5「昼過ぎ 公衆電話」

「これで良かったんでしょうか」

『まあ他に手はないんだし、ミハエルの推理も間違っているとは思えないわ。状況証拠を取ってみてもね』

「そうだとは思いますが、サトミさんに関係あるのはそちらではないのでは? わざわざ確認のために日本へ来るのでしょう?」

『ミハエル』

「何でしょう?」

『貴方が私に意見をすることは禁じられているわ、関係をわきまえて頂戴』

「承知しています」

『とはいえ貴方の言いたいことは大筋認めるわよ。貴方も自分の仕事しっかりとね』

「私の仕事ですか、正直気が進みませんね」

『ミハエルは過保護すぎるのよ』

「それは貴女も同じでしょう。彼女が望まなければそれでいいと言ったのは貴女です」

『どうにもこうにも面白くない状況なのよ、今は。それを打開するための手段は何としても欲しい。それが使節としての見解』

「彼女を駒として使う気ですか」

『駒よ、彼女は』

「はっきりと言いますね」

『もちろんよ、私も貴方も彼女もね、上にとっては単なる駒に過ぎないわ』

「私個人としては聞きたくない言葉ですね」

『私だって個人としては言いたくない言葉だわ。だけどこれは事実、真実でなくても変えようのない事実なのよ』

「シュヴァンデン騎士団の名に賭けて、可能な限り意に添うようにしましょう」

『お願いね、出来れば彼女を悲しませないように』

「また難しい注文ですね」

『だから貴方に頼んでいるのよ、ミハエル』

「了解、全ての力は天のために」

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