第七十五話 決戦!

 広い部屋の中で、俺達魔王軍四天王と勇者四聖は睨み合った。


「魔王軍四天王……!」

「久しぶりだね、四聖アルト。あの時はお世話になったよ」


 オトラシオが殺気を放つ。

 普段ニコニコしている分怖いな。


「ははっ、解けねえと思ってたが、封印解けてるじゃねーの」

「笑い事じゃないでしょ! あんたのせいだからね!」


 四聖ライカがからからと笑い四聖サリーシャが怒鳴る。

 フローネはそんな二人に微笑みかけて話しかける。


「ふふ、前回は不覚をとりましたが、今回は違いますよ」

「今回も結果は同じです。諦めなさい」


 四聖エレナはフローネの続きそう言い放った。


「ふん、さっさと始めるわよ。私達は忙しいの」

「それでは決着をつけよう……魔王軍四天王!」


 コルペリアルの言葉にアルトが答える。

 皆がいるから良いけど、やっぱり怖いぞ。


「行くぞ!」


 アルトが叫ぶと全員が動き出した。

 先制攻撃を仕掛けたのはやはりオトラシオだ。

 エレナを狙って飛ぶ彼女の前にアルトが邪魔に入る。


「簡単にはさせはしないさ!」

「ちっ!」


 素早く飛び回り攻撃を仕掛けるオトラシオ。

 その攻撃を全て防ぎきる四聖アルト。

 す、すげぇ!

 近づくこともできないぞ、あれ!


「貴方がガストに、居場所を教えてくれたらしいですね。お礼を言っておきます」

「また美人に会えて嬉しいぜ。そんで、また倒せるのがな!」


 フローネとライカも交戦を開始する。

 ライカが笑いながらフローネを攻撃する。

 フローネは魔法を駆使して踊るように避ける。

 こっちはこっちですごい!

 あの四聖ライカの攻撃を避けてるよ!


「一度封印したからと言って調子に乗らないことね」

「四天王ってのは相変わらずしぶといわね!」


 コルペリアルとサリーシャが剣を交える。

 激しくぶつかり合う音が部屋全体に響き渡った。


「……ガスト」

「大丈夫だ、俺達は負けない!」


 俺は残ったエレナをじっと睨む。

 彼女だけ直接戦闘に参加しないのは、きっと仲間を強くする魔法か何かを使っているからだ。

 エレナが杖を振り上げるタイミングで俺は突っ込んだ。


「させるかぁぁぁぁっ!」

「不死のガスト!」


 俺は闇の魔法を使用する。

 黒い刃が地面を削ってエレナに向かっていく。

 彼女は杖を刃に向けると光の魔法を放った。


 キィン!


 甲高い音と共にお互いの魔法が砕け散る。

 くそ、一番弱そうと思ったけど、実は強いのかもしれない!

 でも止まらないぞ、このまま押し切ってやる!


 次の魔法を発動させようとするが、急に目の前にアルト現れ剣を振るう、俺は魔法を中断し後ろに飛び退いた。


「うわぁ!?」

「外れたか!」


 アルトの重い一撃を避けた俺は、慌てて距離を取る。

 あのオトラシオの相手をしていて他にも気が回るなんて!


「どこを見ている、四聖アルト!」


 すぐにオトラシオが飛んできて、目の前で嵐のような攻防が始まった。

 その奥でエレナが魔法を使用している。

 視線の先には、背中を向けているコルペリアルの姿があった。


 俺はエレナを攻撃することを諦めて、コルペリアルの元へ走る。

 エレナの杖から光の矢が射出された。

 くそ、間に合え!

 コルペリアルの背後に立って魔力を解放する。


 防げる、あの攻撃を防いでみせる!

 光の矢が腕や脚に刺さる。

 魔力解放を使っていても、四聖エレナの魔法は俺の体を貫く。


「痛ぇぇぇぇ!」

「ガスト! 助かったわ!」


 コルペリアルが振り向き様に氷の魔法を使用する。

 地面から生える氷の棘がエレナに向かって伸びた。

 しかしライカがエレナの前に現れて、コルペリアルの魔法を砕く。


「はっはー!」

「チッ!」


 ライカが笑いコルペリアルが舌打ちする。


「もらった!」

「えっ?」


 しまった、サリーシャを忘れていた!

 彼女の剣は俺を捉えて振り下ろされようとしていた。

 そこに風の魔法が飛んできて彼女の剣を弾いた。


「そう簡単にはさせませんよ」

「フローネ!」


 た、助かった!

 フローネが魔法を使ってくれなかったら、俺は今頃真っ二つだった!


 戦いは拮抗していた。

 誰もが一歩も譲らずに戦っている。

 皆もいるし、俺だって強くなったんだ。

 今度こそ、今度こそ勝ってみせるぞ!


「四聖エレナが邪魔ね……ガストここは任せたわ」

「おう!」


 俺が行くよりも、コルペリアルが狙った方が、倒せる可能性は高いだろう。

 彼女は地面を蹴って駆けていく。


「次は俺が相手だ! 四聖サリーシャ!」

「またあんたなの!? いい加減にしてよね!」


 いい加減にしてほしいのはこっちの方だ!

 俺とサリーシャはお互いに構えを取って対峙する。


「そういえば、聞きたいことがあったわ」


 随分前にも質問された気がする。

 一体なんだろうか?


「前にもそんなことを言っていたな」

「二年前のことを覚えてるなんて、結構律儀じゃない」


 そうか、彼女にとっては二年前なのか。

 俺にとっては数ヶ月前だが。


「あの時の質問はもう解決したわ。あんた達のボス、アズガントを倒してね!」


 アズガント様の名前を出されてムカっとした!


「ふがー!」


 俺はサリーシャに向かい闇の魔法を発動させる。

 二本の黒い刃が彼女を切り刻もうとするが、この数ヶ月間で向こうも成長しているらしい。

 俺の魔法を避けて斬りこんできた。


「まぁいいわ。ここであんた達を倒してから聞くから!」

「俺達は負けねぇぇぇぇ!」


 戦いは続く。

 俺達も四聖もお互いに退かずに戦い続けた。

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