最終話 防人と未来と防人の託したもの

輪廻 -ミドリ ノ ホシ‐

 ある惑星に、天まで届きそうな〝塔〟があった。


 焦げたような黒色のその塔は、地下深くに埋没する膨大な構造体の一部だった。

 その塔の、地上に面する一部が、ゆっくりとひらいた。

 中から姿を現したのは、防護服にフルフェイスのヘルメットを被った人物だった。

 その人物は、おっかなびっくりといった様子で大地へと一歩を踏み出す。


 一歩。

 二歩。

 そのままどんどんと進んでいく。


 随分と遠くまで歩いて、延々と続く足跡の先、丘のようになっている部分に立つと、その人物は、ヘルメットに手をかけた。


 少しだけの躊躇い。

 そして決意。


 一息に、ヘルメットを脱ぎ去ると。

 長い、とても長い髪が、ふんわりと広がり、その背に落ちた。


 その人物は、目を閉じる。

 ゆっくりと胸にいっぱいに大気を吸い込み、そうして大きく、口から吐き出す。



 その――小麦色の肌に、そばかすの浮かんだの口元に、小さな笑みが刻まれた。



 彼女は防護服を脱ぎ捨てる。

 簡素な衣装は、胸元が大きく開いていて。

 その左胸では、何か機械が鼓動を刻んでいるようだった。

 背嚢バックパックから何か特徴的なを引っ張り出しながら、少女はすべてを見据える。

 彼女の眼前に広がるのは、緑あふれる世界。

 澄み切った大気に、静謐をたたえる青い湖。植物が生い茂り、小鳥たちがさえずる世界。

 美しい、美しい惑星ほしの姿が、そこにあった。



 頭に中折れ帽子を乗っけた少女は、両手をあげて、くるくると回転する。

 陽光を浴びて、輝かんばかりに美しく、楽しげに。

 彼女は、はち切れそうな笑顔で、こう声をあげるのだった。


























「約束、守ってくれてありがとうね――ミロク!」



























哀憫リノベイト 

‐Century savior legend MAITREYA . - 終

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哀憫リノベイト 雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞 @aoi-ringo

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