第14話 邂逅
(遂に最後のダンスとなり、自身の相手の元に各々距離を詰める)
エルローズ:「(収穫はちょっとはあったかな…。それにしても、男性側にも花奴隷が居るのなら、やっぱり神秘の帚木も此処に………)」(最後の相手と手を取り合う)
(瞬間、身体を貫くような衝撃に見舞われる)「え………?!」(呆然と相手を見つめる)
ベルクザータ:(エルローズと同じように驚愕に目を見開いている)
エルローズ:「(なんでだろう…。理屈も根拠もないけど…、わかる。この人が私の対の帚木だ……ッ!)」
ベルクザータ:(口元に弧を描き、曲が始まると同時にエルローズの身体を引いて踊りだす)「………初めまして、かな。ボクの対。まさかこんな物語のような出会いをするとは思っていなかったよ」
エルローズ:「………こちらこそ、初めまして。別に物語のような出会いを望んだことは一度もありませんから」
ベルクザータ:(クツクツと喉奥で笑い)「折角の運命や宿命が決めてくれた出会いなのに、少し酷いなぁ」
エルローズ:「……根が正直なので。(何だろう…。この人は私の対、なのだろうけれど………、どうして、か…、違和感が拭えない。この違和感は何だろう?)」
ベルクザータ:「それでは気持ちにお答えして、本音で話そうか。…殺されるか、閉じ込められるか、どちらがいい…?」
エルローズ:(氷のような悪寒を全身に感じながら、それでも震える声で)「………どちらも嫌に決まっているでしょう」(ベルクザータを睨みつける)
ベルクザータ:(愉快そうにエルローズを見つめ)「けれど、どちらかしか、お互いに道はない」
エルローズ:(一曲分が終わり、照明が少し薄暗くなるタイミングでベルクザータの襟首を掴んで真正面に瞳がぶつかる)「…私はね、決められたレールが大嫌いなの。運命とか宿命何てクソ喰らえだとも思ってる。理を壊そうとしているのに、そんなものに左右されて楽しい?」(すぐに掴んでいた手を離す)
ベルクザータ:(呆けた表情になるものの、一転して艶やかな笑みを浮かべ、エルローズの身体を引いて踊りだす)「……君は面白い。確かに一理ある」(二曲目が終わろうとした時、急にエルローズの身体を強く引き寄せる)
(照明が全て落ち、会場全体が暗闇に包まれた直後、大きなものが砕ける音が響き、人々がざわめきだす)
エルローズ:「(なに………ッ?!)」(照明の明かりが付き、音のしたほうに目を向け、息を呑む)
(立派なシャンデリアが三つも同時に砕け落ち、下敷きになった数人が血塗れで息絶えている。辺りに悲鳴が響き、それが会場全体に伝染していく)
エルローズ:(口元に手をあて、必死に声を押し殺しながら、ベルクザータに向き直る)
ベルクザータ:(エルローズの視線を受けて朗らかに笑いながら)「ああ、やっぱりボクの対は気付いたかな? そう、あれはボクの仕業。勿論、殺す人間は選別しているよ」
エルローズ:(目を極限まで見開き、ベルクザータを凝視する)「(………やっと、わかった。違和感の正体…。この人、には………、ブレスさんから聞いていたような人間らしい帚木の欠片がまるでないんだ……ッッ!)」
ベルクザータ:「…後もう一つも落ちる頃合いかな」(上を軽く見上げながら)
エルローズ:(ベルクザータの言葉に瞬時に天井を見上げ、直後、シャンデリアが落下する)
(落下しそうになったシャンデリアは、人々の頭上に落ちる前に、粉のように掻き消える)
エルローズ:(シャンデリアが粉のように消えた場所を見て、呆然とする)
ベルクザータ:「まあ、こうなるとは思ってたんだけどね。勇者か聖女が力を使ったんだろう。………自分達の力がどうやって得られているのか知った時、彼らはどんな顔をするのかな…?」(愉悦を含んだ声で)
エルローズ:(ベルクザータに言いしれない恐怖を感じつつも、テオのことを思い出し、辺りを見回してベルクザータから離れようとする)
ベルクザータ:(離れようともがくエルローズを片腕で抑え)「…どうせなら、勇者や聖女にお土産を置いていこうか」(エルローズの顎を掴み、上を向かせ、エルローズの唇に自身の唇をおしつける)
エルローズ:「んうッ………!」(あまりに突拍子もないベルクザータの行動に身体が固まる)
ベルクザータ:(ゆっくりとエルローズとの口づけをほどくと、ある一点に向けて鋭い視線を投げる)
(突如、周囲にまた別の悲鳴が起こる)
エルローズ:「え………?(神聖な花の、匂いが一つ消えた?)」
ベルクザータ:「………君も気付いたみたいで嬉しいよ。さっきシャンデリアを消した勇者の命をもらったんだ。責めは当然自分の命で贖ってもらわないと、ね?」
エルローズ:(何故か、強い衝動が湧き起こり、ベルクザータを思いっきり平手打ちし、涙目で睨み付ける)
ベルクザータ:(まるで威力がないように叩かれた頬をおさえて微笑みを浮かべている)「…残念だけど今日はここまでだ。いずれまた会うだろう。ボクの唯一の『運命』」(一瞬でその場から掻き消える)
エルローズ:(騒がしい会場の外に何とかふらつく足で出て、その場に蹲り、嘔吐する)
テオ:「エルシャ?!」(エルローズに駆け寄り、背を撫でる)
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