第十三話 元勇者達との接触!

 部下達は、屋敷から少し離れたところに住処を作っていた。

 最初は拠点の建物が、ただの館だったことに不満を覚えたけど、部下の配置等を考えると、この山全体が俺の拠点ということになる。


 そう考えるとすごい拠点だ!

 部下の配置考えたのフローネだけどね!


 山と言う自然が作りだしたダンジョンを進んで、部下の元へ辿り着く。

 これ結構大変だなぁ。


「ガスト様!」

「ポッコ、アニフォレッド。どうだいこの拠点は」

「はい、素晴らしいところだと思います!」


 新米部下の皆は概ね満足満足しているようだった。


「魔王城での楽な仕事が……」

「ここ不便過ぎだよな」

「ああ……フローネ様の顔が見れないなんて最悪だ」


 君達は相変わらず素直だね!

 せっかくの拠点なんだから、もうちょっと喜んで!


 ここに来たのは、部下達の様子を見るほかにもう一つ用事があった。


「人間達はどこに?」

「はっ、こちらへどうぞ」


 例の人間と共に行動するという試験の、人間達を引き取りに来たのだ。

 ポッコ達の後をついて行き、洞窟の奥へ入っていくと、手足を縄で縛られた人間達がいた。


「あれがそうです」

「ありがとう」


 俺はゆっくりと人間達に近づいて行く。

 いきなり魔法使ってきたりしないよね?


「今日から君達と一緒に過ごすことになる。四天王が一人、ネクロマンサー不死のガストだ」

「不死のガスト……! あの時は随分と世話になったな」


 大柄な男が俺を睨みながら答える。

 よく見ると見覚えのある顔だ。

 あ、思い出した。ランガード洞穴で戦った男だ。


 残りの二人を女を見てみると、やはり見覚えのある顔だ。


「ひっ!? 首なしゾンビ!」


 こっちの女の子は俺が頭を渡した人間だな。


「あの時の屈辱は忘れない!」


 こっちは後頭部に頭をぶちかました人間だ。


「まぁ、そう言わずに。今日から一緒に暮らしていくんだから。とりあえず名乗っていただこう。俺はまだ君達の名前を知らないからね」

「グルドンだ……俺は必ず貴様を殺してやるからな!」

「貴様! 主であるガスト様になんという言葉を!」

「良いよ良いよ、落ち着くんだポッコ」


 男の名前はグルドンというらしい。

 うん、大柄な体は確かにグルドンと言った感じがする。

 次に怯えている女の子の名前を聞く。


「ユーリ……お願い、首はもうやめて……」

「安心しろ、そんなに簡単に首が取れたら俺が困る」


 あれがよほどトラウマになっているらしい。

 反抗したら首を渡そう。

 最後の一人の名前も聞く。


「ロンダよ……あの時は油断しただけ、今度は負けない」

「俺を殺すことはできない。諦めろ」


 自己紹介が終わったところで、彼等には早速働いてもらうわけだが、確か彼等に専用の装備を用意してあるはずだ。それに着替えてもらおう。


「彼等の縄を解いてやってくれ」

「はっ」


 ポッコとアニフォレッドが、彼等の縄を解くと、壁を背にして身構える。


「着替えてもらうだけだ。安心してくれ。ポッコ彼等の装備を」

「はっ」


 ポッコが近くに置かれていた木箱から、装備の入った袋を取り出して、彼等に渡していく。


「さぁ、それに着替えてくれ」

「あの……み、見ないで……」

「あ、はい。ごめんなさい」


 俺は彼等に背を向けてしばらく待った。

 着替え終わったのを確認すると、彼等の方へ振り向く。


 グルドンはいかにも魔族が装備してそうな厳つい鎧だ。

 彼は悔しそうな表情をしているが、諦めてもらうしかない。

 女性二人は……メイド服を着ていた。

 何故?


「ポッコ、二人の服装がメイド服にしか見えないんだけど」

「はっ、あれがあの人間達に用意された装備です!」


 装備というのかなあれは?


「誰が用意したの、あれ?」

「はい、オトラシオ様です!」


 頭の中でオトラシオの笑顔が浮かぶ。

 オトラシオならメイド服を用意しても不思議はないな。


「じゃあ、三人共ついてきてもらおう」


 三人はポッコとアニフォレッドに挟まれる形で歩き出す。

 しかし、女性陣のこの服では戦闘はできないだろうし、館で働いてもらうしかないなぁ。


「とりあえず、ユーリとロンダの二人には館で働いてもらう。メイド服だし」

「わ、わかりました……」

「……わかったわ」


 グルドンには館の守りを担当してもらうか。

 いつ裏切る危険があるかわからないが、それを調べるのもアズガント様の、お考えだと思うし。


 外に出ると部下達が待っていた。

 部下達見てグルドンがこう言った。


「いつか必ずお前達のボス……この不死のガストを殺してやるからな!」

「貴様っ!」


 ポッコ達が怒りグルドンに剣を突きつけるが……。


「何、それならぜひ手伝ってやるぞ!」

「ガスト様を仕留めて俺が四天王に!」

「ガスト様がいる限り、フローネさまの部署にいけないなら手伝うぞ!」


 ちょっと待って!

 君達誰の味方なの!?

 グルドンはわかるよ、人間だからね?

 でも君達違うでしょ!?


 グルドンは俺の部下達の言葉を聞いて唖然とする。


「お前とは気が合いそうだ。よろしくな新入り!」

「いつかガスト様を殺すぞ!」

「殺す時は一緒、俺達は仲間だ!」


 これなら仲良くやってくれそうだなぁ。

 仲良く俺を殺しにかかってくるだろう彼等は。

 違うからね!

 敵は俺じゃないからね!?


 興奮する先輩部下達を新米部下がなだめる。

 うん、これから大変な日々になりそうだなぁ。

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