

 四聖が倒してきた魔族の数は計り知れない。

 アズガント様も彼等によって倒された。

 でも、それをいつまでも恨んでいては前に進めないんだ。


 俺達四天王と四聖は話し合いの結果、ひとつの答えを出した。

 果たしてそれが、実現するのかはまだわからない。

 だけど、賭けてみる価値があると思った。


 俺は拠点にいる者全てを集める。

 皆滅びゆく自分達の運命に嘆いている者ばかりだ。


「皆、よく聞くが良い! 私達は残されたアズガント様のお言葉を見つけ出した!」


 オトラシオの発言に、部下達はざわめき、期待に満ちた目で俺達を見つめる。


「アズガント様はこう残されていました。自分ができるのは、残された者達を自由にすることだと。これからは私達自身で道を選びなさいと」


 続けてフローネがアズガント様のメッセージを伝えた。

 皆どうすれば良いかを相談し合う。

 しかし答えは出ないようだった。


「アズガント様は、ハーマイアのために戦われた。あの子の幸せのために。私達はその意思を継いでいくことにしたわ」


 部下達は次の戦いについて話始めた。

 俺はコルペリアルの後に続く。

 伝えよう、俺達が出した答えを!


「だが、もう戦いはおしまいだ!」


 皆が驚くが俺は構わずに話し続ける。


「俺達はハーマイアの笑顔を守る! そのためには戦いをやめなければいけない! 戦いを止め、これからは人間と共存するんだ! これは簡単なことじゃない、だけど俺達の未来を楽しいものにするには、争っている場合じゃない!」


 全員が俺達の出した答えに戸惑った。

 いきなり戦いを止めると言っても、不安や心配があるのは俺にだってわかる。

 だけど、俺達は乗り越えていかないとダメなんだ!


「……皆は私の家族」


 俺の横にぴったりとくっついていたハーマイアが話し始めた。


「……私は皆が傷つく姿を、これ以上見たくない。大切な人達を失いたくない。それは人間も同じだと思う。皆家族なんだよ」


 皆、静まりお互いの顔を見合う。

 大切な家族の顔を。


「ハーマイアの言う通り俺達は家族だ! 種族なんて関係なく俺達は同じ時間を過ごしてきた! 俺達だからこそできるんだ! 確かに俺達は滅びる運命かもしれない、だからこそ嘆いている場合じゃない。後悔しないように、皆が笑って暮らせる未来を作るんだ! そのためには皆の力が必要だ! 今一度俺達に力を貸してくれ!」


 ざわざわと全員が話し合う。

 その中からポッコとグルドンが前に出てきた。


「それが、ガスト様の決めた道ならば、このポッコ最後までお供させていただきます!」

「右に同じだ。俺達は最初から世界の平和のために戦う勇者。平和に繋がる道ならば断わる理由がない! そうだろうお前達!」


 人間兵達が腕を上げて賛同してくれた。

 この光景を見て、部下達全員が吹っ切れたようだった。

 誰もが残りの命を楽しもうと意気込む。


「人間への橋渡しは俺達に任せろ。必ず望む未来に変えてみせる」


 アルトの言葉に俺達四天王は礼を言う。

 すると、ハーマイアは俺達を見て聞いてきた。


「……新しい家族?」

「ああ、新しい家族だ。そしてこれからもっともっと増えていくぞー!」


 俺がそう言うと、ハーマイアは嬉しそうに笑った。

 アズガント様が託した光。

 選ぶ道は違うけど、俺もこの光を守っていこう!





 戦いが終わって五年が経過した。

 四聖や人間兵の援助のおかげもあって、俺達魔族と人間は共存の道を歩みだせた。

 今では大陸のあちこちの街で魔族と人間が幸せに暮らしている。


 四天王の皆はそれぞれ大陸で活躍していた。


 コルペリアルは人間同士が争っているのを止めているという噂だ。

 フローネはたくさんの信者と共に、各街を回って布教活動を行っているらしい。

 オトラシオは魔族を代表して、忙しい日々を送っているとのことだ。


 俺はというと、ハーマイアと共に西の大陸を旅している。


「……この大陸でも家族増えるかな?」

「ああ、絶対に増えるさ」


 俺とハーマイアは手をつないで、真っ直ぐ伸びる道を歩いていく。

 さてさて、次はどんな家族ができるのかな?

 俺達は心を躍らせながら、未来へと進んでいった。

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