#X 「空虚な空腹の空想空間」……だって
「初めまして、"パーガトリ―"と申します。以降お見知りおきを……そしてようこそ、我が体内に」
振り返った僕の視線の先で、スーツ姿が恭しくお辞儀した。黒塗りの顔に爛々と光る赤い目……
"それ"が顔を上げて口元に赤い線……多分、口なのだろう……をはしらせた。歪んだ笑顔にも似た赤い線が引かれるや、僕の体は違和感を訴えた。まるでこの空間そのものに自分が吸収されているような、そんな違和感。
「挨拶と同時に飲み込むなんて、低級霊だってもっと段階を踏むもんだよ」
「いや失敬失敬、実に"私好み"のシチュエーションだったもので。同胞よ、突然の無礼をお許しください」
「同胞か……素直に僕を"
警戒心を闖入者に向けながら、一歩引く。相手の術中、おそらく
「……なるほど、伊達にUGNの飼い犬としてご活躍されているわけではないようだ。ですが――」
―――――――――――――――
ダメージ判定 1d10→1
―――――――――――――――
"それ"は表情の仮面に口紅を塗るように……口角らしき赤を耳元まで伸ばし、にやりと笑った。同時に、左右から影が僕に迫ってくる。辛うじて――辛うじて、数歩距離を取り、その毒牙を間一髪で掠めることに成功した。視界を覆うように被さってきた影は、ノイズで乱れた虚像のようで。姿は、まるで――。
「血走った目の熊? 犬に追われるって皮肉かな」
「口の方もうまく回るようですね。ですが……二度目はないですよ?」
飼い主によく似た、黒塗りに赤いインクを落としたような熊が、その言葉に合わせて低く唸った。熊は不快な砂嵐で存在を揺らめかせながら、徐々に姿を変えていく……。
「そうだね、二度目は――ない」
その姿から目をそらし、僕は目を閉じて深呼吸を一つ。心の目がどうのとか、"イージス"が言っていた気がする。試してみるのも、悪くない――。
――――――――――――――――――――――――――――――――
知覚判定 2dx@10→9(成功)
成功のため情報公開。この空間の発生源は「通話状態の携帯電話」
――――――――――――――――――――――――――――――――
試してみたけれど、結局心の目とかいうのはわからなかった。ただ、聞きなれた"イージス"の声が消えた今、沈黙しているはずの携帯電話。その機械からは……ざわざわと雑踏のような人の声が聞こえている。それに手を伸ばした僕の行動に、"パーガトリ―"は双眸を細めた。携帯電話の画面には「彼方」と表示されている。
「……本当、恐れ入りますよ。今回はここで失礼いたしましょう」
言いながら、再び恭しく頭を下げる"それ"。目の隅では、熊が体を細くし、羽を生やしながら飛びかかってくる――。
―――――――――――――――
ダメージ判定 1d10→1
―――――――――――――――
「……言いながら、手は止めないんだね」
猛禽のように姿を変えた黒が僕の体に触れる直前、僕の携帯は「彼方」との通信を切断した。同時に、襲いかからんとしていた影は、まるで霧のように霧消した。小さく溜め息。正直……一人では分が悪い相手だ。そんな気持ちを知ってか知らずか、携帯電話から聞きなれたのんきな声が響いてきた。
『――お、帰ってきたかブラザー。長いトイレだったな?』
けたけたと笑う”イージス”。なんだろう、どっと疲れた。
「……あー、ただいま。死にそうになってたよ」
『おー、まあ、帰ったら聞かせてくれよ』
本当、どこまでものんきな声。その声が、ほんのちょっとだけ……僕の守るべき”日常”なんだろうなと、なんとなく思えた。
―――――――――以下、
→トリガーシーン
1、開始時に1d3を振り、出たターン数が今回のシーンのターンになる。
2、指定ターン中に"30ダメージを与える"か"知覚判定で7以上を出す"、或いは指定ターンの経過でシーンが終了する。
3、指定ターンが3の場合、特殊演出が発生。
今回はツイッターのアンケートの結果
1d3→1
で1ターンになったため、せっかくならと知覚による情報も追加。
この情報と一部演出で、"パーガトリ―"の正体に気づいた方ももしかしたらおられるかも?
次回 → 情報収集フェイズ 3
1、RBの元になっている「コトリバコ」の噂を調べる(情報:噂話)
2、RB:"コトリバコ"についての情報を調べる(情報:裏社会、情報:UGN)
3、雛山ことり(犯行の目撃者)にコンタクトを取る
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます