第十五話 新しい仲間達!

「美味い!」


 元勇者ユーリとロンダの作った料理は、思いのほか美味い。

 勇者というのは料理も上手くないといけないのかな。

 そう思えるくらい美味い。


 コルペリアルも食事に誘えば良かった。

 誘っても断られる可能性大だけど。


「お口に合って良かった……」


 ユーリがほっとしている。

 別に不味くても頭の刑に処すわけじゃないのに。

 ロンダはまだ恐怖が抜けきってないのだろう。

 さっきからずっと黙ったままだ。


「君達も突っ立ってないで一緒に食べれば良い」

「え? でも私達はメイドで……」

「一人で食べるのは寂しいからね」


 ユーリとロンダはお互いを見合って頷いた。

 それから自分達の分も用意して席に着く。


「失礼します」

「もぐもぐ、どうぞ」


 長いテーブルで俺達は一緒に飯を食う。


「もぐもぐ、二人はどうして勇者になったんだ?」


 俺の突然の質問に二人は驚く。

 何か変なことを聞いたかな?


 ユーリが考えている間に、ロンダが吐き捨てるように答える。


「貴方達魔族を滅ぼすためよ」


 あ、やっぱりそうなのか。

 ユーリはどうなんだろう?


「私は、よくわかりません。ただ魔族は悪い存在だって、幼い頃から聞かされて育ちました」

「つまりなんとなく魔族と戦ってたわけか。酷い話だ」


 俺は四角くカットされた肉を頬張る。

 もぐもぐ、本当に美味いなぁ。


「魔族はどうして私達と戦うのですか?」

「生き残るため。じゃないかなぁ」

「生き残るため……ですか」


 ユーリは何かを考えように食事を口に運ぶ。

 ロンダも黙って食事を続けている。


 正直、答えは俺にもわからなかった。

 俺達はなんで戦ってるんだろう?





 食事が終わった後、二人に洗い物を頼んで、俺は再び部下達の元へ向かった。日が暮れて辺りはすっかり暗くなっている。

 部下達も、もう訓練を終えて食事をしている頃だ。

 拠点が館じゃなくもっと大きな建物なら、皆で食事ができる部屋を作るのになぁ。


 暗い夜道を進んでいると、焚き火の明かりが見えてきた。

 俺は明かりを目印に進んでいく。


 その時、足に何かが引っかかった。


 からんからん。


 近くで木を打つ音が聞こえた。

 なんだなんだ?


「かかったぞ! 殺れっ!」

「うわぁ!?」


 周りから一斉に、影が飛び出してきて、俺に攻撃を仕掛けてきた。

 俺は一人目の攻撃を右に避け、たら後ろから棒か何かで殴られた。

 頭がぐわんぐわんする!

 そこからはもう袋叩きだ!


「攻撃止め!」


 合図の後、ぴたりと攻撃が止む。

 痛い痛い、一体何なんだ?

 まだ人間はここを発見してないだろうし、部下達の仕業なのはわかるが。


「こ、これはガスト様だー」

「人間が攻めてきたのかと思いましたー」


 あ、やっぱりわざとなんだね!?

 セリフが棒読みだよ!

 やっぱり俺のこと殺す気満々だね君達!


 それはそうと、グルドンはどこだろうか?

 彼は部下達と上手くできてるかな?


「グルドンはどこに?」

「グルドン殿ならこちらに」


 部下達が向かったのは明かりのあるところだった。

 そこでグルドンは、部下達が作ったと思われる料理を食べながら、何やら一生懸命話し合っている。

 彼は俺を見ると立ち上がって近づいてきた。


「上手くやってるみたいだな」

「ガスト殿、その傷はどうしたんだ?」

「そこで部下に殴られたんだ。それより何の話をしていたんだ?」


 よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、部下とグルドンの表情が明るくなった。


「今俺達は、フローネ様のことを話い合っていたんだ!」


 うわぁ、もう染まってるよこの人。

 フローネ、罪な女の子だなぁ。


「フローネのことも良いけど、ちゃんと部下達の訓練をしてね」

「わかっているよ、任せておけ!」


 彼はその逞しい胸をドンと叩いた。

 人間の戦い方がわかれば部下達も、強くなってくれるだろう。

 ただその矛先が、俺の方に向く可能性が高いけどね!


「しかし」


 グルドンは突然真面目な顔をして言う。


「魔族とこんなに気が合うとは思わなかった」


 彼等と部下達が上手くやっていけるようにするのが、俺の仕事だ。動機は不純とは言え初日から仲良くやってくれているのは非常に助かる。


「ユーリとロンダにも仲良くやってもらわないとなぁ。そのためにはグルドン、君の力が必要になるだろう。よろしく頼むぞ」

「ああ」

「それじゃあ、俺は屋敷に戻るよ」


 部下達とグルドンに背を向けて歩き出す。

 この調子なら、俺に課せられた任務は成功するような気がする。

 後は、彼等が人間と戦えるかどうか、だ。


 と、考えて歩いていると、足に何かが引っかかった。


 からんからん。


「またかかったぞ! 殺れっ!」

「うわぁぁぁぁっ!?」


 部下達が棒を持って襲い掛かってくる。

 彼等から必死になって逃げるが、彼等はどこまでも追いかけてきた。


 待って! 待って!

 俺ってわかってるよね!?

 なんで追いかけてくるの!?


 俺の本当の敵は誰なんだろう?

 ユーリは俺達が悪だからと言った。

 グルドンは俺達魔族と気が合うと思わなかったと言った。


 俺達は何と戦っているんだろうと。

 敵は本当に人間なんだろうか?

 よくわからない。

 けど、四天王としてやるべきことはやろう。


 部下達に追いかけられながら、そんなことを考えていた。

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