第七十三話 アズガント様のいた場所!

 一週間が経過した。

 魔王城を守っていた部下達も、全て俺の拠点に移して、彼等に落ち着く時間を与えている。

 その間にも俺達四天王は、ハーマイアを連れてアズガント様のメッセージを探した。

 各地へ飛び、アズガント様が過去に訪れた場所をいくつか調べたが、メッセージはまだ見つけられずにいる。


「一体どこにあるんだろうなー」

「本当にあるのかしら?」

「ないと困るぞ」


 コルペリアルの担当地域チラの、フォニクスを調べているが、アズガント様のメッセージはない。

 本当にないというオチだとどうしよう。


「そっちはどうですか、コルペリアル、ガスト」

「こっちにもないなー、そっちはどうだったんだ?」

「ありませんでした」

「私の調べたところもなかったよー」


 フローネもオトラシオも見つけられなかったようだ。

 皆で深いため息をつく。

 フォニクスにもアズガント様は訪れているはずだけど、ここに残したわけじゃないのかー。


「せめて手がかりがあれば良いんだけどねー」

「アズガント様が何かをしているところなんて、誰も見てないわよ」


 ん?

 オトラシオとコルペリアルの会話に、何か引っかかるものを感じた。


「今なんて言った?」

「え? アズガント様が何かしているところなんて誰も見てない……って、何か思い当たる節があるの?」


 むむむ、何か引っかかるぞ。

 思い出せ、どこかでアズガント様を見た記憶がある!

 コルペリアルの顔をじっと覗き込む。


「な、なによ」


 コルペリアルが後退るが、今はそこを気にしている場合じゃないな。

 どこだっけ、確かに見ているぞ。

 あれは確かコルペリアルを助ける前だった気がする。


 エルフの森から帰ってきた後のことを思い出してみる。

 四天王が封印されたと聞いて、拠点を見に行った。

 その後残留思念を追って四聖の情報を集めたんだ。


 残留思念……あ!


「思い出した!」

「何をですか、ガスト?」

「ラサトだ。ラサトの奥で、アズガント様が何かをしているのを見た!」


 皆の表情が真剣なものになる。


「それは、いつですか?」

「直接見たわけじゃない、コルペリアルの情報を調べてる時に、残留思念でたまたま見たんだ」


 あの時は、古代の魔法の封印をしているかと思ったけど、もしかするとメッセージを残していたのかもしれない!


「行こう、ラサトへ」


 俺達はフォニクスの調査を終了させて、転送魔法でラサトへと移動した。


 ラサトを守らせていたコルペリアルの部下達も今はいない。

 風の音だけが聞こえるラサトは古代遺跡らしく神秘的に思えた。

 中に入ろうとしたところで、オトラシオとフローネが立ち止まる。


「どうした、入らないの?」

「これを見てください」


 彼女が指差したところに足跡があった。

 足跡はラサトの中へと続いている。

 それがどうかしたんだろうか?


「まだ新しいわね」

「中に勇者がいるかもしれません」

「フローネ、コルペリアル、ガスト、いつでも戦えるように準備を。ハーマイアは後ろに隠れてて」

「……うん」


 気配を殺して中に入る。

 入口には誰もいないようだ。

 安全を確認すると、ハーマイアを呼んで奥へ進んでいく。


 螺旋階段まで辿り着くと、上から下を覗き見る。

 ここにも人影はない。


「私はハーマイアと一緒に先に降りてるね。おいでハーマイア」


 オトラシオはハーマイアを抱きしめると、翼を広げて下へ降りて行った。

 翼があると便利で良いなー。

 俺とフローネとコルペリアルは、慎重に螺旋階段を降りていく。


「前にここで落ちたから不安でしかたない」

「それはあんたがバカだからでしょ」

「ふふ、落ちそうになったら私が風の魔法で浮かせます」


 螺旋階段さえ気を付ければ、後は簡単に奥まで辿り着ける。

 今回は何事もなく無事に下まで降りれた。

 俺だって成長している。

 そう何度も同じ手は食わないのである!


 俺達はいつでも戦えるように、心の準備をして最深部を目指した。

 勇者の姿なんてどこにもないなー。

 もう帰った後なのかもしれない。


 最深部の広い部屋に到着し、アズガント様がいた場所へ駆け寄る。

 前に古代文字を調べた時は何もなかったけど。


「ここでアズガント様は何かをしていたんだ」

「じゃあ、この辺りを徹底的に探そー」


 オトラシオはそう言うと天井へと飛んで行く。

 そこから探すの!?

 いや、そうだよな、天井にあるかもしれないもんなー。


「……ここアズガントがいたの?」

「ああ、何をしていたかわからないけどね」

「……ここにあるよ」


 ハーマイアは何かを確信したようにそう言った。

 どうして彼女がそう思ったのかは、聞かなかったが、あると言っているんだ。

 よし、必ず見つけるぞ。

 え、ここ?


 彼女の視線を追っていく。

 特に何もないただの床だ。

 古代文字が刻まれているわけでもない普通の床。

 ここにあるってどういうことだろう。


 試しにその床を触ってみる。

 僅かだが魔力の流れを感じた。

 俺は床の一部に魔力を流し込む。

 しかし、文字が現れることはなかった。


「皆ちょっと来てくれ! ハーマイアがそれらしい場所を見つけた」


 遺跡の壁や天井を調べていた皆が集まってくる。

 全員が揃うと、俺はハーマイアの見つけた床の一部を指差した。

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